表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【祝20万PV達成】音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 藍色黄色


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/96

第85話 怪人スライム男


 総指揮官が決まったことで、実質的にシルネ村の最高権力者が決まった。


 俺たちはこれからの予定を示し合わせてから解散した。


「ナディ」


 水色の髪がさらっと流れる。


「何?」

「髪飾り作ってきたぞ」

「ほんと?」


 眠そうなまなこがわずかに見開かれる。


「ああ。島で約束したからな」

「早く早く」


 ダウナーな声色とともに白い両腕が差し出される。


 静謐とした雰囲気にあどけなさが顔を出して、思わず口元が緩む。


「分かったって。ほら」


 俺はポーチからフロストブルームを取り出した。水色と青紫に彩られた髪飾りを小さな手のひらに乗せる。


 冷たい美貌が微かにほころんだ。


「ありがとう。大事にする」

「ああ、そうしてくれ」


 次はアメリアだな。


 周囲を見渡すと、後方にアメリアの姿を見つけた。


「アメリア、ちょっといいか」

「はい。何ですかフトシさん」

「装身具ができたんだ。アメリアに渡そうと思ってな」

「本当ですか!」


 小さな顔が笑みで満たされる。


 相変わらずひまわりのような笑みだ。見てるこっちまで嬉しくなる。


 俺は陽光のティアラを実体化させてアメリアに手渡した。


「わぁっ、きれいなティアラ!」


 細い腕がティアラを掲げて日光を反射させる。


 うっとりとした笑みが何とも気恥ずかしい。


「アメリアは妖精たちのトップになったわけだし、ティアラはちょうどよかったな。今の衣装とは少し合わないかもしれないが」

「そう見えます?」

「ああ、ティアラがきらびやかすぎてな。他のシルフもバラフライドレスを着用してるし浮いて見えるというか」

「確かにトップの冠という意味ではそうかもしれませんね。分かりました、私の方で少し考えてみます」


 俺たちは鍛冶場に足を運んだ。ミャンセに会議で決まったことを告げる。


 ミャンセは笑みをくずすことなく了承した。アメリアがノームも移り住まないかと提案したものの、ミャンセの方は以前より伝わるおきてを守って地下で暮らすらしい。その一方で有事の際はアメリアたちの味方をすると約束してくれた。


 妖精界でやることが一段落して、俺はマイルームに戻った。


 きら丸とラムネは妖精界に置いてきた。ダークエルフとの戦闘が終わってまだ間もない。何か役に立てることもあるだろう。


 念のためショップを確認する。


 ぱぱっとクラフトを済ませてまた出品。クランリーダーの使命感に駆られてクランスペースに顔を出す。


 生い茂った植物が映った。明るい髪色の少女が鼻歌を歌いながら植物の世話をしている。


 少女が俺に気づいて口角を上げた。


「フトシさん。こんにちは」

「こんにちはファムさん。それはファムさんのアイテムか?」

「はい、クランミッションの消化に役立とうと思いまして。クランスペースで植物系アイテムを育てるとポイントをもらえるんです。駄目でしたか?」

「いや、むしろ大歓迎だよ。ありがとうファムさん。俺クランリーダーするの初めてだからさ、何か気づいたら教えてくれると助かる」


 俺はクランスペースを歩いてコンソールを起動する。


 クランを設立したばかりだからポイントは少ない。しばらくはポイントを稼ぐ意外にやることがなさそうだ。


 一応クエストミッションを確認する。


 色んなミッションがある。特定のエネミーを一定数狩る、鉱石を発掘する。植物系アイテムが関わるミッションはすでに達成されている。

 

 ゲーム内で配信するなんてミッションもある。


「配信か」


 そういえば何をするか決めてなかったな。この際だし本気で考えてみるか。


 でも何を配信すればいいんだ。


「他の人は何やってんだろ」


 以前も見たのにあんまり印象に残ってない。


 印象に残らないってことはリピーターが定着しないってことだ。リスナーに覚えてもらえないのは致命的。俺が思ってる以上に配信って難しいのかもしれない。


 俺は宙を引っかいて半透明な長方形を展開した。電子的な文字をスクロールして、他プレイヤーの配信動画を漁る。


 パッと目につくのは解説や料理を食べる系の動画。男女問わず配信者がはきはきとしゃべってコメントを盛り上げている。


「これは俺にはできないなぁ」


 クラマギ内の料理に対するユニークなリアクション。アイテムに関する豆知識の説明。どれも彼らならではの知識量が活かされている。今から俺が後追いしたところで人が集まらないのは目に見えてる。


