第92話 社員研修
【クラフトマギア】配信者総合スレ part171
130名前:クラフト最高!
みんなズビズビの新しい動画見た?
131名前:クラフト最高!
なんかあったの?
132名前:クラフト最高!
ニワトリが出た
133名前:クラフト最高!
そんなエネミーいたっけ
134名前:クラフト最高!
エネミーじゃなくて配信者。怪人コケッコーだよ
135名前:クラフト最高!
まさかのコラボかよ。あのニワトリまだ動画一個しか投稿してないだろ
136名前:クラフト最高!
あの動画で目にとまったってことかよ。すげーなおい
137名前:クラフト最高!
動画の内容はどんなのだった?
138名前:クラフト最高!
すげーホラーチックだった。びっくりして心臓がどくんってなったぞ
139名前:クラフト最高!
一種のホラー映画だよな。やっぱズビズビの編集能力すげーわ
140名前:クラフト最高!
動画見てきた。コケッコーずいぶん面白いことやってんのな
141名前:クラフト最高!
動画内のアクジキーは何であんなに暴れてんだ?コケッコーが何かしたみたいだけど
142名前:クラフト最高!
例のマグマ料理食わせたみたいだぞ。ひでーことするよな
143名前:クラフト最高!
たぶんバーサク状態になってる。料理をエネミーに食わせると味のランクによって状態異常を付加できるから
144名前:クラフト最高!
辛すぎて暴れまわってるってことか。アクジキーに効くくらいだし相当だな
145名前:クラフト最高!
料理を食わせて状態異常にかけるとは怪人コケッコー恐るべし。戦闘エリア歩いてたら口の中に劇物突っ込まれそうだな
146名前:クラフト最高!
外歩く時マスク外せねえな
◇
俺は二つ目の動画を投稿した。
今度の動画の再生数は一時間とせず一万を超えた。ズビズビさんの動画でコケッコーを知った人が多いらしい。動画の背景を知ってほっとした視聴者がコメントを残してくれた。
動画作りのモチベーションも高まってきた一方で社員研修の日がやってきた。
ホテルに二泊三日。ゲームハードを持っていくことは可能だが、誰かが部屋を訪れた時に反応が送れる。下の社員にも示しがつかないし、一部社員にばれたらいじられること待ったなしだ。佐原とか、佐原とか、佐原とか。
考えた末にゲームハードは自宅に置いていくことにした。同僚とバスに乗り込んで見知った景観を目じりに流す。
バス内はちょっとした旅行並みに盛り上がっている。研修とはいえホテルに泊まる。気分はさながら修学旅行だ。
俺は窓を介して外の景色を眺める。
「倉坂、コケッコーの二本目の動画見たか?」
隣に座している小川が話しかけてきた。
投稿者が動画を見たというのも変な話だけど、一応話を合わせておく。
「見たぞ。アクジキーに辛い料理食わせたやつだろ」
「そうそれ。俺さ、あの動画見るまでアクジキーに料理で状態異常かけるのは無理だと思ってたんだよ。異常に耐性が高いだけだったんだな」
「あれって状態異常なのか」
「ああ、バーサクってやつ。敵味方問わず近くにいるやつを攻撃するようになるんだ」
だからアクジキーは子分のサルを攻撃してたのか。群れを統率するリーダーにえらいことやらせちまった。コケッコーいよいよ怪人だな。
しかし料理を無理やり食わせて状態異常にかけるってのは面白いな。
「他のプレイヤーに食わせて状態異常にかける方法はあるのか?」
「今のところないんじゃないか? でもコケッコーのアレなら顔に投げつければ他のプレイヤーはひるむかもな。あれやっぱ辛いみたいだし」
「食べたのか? あれを」
「俺じゃねえよ。配信者が話題のアレ食べた動画をアップしたんだ」
「それ二番煎じじゃないか。再生数稼げるのか?」
「本家の動画と比べればそりゃ落ちるけど、みんなあの料理が気になってたからな。それに視聴者はコケッコーのリアクションを面白がってんだ。みんな似たようなリアクションを求めてんだろうよ」
「そういうものか」
じゃあ甘さ特化の料理でも同じリアクションを取れば再生数を稼げるのか。
でもそれじゃ面白くない。俺に演技できるとは思えないし、やらせと思われたら視聴者の大量離脱を招く。
引き継ぐのはぶっつけ本番のコンセプトだけでいいか。
「にしてもうらやましいなぁコケッコー」
「辛い料理食べたいのか?」
「そっちじゃねえよ。コラボしたってことは、あのズビズビと知り合ったってことだろ? ずるいじゃんかよ」
「そんなに有名人なのかあの子」
「そりゃそうだろ。今一番話題の配信者なんだから」
「どんな子なんだ?」
「すごく明るい子だな。始めはみんなズビズビーから始まるんだが、見てると元気をもらえるんだ」
「アイドルみたいなものか」
「それに近いかもな。時々ライブ配信で歌うし」
「盛り上がりそうだな」
リアルのドーム会場と違って、ゲーム内ならたくさんの人がズビズビさんの歌を聞ける。大勢のファンがいっせいにペンライトを振るうさまはさぞ壮観だろう。
バスが高速道路に入って景色の流れるスピードが加速する。
俺はポーチから研修のしおりを取り出して開く。
「研修中はどんな料理が出るんだろうな」
「おいおい、ホテルに到着してもないのにもう昼食のこと気にかけてんのかよ」
「旅行なんて久しくしてないからな。個人的に楽しみにしてるんだ」
もしかすると新しい動画のネタが見つかるかもしれない。何か目新しいものがあるといいんだけど。




