第72話 ミサイルのカスタム
レア度4
『ガルグスケイル』
防御力 +21
アビリティ【加速する電離】
素晴らしい出来。このレベルの物は中々お目にかかれない。
俺の新しい防具。防御力+15から+21に大幅アップだ。
アビリティの性能もプラズマのチャージ速度を速める内容で申し分ない。武器との相性も抜群だ。
戦って試したい。
でも激レア武器のクラフトが済んだ今は、武器を試すより重要なことがある。
俺は妖精界の鍛冶場に転移してカジさんの元に駆けつけた。
「ゼロワン! 術式改造の素材持ってきたぞ!」
「お早いですね。さすがマスター」
装置の表示画面が切り替わった。電子的な線や数字がプログラミングを想起させる。
俺は木製のチェアに腰かけてゼロワンからの説明を聞く。
術式改造は何でも好き勝手にいじれるわけじゃないようだ。
魔法の体を維持する箇所は触れない。変更可能箇所は魔法によって違うから触って覚えるのがオススメなんだとか。
「とりあえずやってみるか」
俺は両腕を伸ばしてタッチパネルに触れた。直感的に分かるように設定されているからいい具合に操作できる。
数分触って感覚をつかんだ。
「マスター、こちらの方で三つほど術式の候補を考案しました。確認を」
パネルに三つの長方形が浮かび上がる。
「ありがとなゼロワン」
俺は電子的な文字を視線でなぞる。
一番手は『威力向上』。魔法の威力を上げるシンプルイズベストなカスタムだ。
続くのは『フレシェット』。ミサイルの爆発時に岩の矢が拡散して威力を高めるカスタムだ。
「えぐいなこれ」
要するにフレシェット弾みたいなもんだろこれ。残酷だから現代戦争で禁じられてるやつじゃん。
使うの気が引けるからやめとこ。
「最後のは……と」
『スプレッド』。ミサイルが宙で分裂して広範囲を攻撃するカスタムだ。
分裂することで一発ごとの威力は下がる。
その一方で総合した爆風の威力は上がる。小型エネミーがよろけやすくなる上に、体の大きなエネミー相手には爆風が複数回ヒットして大ダメージが期待できる。
「決まりだ。スプレッドにしよう」
セットできるカスタムは魔法一種類につき一つ。
今の俺にとっては貴重な範囲攻撃。ここはスプレッド一択だ。
「カスタムデータをセットしている間はノーマルの魔法を撃てません。注意してください」
「外だと変更できないのか?」
「可能とする方法はありますが、それには私の出力を上げる必要があります。倉庫内のプラズマオアを三十個ほどいただければ可能だとは思いますが」
「三十個か」
結構な数だが利便性には代えられない。
「分かった。三十個使ってくれ」
「了解しました」
ウィィィンと起動音。
目の前にウィンドウが展開された。
ずらっと並んだ文字にはゼロワンのレベルが2になったこと、鍛冶場の外でもゼロワンにアクセスできるようになったことが記されている。
「アップデート完了しました。これで外でも術式のカスタムを切り替えられます。ただしゼロツーを装備している必要があるのでそこは注意してください」
「パワードアーマー形態ってことだな。分かった」
俺はゼロツーたちを連れてまた山に登った。魔晶石を手早く回収して穴に落ちる。
ラムネの羽ばたきで無事着地。鉱石発掘とエネミーの相手をしながら奥を目指す。
前方に複数の岩トカゲが映った。
「ゼロツー、ストーンミサイルだ」
「了解であります。ストーンミサイル、発射!」
メカメカしい右腕から岩のミサイルが発射された。バスケットボールよりも大きなそれが分裂してエネミーに降り注ぐ。
連続する爆発が洞窟内の空気を震わせる。
爆風に耐え兼ねたトカゲがあお向けにひっくり返った。
「おお、いい感じじゃないか」
一発でエネミーを殲滅できなかったものの、ほぼ全ての個体を無力化することに成功した。これはソロプレイがはかどりそうだ。
