第83話 ノームたちと日照石
俺は完成した髪飾りを持って妖精界に転移した。
奥の方でカンカンと音がする。誰かがハンマーを振るっているようだ。
奥に行くとカジさんがハンマーを熱されたかたまりを叩いていた。その近くには黄色の妖精が羽をぱたぱたさせている。
大きな目と視線が交差した。小さな顔にあどけない笑みが浮かぶ。
「あ、フトシやっほー」
「来てたのかミャンセ。こんなところで何してるんだ?」
「このおじいさんがハンマーでカンカンしてたから、何してるのかなーと思って見学してた」
「ミャンセは鍛冶に興味があるのか?」
「どうだろ、分かんなーい」
相変わらずマイペースな子だ。それでいて純真無垢な笑みが粗相を許せと訴えてくる。
得な性分をしているなぁ。この辺は佐原みたいだ。
「そうそう、みんなダークエルフと戦ったんだね。わたしたちも呼んでくれればよかったのに」
「俺たちはノームがどこにいるか知らないしなぁ」
「そっか、そういえばまだ案内してなかったっけ。じゃついてきて。案内したげるー」
ミャンセが部屋を出て行った。
「あ、ちょっと待ってくれ!」
俺は見失わないように走る。
シルネ村を出て真っ直ぐ進むと荒野に出た。
「妖精界にこんな荒れ果てた場所があったのか」
「うん、魅力ないでしょここ。だから襲われにくくて都合いいんだって」
「でも何が襲ってくるかは分からないと」
「そゆことー」
ミャンセが羽をぱたぱたさせて坂の上を目指す。
ついていった先に大きな岩があった。
ミャンセが触れると岩の面が消失して入り口が顔を出した。
「おお、秘密基地っぽい」
「でしょでしょ?」
俺の例えですっかり気分を良くしたらしい。ミャンセが鼻歌を歌いながら洞穴の奧へと進む。
「行き止まりじゃないか」
ミャンセが地面に手をつける。
「よっと」
小さな手が地面をひっぺかして隠し通路を露わにした。
「それ岩の板か」
「そ。頭いいでしょー」
「ああ」
俺はミャンセの背中を追って隠し通路を下る。
下が明るい。電灯を作れるような技術があるとは思えないが、下で何が光っているんだろう。
いや、技術自体はあってもおかしくないのか。
ゼロワンやゼロツーがいるんだ。過去か今かの違いはあれど、誰かがあれらを作ったのは間違いない。技術者がノームの中にいたりして。
胸を高鳴らせながら平らな地面に靴裏をつけた。光がもれている出口に視線を向ける。
がらんとした空間が広がっていた。
「何だこりゃ」
村だ。石をくりぬいて作ったような建物があちこちに点在している。
何より目を引くのは天井に散りばめられている石だ。内部からもれ出る光が日光のように地下空間を温かく照らしている。
岩陰からぴょこぴょこと小さな頭が顔を出す。
「そんちょー、その人間さんは?」
「前に話したフトシだよー」
「ふとしー!」
ノームたちが笑みを浮かべてひらひら寄ってきた。俺を取り囲んで興味深そうに眺める。
落ち着かない。檻の中で鑑賞される動物になった気分だ。
「こんにちは。俺フトシ、よろしくな」
「よろしくー」
あどけないあいさつがあっちこっちで上がる。
かわいい。幼稚園や小学校の先生はこういうのが見たくて志すんだろうか。
試しにゼロワンたちを作った妖精がいるか聞いてみたが、ノームの中に技術者はいなかった。
「そうだミャンセ、天井にあるあの石はなんだ?」
「日照石だよ。地中にいると薄暗くてまいっちゃうでしょ? あの石があると心がぽかぽかして気持ちいいの」
「なるほどな」
子供っぽいわりに色々考えてるなぁ。こんな場所で住まい立ててるくらいだし頭が回って当たり前か。
ひらめいた!
「ミャンセ、日照石ってどこで採れるんだ?」
「お外の高いところ。案内してあげよっか?」
「頼む」
俺はミャンセと再び外に出た。急斜面をのぼってさらに上を目指す。
のぼった先には日照石のかたまりがでんっと存在していた。
「これが日照石か」
「うん。きれいでしょ」
「そうだな。ダイヤモンドみたいだ」
きちんと採取ポイントも設けられている。俺は歩み寄ってピッケルを発現させる。
「おりゃっ!」
鉱脈目がけてピッケルを振り下ろした。光る石がぽろぽろと地面の上を転がる。
レア度4
『日照石』
太陽のエネルギーを秘めた石。暗い場所でも温かい光を放つため家具としても用いられる。
俺はクラフトレシピを展開する。
「レシピ追加されててくれよ」
祈りながらレシピ欄をスクロールすると【!】のマークが映った。
「あったあった」
陽光のティアラ。日照石を素材に用いる装飾品だ。
ちょっと派手だがアメリアも許してくれるだろう。




