episode-2 ~少女~
怖い...
自分がなにか得体のしれないものに
狙われていないか、という恐怖。
...返事がない。
聞こえてないのか?
説明し忘れていたがここは新宿区。
周囲の声や音はすさまじい。
今度は声を大きめにして聞いてみる。
「誰かいるのか...?」
...やはり返事はない。
しかし、既視感が消えることはない。
ここで俺は思考を変えてみることにする。
もしかしたら、俺と同じようにこの次元に飛ばされた人が俺の不思議な行動を見ていたのかもしれない。
いや、むしろそのほうが可能性は高くないか?
...まぁそれは期待のしすぎか。
しかし、そのパターンだと嬉しいので試してみることにする。
「もしかして、君もこの次元に飛ばされたのか...?」
「ふぇ!?」
...ん?
背後から可愛い声が聞こえた。
しかも、俺のあの言葉に反応したってことは
この次元に飛ばされた仲間...?
さっきのつまづいた時より鼓動がはやくなるのを感じる。
俺の経験上あの声に悪い奴はいない。
期待で更に緊張する。
いや、まぁ彼女なんて出来たことのない俺の経験上だが...。
とにかく、後ろが気になるので自分の勘を信じて恐る恐る振り返ってみる。
......
...可愛い。
何がって?
座り込んで、明らかに俺のことを見ている女の子。
二つくくりで何故か制服。
今は目を丸くして、混乱してるかのようにぼーっとこっちを見ている。
困らせたのは俺なので、俺が会話をリードすることにする。
「君には僕が見えてるの...?」
自分がこんなどっかのお話の妖精みたいなセリフを言うなんて俺が一番驚いてるよ。
すると女の子は、さらに目を丸くしてゆっくりと尻もちをついた。
少しの間あたふたしていたが、覚悟を決めたのか、口を開いた。
「わ...私に言ってるんですか...?」
やはり可愛い。
俺は自分の思う最高のかっこいい声で言ってみる。
「うん、君に...。」
俺がそういうと少女は少しの間、微動だにせず驚いていたがやがて自分の腕で顔を隠した。
「ん...?」
少女の行動の意味が分からなくて思わず疑問の声を出してしまう。
とりあえず、少女が何をしているのか知りたくて少女の顔を覗き込む。
...僕が目にしたのは―――――
涙。
少女は泣いていた。
俺が怖かったのか...?
...いや、違うと思う。
少女は俺と同じようにこの次元に飛ばされて、ずっと一人で過ごしていたんだ...。
だからこうして人に会えたのがたまらなく嬉しいのだろう。
たとえそれが見ず知らずの俺でも...。