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音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 藍色黄色


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第77話 イクリプス


 俺はすっかりいい気分になってエネミーを狩り続けた。


 プレイヤーが群がってないエネミーはもちろん、戦っているプレイヤーがいたら横からうばい取った。


 おのれフトシ!


 この泥棒野郎!


 さすがフトシきたない! 


 俺はそれらの罵声をものともせずエネミー狩りに励んだ。


 おかげでバフを得た。いくつもの種類のアイコンで視界の左上が幸せになった。


 自分が強くなったのを感じる。


 与ダメージボーナス、被ダメージ耐性、攻撃速度アップ。他にも魔法攻撃二回発動や移動速度アップなどバフが盛りだくさんだ。


 もちろん油断はしない。


 バフをたくさん得たのはおそらく俺だけじゃない。我こそ優勝せんと意気込む猛者もエネミーを狩っているはずだ。


 最後の戦いはきっと苦しいものになる。やれることをやるべく植物系アイテムの採取にも努める。


 三回目のアナウンスが流れた。視界の隅に映る壁がズズズとエリアの中心を目指す。


 迫るはトゲだらけの蔓で編まれた緑の壁。日の光を反射するイバラは刃物じみて鋭利だ。


 エリアがせまくなるほど他のプレイヤーと遭遇する確率は高まる。そろそろバフだくさんの生き残りと遭遇してもおかしくない。


 スカイビジョンに映る三つの点が近づいてくる。


 離れようにもエリアはせまい。遭遇は避けられないか。


「きら丸、ゼロツー、準備はいいか」

「キュ」

「準備は万端であります」

 

 壁を背にして戦うのは不利だ。俺は地面を蹴って前に出る。


 走った先で広場に出た。スカイビジョンに映る三つの点と対面する。


「やはり生き残っていたかフトシさん」

 

 凛々しい顔立ちが不敵に笑む。


 日蝕の騎士団団長のマゼラさん。寡黙なワンダさんにちゃらい雰囲気のバッツさんもいる。


「三人だけなんですね」

「ああ。このイベントにはバフがあるからな。バフを散らすよりは少数精鋭の方がいいと判断した」

「なるほど」


 バフによっちゃシナジーのあるやつもあるもんな。少数に重複させた方が何倍ものアドバンテージを叩き出せるって寸法か。


 さすがにトップクランのリーダー。色々考えてるなぁ。


「そういうフトシさんこそ一人じゃないか。よほどの自信があると見える」

「俺の場合は一緒に参加する仲間がいなかっただけですよ」

「クランメンバーがいるだろう」

「あの二人は戦闘楽しいってタイプじゃないんですよ。なので今回のイベントに参加したのは俺一人です」

「クランメンバーが増えたのか、それはおめでとう。しかしやはり寂しいだろう。我らはいつでも君の加入を歓迎するよ」

「どうも」


 あいさつはそこまで。マゼラさんたちが装備を構える。


「ではそろそろ始めようか」

「そうです、ねっ!」


 俺はヴォルテクス・ハチェットをかかげた。

 