俺たちは手分けしてエネミーにとどめを刺した。各種ゲージをためつつボス部屋への道のりを歩く。
プラズマオアを回収してきら丸にプラズマをまとわせる。
やがて大きな扉の前に到着した。順序を確認してから扉を開け放つ。
部屋の奥にいるのは当然あのワニ。
俺はきら丸とのエターナルボンドで大きな口を封じた。
「やるぞゼロツー」
「はいであります!」
俺はゼロツーに背中を向けた。ゼロツーがくっつきやすいように体で大の字を作る。
……特に何も起こらない。
「ねえまだ?」
「かっこいい掛け声考えてなかったであります」
「またかよ! 今ボスエネミーと戦ってるんだが!?」
「早く考えなきゃでありますね」
「頼む、俺に考えない選択肢をくれ」
却下された。例のごとく仲間に知らせるためと逆に説き伏せられた。
掛け声、掛け声。
プラ丸がエネミーを抑え込んでいる間に考えないと。
「着装、パワードアーマーでどうだ!」
「いいでありますね」
「よーし来い!」
「掛け声をお願いするであります」
「めんどくせえってッ!」
こいつ頑固だし、俺が言うまで変形しないんだろうなぁ。
仕方ない。
「着装、パワードアーマー!」
「了解であります!」
ゼロツーがいくつものパーツと化して宙を舞う。
プライマルファーコートが空気に溶けるように消失した。代わりに俺の腕や脚がメカメカしさに装飾される。
カチャッとした音に遅れてバイザーが視界内を色づかせた。
「まずはミサイルをボス用のカスタムに変えるぞ」
「はいであります」
「……どうしりゃいいの?」
「んー説明が面倒でありますし、切り替えるところまでおいらがやるであります」
俺の体が勝手に動いた。胸が張られて両腕がWの字を描く。
やはり何も起こらない。
「なあ、さすがにこれをかっこいいポーズとか言わないよな?」
「冗談にしては面白くないでありますよ。両手をグッと握りしめるであります。それでゼロワンの術式データにアクセスできるでありますよ」
俺は告げられた通りに拳を固く握りしめる。
視界の両隅が青白く色づいた。バヂヂヂィッ! と小気味いい音に次いで半透明な長方形が浮かび上がる。
見覚えのあるウィンドウ。鍛冶場で見たカスタム画面だ。
「変更したいカスタムに視点を合わせてまばたきするであります。ちなみに手から力を抜くと画面が消えるので注意するであります」
「分かった」
威力強化のカスタムに視点を当ててまばたきする。
画面が消えて右腕が光のエフェクトを帯びた。
「カスタム変更完了であります」
「了解。ストーンミサイル!」
「キュ!」
きら丸がワニから離れる。
遅れて岩のミサイルが発射された。一回り大きくなったそれがエネミーに直撃して爆風をまき散らす。
この前のように総攻撃をかけて討伐は完了した。
「さすがにレアドロップは無しか」
武器なんて二つ以上所持しても売るしかできないんだ。一個出ただけ激運だろう。
「最後にフレシェットのカスタムも試したいんだがいいか?」
「もちろんであります」
きら丸とラムネからも了承を得た。俺はゲージ節約のためゼロツーと分離してから元来た道を戻る。
岩トカゲたちがリポップしていた。俺は「着装、パワードアーマー」を口にしてから例のWポーズを取る。
視界の両隅でバヂバヂした音を聞きながらフレシェットのカスタムを選択する。
「ストーンミサイル、発射!」
ヴォン! と音がしてミサイルが宙を突き進む。
岩のかたまりが目指す先は天井。あわや激突といったタイミングでミサイルが爆散する。
爆風とともにまき散らされるのは岩の矢。スコールのごとくエネミーに降り注いでヒットエフェクトをまき散らす。
残ったのは地面に突き刺さった岩の矢のみ。秒の殲滅が威力の高さを物語っていた。
「……やっぱエグいな」
攻撃範囲も広いからきら丸が前に出てる時は使えなさそうだ。面倒くさがらずに試射してよかった。




