表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝20万PV達成】音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 藍色黄色


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/96

第93話 次の企画


 バスが高速を下りてホテル前に到着した。俺は同僚と降車して整列する。


 内履きに履き替えて廊下に上がった。講堂でオリエンテーションを済ませて、俺に割り振られた部屋へ向かう。


 洋風な一室に二人で一人。相手は小川だ。


 最初のプログラムが始まるまでは時間がある。俺はスマートフォンを取り出して配信者スレを開く。


 バス内での話でコケッコーへの評価が気になってしまった。俺はひそかに胸を高鳴らせて電子的な文字列を視線でなぞる。


 並ぶ文章はコケッコーに期待するコメントの数々。思わずにまにましてしまう。


 動く気配を感じてサッと隠す。


「何見てんだ?」

「いや、今日の夕食何かなって」

「さっきもそんな話したろ、どんだけ腹減ってんだよ。実はえっちなやつ見てたとかじゃねえの?」

「違うって」

「じゃ教えられるだろ」


 困った。ネットでの自分の評価を見てたなんてこっ恥ずかしくて言えない。


 そうだ。


「なあ小川、甘い料理って聞いたら何を思い浮かべる?」

「何だ早速話題逸らしか」

「違うって。ほら、コケッコーが辛い料理作っただろ? 次は甘い物が来るかなーと思って予想してたんだ」

「甘い物か。確かに辛さ特化やったんだし次は甘さ特化が来てもおかしくないな。ケーキとかクッキーはどうだ。定番だろ」


 定番だが面白みに欠ける。

 

「却下で」

「じゃあアメ玉」

「もうちょっと真面目に考えないか?」

「こっちは大真面目だっつの。じゃあお前は何だと思ってんだよ」

「んーチョコレート」

「ちょこっと食っとけ」


 結局いい案は思い浮かばなかった。俺たちはひと休憩を終えて研修プログラムに臨んだ。OJTの進め方や教え方のコツ、指導場面のロールプレイングなど後輩の存在を意識した研修を行った。


 迎えたお昼タイム。俺は小川と食堂に足を運んだ。にぎわいの中お盆を持ってバイキングの列に並ぶ。


 見慣れない体操着姿がちらほら見られる。修学旅行に来た高校生だろうか。昔を思い出してほっこりする。


 俺はハンバーグやエビフライ。皿の上に俺の好きな料理を盛りつける。


 子供のおもちゃ箱じみた品々が完成した。満足感にひたってチェアに腰を下ろす。


 早速ハンバーグを一口。肉の旨味が口内に広がって口角が浮き上がる。


 そしゃくを誘う肉肉にくにくしさ。これぞ食の醍醐味だいごみだ。


「小川、その白いのなんだ?」


 俺は漬け物にくっついている粒に視線を向ける。


米麹こめこうじだよ。知らないのか?」

「名前を聞いたのは初めてだな。美味いのか?」

「美味いと言うか少し甘いな。でもこれ単体で食べる物じゃないぞ? 発酵食品の原料として使用されるものだからな」

「へえ。漬け物一枚もらっていいか?」

「ああ」

「ありがとう」


 俺は箸ではさんだ漬け物を口に運ぶ。


 シャキシャキとした歯ごたえのある食感。ほのかな甘みと塩味が食欲を誘う。


「どうだ?」 

「ご飯が欲しくなるな」

「持ってくれば? あっちにあるぞ」

「もうもらった漬け物食べちまったよ。残りももらっていい?」

「やらんぞ」

「分かったよ取りに行ってくる」


 俺はチェアから腰を浮かせた。小川に教えてもらったポイントに歩を進める。


 しかし発酵食品か。考えもしなかったな。甘いイコールお菓子と考えてたから目からうろこだった。


 俺はごはんを盛るべく茶碗に腕を伸ばす。

 

 視界の隅からぬっと腕が伸びる。


「おっと」


 ぶつかる前に腕を止める。


 視線を振った先には体操着姿の女子が立っていた。


「すみません」

「いや、こちらこそ不注意だった。君は高校生だよね。ここには修学旅行で来たの?」

「はい。この辺りは建物がきれいですね。私は普段寮住まいなんですけど、自然に囲まれた場所だから物珍しくて」


 女子の表情が笑みで華やぐ。


 心の底から旅行を楽しんでいることがうかがえて、俺も意図せず口元が緩む。


「すみません、私のことどうでもよかったですね。先にご飯よそってください」

「ありがとう。じゃお先に」


 俺は茶碗に白米を盛ってしゃもじを女子に手渡す。


「ありがとうございます」


 女子も自身の茶碗に白米を盛った。華奢な体が会釈を残して歩き去る。


「久しぶりに十代の人と話したなぁ」

「なーに話してたんですか先輩」


 茶碗を持った佐原が歩み寄ってきた。


「ちょっとあいさつをな」

「駄目ですよ先輩、女子高生をナンパしちゃ」

「してないって。佐原はジェネレーションギャップ受けたことあるか?」

「ないですよ。先輩はさっきの子と話して受けたんですか?」

「いや、そこまで話し込まなかったから。でも雑談したらジェネレーションギャップを受けたかもな」

「気をつけてくださいよー? ここはともかく、ゲーム内でうかつなこと言ったら年齢ばれちゃいますから」

「分かってるって」


 佐原が釜のふたを開けてしゃもじの柄を握る。


「佐原は米好きなのか?」

「好きですよ。休日を除いて毎日食べてます」

「漬け物も美味いぞ。米麹ってやつらしい」

「発酵商品ですね」

「不思議だよな。同じ発酵食品でも納豆は甘くないし」

「おまけに臭いですもんね。美味しいんですけどねばねばしてますし」

「米麹ももっと発酵させたら納豆みたいになるのかな」

「なるでしょうね、やりすぎると他の菌も元気になりますし。完全に腐る寸前なら甘味は強くなるかもしれませんけど、どっちにしても臭いはきつくなると思います」

「だよな」


 甘味が強くなる分臭いも強まる。美味しいけど食べにくいってまるでシュールストレミングだ。うまいと聞いて取り寄せた人が絶望するのは間違いなし。


……ひらめいた。


 次の動画、これに決めた!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