 不意打ちに等しい一撃だが仕方ない。戦いは非常なのだ。


「ぐっ⁉」


 プラズマに打たれて三つの人影が稲妻のエフェクトに飾られる。


 今まで遭遇したプレイヤーの全てを一瞬で無力化してきた所見殺しのアビリティ。相手がトップクランのプレイヤーでもその優位性はくずれない。


 蚊と思いきや稲妻のアイコンがすぐに点滅を始めた。マゼラさんの右足が土の地面を踏み鳴らして転倒を妨げる。


「状態異常の効果時間短すぎません?」

「麻痺は致命的な状態異常だ。対人戦をするなら対策を講じて当然だろう」


 告げるマゼラさんのとなりにいる二人が遅れて体勢を立て直す。


 一足早く復帰した辺り、マゼラさんには状態異常の効果時間を短縮するバフがかかっているのかもしれない。


 アビリティによる麻痺を起点にしたのしかかりが確殺コンボだったのに、まさか初手からつまづく羽目になるとは。


「今度はこちらから行くぞ」


 マゼラさんが剣をかかげる。


 彼女の背後に光る円が出現した。太陽に見えるそれが刻一刻と陰りを帯びて黒に浸食されていく。


「それ何ですか」

「イクリプスを知らないのか? 一時期ネタ武器として話題になったんだが」


 知らない。何だそりゃ。


 対峙中にもかかわらずマゼラさんが言葉を続ける。


「この武器のアビリティを発動すると装備プレイヤーのMPがゼロになるんだ」

「ゼロ? それって魔法が使えなくなるってことですよね。すごく弱いじゃないですか」

「まあな。だが背後の太陽が闇にのまれた時、プレイヤーは一定時間MPを消費せずにスキルや魔法を使えるようになるんだ」

「何だそりゃ、要するにMPが実質無限になるってことじゃないですか。何でそんな武器が使われなかったんですか」

「それを踏まえてでもデメリットが大きすぎたってことさ。日食が完了するまでスキルやアイテムを使ったMP回復を禁じられる。そんなデメリットを負うくらいなら別の武器を使った方が強かったんだ」

「へえ」


 なるほどなぁ。ゲーム内の剣にも歴史ありか。


 しみじみ思っているとマゼラさんが小さく笑った。


「ところでフトシさん。今の我々と君は敵同士なわけだが、どうして私が敵の君にイクリプスのことを教えたと思う」

「それはどうしてですか?」

「決まっているじゃないか。こうして雑談に時間を使う分だけ私が有利になるからだよ」


 マゼラさんに告げられてハッとする。


 そうだ! こうしている今もマゼラさんの後ろにある円が日食を進めている。


「俺話聞いてる場合じゃないじゃん!」

「いやー何と言うか、フトシっすね」

「うむ」


 何かとなりの二人に納得された!


 くやしいから俺は地面を蹴る。


「行くぞきら丸!」


 マゼラさんは時間稼ぎをするために情報を垂れ流したが、おかげで俺もイクリプスの情報を知ることができた。


 策士策におぼれるってやつだ。今のうちにたたみかけさせてもらうぜ。


「ふッ!」


 マゼラさんが剣で空を切る。

 

 剣閃が飛んできた。


「のわっと!?」


 とっさに斧をかざす。


 それだけで防ぎきれるはずもなく、俺のHPバーが一割削れた。


「魔法使えるじゃん! 嘘つき!」

「嘘はついていないよ。MPリジェネのバフがあるからMP枯渇のコストを踏み倒せるだけでね」

「インチキじゃんそれ!」

「そうでもなければわざわざデメリットを教えないさ」


 確かに。納得して負けた気分にさせられた。


 でもおかげで冷静になった。


 相手はトップクランのプレイヤー。駆け引きで勝とうとするのが間違いなんだ。


 一人の俺にできることは限られる。俺は俺の強みを押しつけるだけだ。


「ゼロツー、ストーンミサイル!」

「了解であります!」


 ワンダさんが前に出て盾を構える。


 ミサイルも爆風もしっかり受け止められた。


「珍妙な。そんなロボットどこにいたんだ」

「企業秘密だ」

「クラマギに企業とかあるんすかね」


 バッツさんが盾の横で魔法を放った。

 

 俺は横を意識しながら走って交わす。


 範囲攻撃の魔法。威力は単体を対象にした魔法よりも低いが、命中するとノックバックがあるから避けざるを得ない。


 明らかにペースを考えていない連発。これは日食の時間を稼ぐためだけの牽制か。


 いいなぁ仲間って。ソロの身でそんなことされたら涙が出るね。


「きら丸、変身!」


 俺はゼロツーとでけえ丸の後ろに隠れる。


 でけえ丸が緑色の天使形態になってから魔法が飛ばなくなった。


「こっちの情報はリサーチ済みってことか」


 カウンター攻撃は強力な分相手から攻撃されないと発動しない。


 こっちから攻撃しようにもミサイルのリキャストとプラズマチャージには時間がかかる。


 なすすべもなく日食が完了した。


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