第68話 ロボットという名のペット
「パワードアーマーか」
何かそれっぽい響きだ。見ればアバターのステータスも大幅に上昇している。これなら武器や防具がなくても戦えそうだ。
俺は身をひるがえす。
「俺戻ってミサイル撃ってくる」
「分かった。先に村戻っとるぞ」
「おう」
俺はきら丸とラムネを連れて元来た道を戻った。
開けた草原に立って右腕を伸ばす。
「なあゼロツー」
「何でありますか」
「ミサイルどうやって撃つの?」
「トリガーはないのでおいらが発射するでありますよ」
「分かった」
俺は引き続き右腕をかざす。反動も考慮して左手を右腕に添える。
……静かだ。
「まだ?」
「もう撃っていいのでありますか?」
「ああ――おわっ⁉」
視界がぶれた。体を支え入れずあお向けに倒れる。
遠くで爆発音がとどろいた。
「大丈夫でありますかマスターフトシ!」
「あ、ああ、大丈夫だ」
タイミングが悪かった。気を抜いた一瞬に発射されたから反動を抑え込めなかった。
俺は腰を浮かせてしりに着いた土を払う。
「発射の合図が必要だな。何か決めよう」
「それならいいものがあるであります」
「本当か」
「はい。発射する時に技の名前を叫ぶでありますよ」
「そうきたか」
技名なぁ。
かっこいいとは思うが、周りに誰かいる時に叫ぶの恥ずかしいんだよなぁ。
「他に何かいい合図ない?」
「ないであります」
「断言するなよ、もっとがんばれ。そうだハンドサインにしよう」
「非推奨であります。戦闘中にそんなことしてる暇ないであります」
「じゃ俺が発射と言ったら発射するんだ。シンプルイズベスト、これで決まり!」
「ああ、の一言で転倒したのに無理でありますよ。それに技名を叫ぶことは、仲間にミサイルを発射するぞと警告する意味合いもあるであります」
発射だけじゃ何を発射するか分からない。
技名を叫べば一発で分かる。相手からすれば何が飛んでくるか予測できないし、意外と技の名前を叫ぶメリットは大きめだ。
理屈は分かるんだけどなぁ。
「何よりかっこいい。無敵であります」
「心は無敵じゃないの!」
俺が恥ずかしくて死んじゃったらどうするんだ。
そう思って更なる案を思考したものの代案は浮かばない。結局ゼロツーの案をのむ羽目になった。
俺は試射すべく周りを見渡す。
人影なし。クリア!
「ストーンミサイル!」
グッと体に力を込める。
反動が来た。
今度は耐え切った。岩のミサイルが宙を突き進んで遠方で爆発する。
不思議と悪くない手ごたえがあった。
「やっぱり技名があると引きしまるであります」
「そうだな」
もう少し引きしまった名前だとさらに雰囲気出そうだ。
俺は試射を終えて帰途についた。
全力疾走だ。今の俺はパワードアーマー・ゼロツーによって身体能力が上がっている。性能を確かめるには走るのが一番だ。
その結果は満足のいくものだった。
「はははははっ! 速えーっ!」
視界に立ち並ぶ樹木がドンドン目じりに消えていく。
体は重くなっているはずなのに鈍重さは欠片もない。きら丸やラムネとの距離がどんどん開く。
前方に大きなクマ型エネミーが映った。
「お」
ちょうどいい相手を発見。これは戦うっきゃない。
俺は右手の先端を向ける。
「ストーンミサイル!」
発射音についでミサイルがクマに命中した。爆発が視界内の景色を汚してその威力を知らしめる。
「おわっ!」
瓦礫が飛んできた。反射的に腕を上げて目をかばう。
「早速改善点を見つけたな」
草原でミサイルを撃った時には標的がいなかったから分からなかった。
戦闘中となれば意図しない接近を許すこともある。至近距離でミサイルを撃ったら破片が飛んできて当然だ。
パワードアーマーを着ている俺はダメージを受けないが、味方の位置を把握してから撃たないと怪我をさせてしまうかもしれない。
何より破片で視界がふさがるのはよろしくない。戦いの最中に目を閉じたらそれが命取りになりそうだ。
「目を保護する防具があればいいんだが」
つぶやいた時だった。砂煙にシルエットが浮かび上がって俺は地面を蹴る。
クマが突進してきたものの、俺は危なげなく接触を回避できた。
「こりゃいいな」
腕の振り下ろしもかわして腕を引く。
クマの腹部に拳を叩き込んだ。エネミーがうめいて地面の上に倒れこむ。
巨体がポリゴンとなって砕け散った。
【おめでとう! ゼロツーのレベルが2になりました!】
「え」
意図しないレベルアップ表記。ゼロツーってレベルアップするのか。
【レベル2になったのでスキルを以下の中から一つ獲得できます】
『バイザー型デバイス追加』『ダメージ耐性』『魔力消費量軽減』
まるでペットがレベルアップした時みたいな表記だ。
一つの可能性が脳裏をよぎる。
「まさか」
俺はコンソールを開いてペットの欄をタップする。
想像通りペットの欄にはゼロツーの名前があった。
「お前ペット枠だったのかよ!」
ゼロツーには俺が何を言っているのか分からないだろう。
それでも俺は声を張り上げずにはいられなかった。
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