 俺が彼らに負けないくらい得意なことと言えば……。


「やっぱクラフトか」


 クラフトで配信してるプレイヤーは他にもいる。俺ならではの強みを探さないと。


「あれ、フトシさんにファムさん。来てたんですね」


 サグミさんもクランスペースに現れた。


「ああ。これでクランメンバー勢ぞろいだな」

「まだ三人ですけどね」


 三人で小さく笑う。


「せっかくですし三人でどこか行きますか?」

「それなら新エリア行きたいです! 植物たちが私を待ってる気がします」

「そうだな。アイテムが俺たちを待ってる」

「二人とも好きなものに正直ですね」


 俺は新規エリアについてあまり知らない。話し合う二人を黙して眺める。


 話がまとまって三人でクランスペースを後にした。


 おもむくのはアップデートで追加された新エリアだ。


 目的地には扉があった。入った先には草原が広がっている。


 エネミーを倒しながら進んだ先にはまた扉。開けて入ると今度は開けた大地が広がった。土肌と草木が程よく調和している。


「ん」


 奇怪な人型が映った。


 スライムだ。特徴ある半透明な質感と丸みは見間違いようがない。


 問題なのは、スライム然としたその丸みに首から下が生えていることだ。


 何と言うか、ぶっちゃけるときもい。


「あれなんでしょうか」

「エネミー、にしては悪趣味よね」


 サグミさんたちと戸惑いの念を共有していると怪人スライム男が振り向いた。腕と足をキビキビと振り上げて距離を詰めてくる。


「来たああああああああああああッ⁉」


 きも! 怖っ! 


 散開ッ! 俺は衝動的に告げて身をひるがえした。


 奴の目的は分からない。散らばって逃げれば二人は生き残れる。


 振り向くと怪人スライム男が俺を追ってくる。


 速い。


 近い!


「うわああああああああああああ!?」


 意図せず悲鳴が口を突いた。


 追いつかれたらどうなるんだ。スライムを移植されて俺もスライム男にされるんだろうか。


 すまんきら丸、ラムネ。俺そっちに戻れないかもしれない。


 背中に衝撃を受けて視界がぶれる。

 

 そのまま地面に押し倒された。


「やめろ、離せ!」

「何故逃げる。私だ」

「誰だ!?」


 思わず突っ込んだ。こんな濃い奴を忘れるわけがない。覚えてないからには初対面のはずだ。


「本当に忘れたのかフトシ、このぷるるの名前を」

「お前かよ!」


 元クランメンバーのスライム大好きマン。ぷるんとしたフォルムを愛している男。


 怪人の正体がこの男なら納得だ。スライムぐるいが行きすぎてついに頭もスライムになったか。


「フトシさん、大丈夫ですか!」


 二人が駆け寄る。


 ぷるるが俺の背中から下りた。頭部を両手ではさんで上に持ち上げる。


 半透明な丸みから見慣れたヘルムが現れて、サグミさんが目を丸くする。


「あれ、あんたぷるるじゃない」

「久しぶりですねリーダー」

「元ね。今はフトシさんのクランのメンバーだから」

「ほう。フトシがクランを」


 ぷるると話すサグミさんの背後では、ファムさんが隠れて様子をうかがっている。


 怖がられてやんの。


「ファムさん、大丈夫だよ。ぷるるは変だけど変じゃないから」

「それフォローになってませんよ」

「ところであんたどうしてスライムをかぶってたの?」

「俺がかぶったわけじゃありません。じゃれつかれていたんですよ」

「エネミーが? 冗談でしょ」

「冗談じゃありませんよ。何を隠そう、このスライは私の元ペットでしたから」

「元? ペットじゃなくて?」

「はい。ここには昔リリースしたペットが出るんですよ」

「リリース? ぷるるがスライムをか」


 信じられない。あのスライムぐるいがテイムしたスライムを逃がすなんて。


 ぷるるが昔を懐かしむように腕を組んでうなずく。


「ああ。当時の私は、未熟ゆえにスライムの魅力に気づけなかった。スライなんて質素な名前をつけたあげく、大して強くないと考えてリリースしてしまったのだ。許しておくれっ!」


 ぷるるがスライに抱き着いた。伸びた二本の触手がえいえいと交互にぷるるのヘルムを叩く。


 あれ、もしかしてぷるる嫌われてね? 


 絶対否定するから言わないけど。


「おっと、もうこんな時間か。私はこれで失礼する」

「何か用事あるのか? 俺たちここを探索していこうと思ってるんだが、大した用事じゃないなら一緒に行かないか?」

「何を言う、もう少しで公式配信があるのだぞ。見ないと言うのか」

「え、まじで」

「知らなかったのか。相変わらずだなこのクラフトぐるいめ!」

「スライムぐるいのお前に言われたくないけどな!」


 しかしそうか、公式配信があるのか。


 公式の発表は一種の祭だ。実装予定コンテンツの紹介でアイテムや武器の相場も多大に変動する。


 ショップを使う者として見逃すわけにはいかない。


「俺も公式配信見ようかな。サグミさんとファムさんはどうする?」

「それなら私も見ます。どうせなら一緒に見ませんか」

「じゃあクランスペースで見るか。サグミさんも来る?」

「すみません、私はもうちょっとこの辺りを歩いてみます」

「そうか。分かった、機会があったらまた遊ぼうな」

「はい。その時はぜひ」


 俺たちはサグミさんを残してログアウトした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