第62話 拡張パーツ
俺はマイショップで足りない素材を購入した。ウンディーネとサラマンダーの装備をクラフトして妖精界に転移する。
鍛冶場への転移を終えて外に出ると、シルネ村の様相はまたまた変わっていた。建物の数も増えて村落じみた景観が形作られている。
相変わらずウンディーネとサラマンダーの間はぎこちなさがあるものの、最低限のコミュニケーションは取れている。これなら戦闘中に喧嘩することもないだろう。
訓練場に足を運ぶと、全てのシルフが人型サイズをなしていた。俺が作った武器を握って訓練を行っている。
俺はアメリアに歩み寄って声をかけた。
「こんにちはアメリア、訓練の調子はどうだ?」
シルフの長が振り向いて微笑を浮かべる。
「こんにちはフトシさん。いい調子ですよ。大半が巨大化をなせるようになりましたし、武器のあつかいにも慣れてきました」
視界の隅でカジさんがシルフに指導している。
繊細な手が弓の弦を離した。宙を突き進んだ矢が木製の的に突き刺さる。
「さまになってるのはいいことだけど、みんな人間サイズなのはどうしてだ? もっと大きくなった方が腕力上がるだろ」
武器の大きさは使用者によって変わる。アメリアたちがビッグになるほどこん棒や弓は大きくなる。質量も増して威力が上がるはずだ。
「そうなんですけど、私たちシルフには無理なんです」
「無理?」
「はい。今以上に大きくなろうとすると激痛が走るんですよ」
「なるほど、魔法にも適性があるってことか」
数メートル級の巨大化をなせるのは、おそらくスプリガンという種族の特性なのだろう。
体がそういうふうにできてないシルフには無理。きっとウンディーネとサラマンダーもだ。
「ってことは、ローラが使ってたサラマンドラも?」
「はい、私たちにはまねできませんでした。でもウンディーネは水の獣を召喚できました。魔法の適性があれば違う形で発現するみたいです」
「そりゃいいな」
あのトカゲはそこそこ強かった。ウンディーネもあれに似たものを使えるなら心強い。
「どうして私たちだけ」
微かなつぶやきが空気に溶ける。
スプリガン、ウンディーネ、サラマンダーには種族に応じた特徴があるのに何故自分たちシルフだけ。アメリアがそう嘆きたくなる気持ちは分かるが今考えても仕方ない。
弱音は聞かなかったことにして明るく笑いかける。
「アメリア、訓練が一区切りしたらウンディーネとサラマンダーを集めてくれるか? 装備ができたから配布したいんだ」
アメリアが表情を取り繕う。
「分かりました。ナディさんとローラさんに集めてもらいますね」
「頼む」
俺は訓練場を後にして鍛冶場におもむく。
ドアを開けるとカジさんとゼロツーがわいわいしていた。
「何を騒いでるんだ二人とも」
「お、フトシか。ちょうどいいところに来たな。実はゼロツーの拡張パーツを作ろうと思っとるんだ」
「拡張パーツ!」
口角がギュワッと浮き上がる。
何だそのロマンあふれる響き! これは乗っかるしかない!
「いいなそれ! ミサイル搭載しようぜ」
「ミサイルでありますか?」
「何じゃそれ。わし知らんぞ」
俺はミサイルについて二人に語る。宙を突き進んで爆発するアレのロマンを、それはもう熱く語った。
俺の熱が通じたのだろう。カジさんとゼロツーが目を輝かせる。
「いい! ミサイルいいでありますねマスターフトシ!」
「じゃな。挑戦する価値はあるぞい」
「作れんの⁉」
「さすがに大規模な物は無理じゃな。でも個人で使う分には十分可能性がある。燃料は魔力に置き換えるとして魔力タンクも必要じゃな」
「燃料によっては持ち運ぶの大変そうであります」
液体でも量が増えると重くなる。人や妖精の腕力で持ち運ぶのは無理だ。
「運搬方法はともかく燃料には心当たりがあるぞ」
「ほう、何を燃料にするつもりだ?」
「マクワジュースだ。マクワの実は魔力にあふれてるだろ? 液体にすればいい感じの燃料になると思うんだ」
「なるほどのう。確かに実のまま使うよりも効率的かもしれん。問題は発射台じゃな。魔力の噴出に耐えられるだけの頑丈さが必要じゃ」
「候補はあるか? あるなら取って来るぞ」
「それなら以前お主が持ってきたやつがいいな。あれより頑丈なやつがほしい」
オーパーツかぁ。数を確保するの大変なんだよな。
でもミサイルには代えられない。とりあえず俺に任せろと告げてコンソールを開く。
頑丈なやつってどうやって作ればいいんだ。オーパーツAとBでいいのか?
何かないかと思ってクラフトレシピを開く。
「お」
レシピが増えていた。!マークのとなりにオーパーツCの表記がある。さっきの会話がフラグになったんだろうか。
素材となるオーパーツAとBは増殖させたやつがまだ残ってる。
問題は『忘却された銘板』だ。
「どこで手に入るんだ?」
このアイテムを見た覚えがない。
頭を悩ませていると通知が入った。日蝕の騎士団からのクラフト依頼だ。
メールを開くと、クラフト品や消費する素材の名前が記されている。
「ん?」
俺は素材の欄を二度見する。
そこにあるのは忘却された銘板の文字。欲しいアイテムの名が記されている。
「これ!」
俺は衝動のままにコールをかける。
3コール目が鳴り終える前につながった。
「もしもしマゼラさん? クラフト依頼にあった忘却された銘板ってどこで入手したんですか?」
告げてハッとした。
こんな大事な情報、タダで教えてもらえるわけがない。
今度は何を要求されるんだろ。
「遺跡の隠しエリアで入手した」
俺は言葉に詰まる。
コール画面から小さな笑い声がこぼれた。
「フトシさんの表情が目に浮かぶようだな」
「分かりますか」
「ああ。隠しエリアの存在なんて隠すほどのことじゃないからな。ゲーム内掲示板を見ればすぐに分かることだ」
すぐに分かることだからもったいつけずに教えたってことか。
マゼラさんのことだ。優しいというよりは、俺にケチって印象を抱かせないためなんだろうな。
「何なら一緒に行くか?」
「いいんですか?」
「ああ。ちょうど一人枠が空いていたところだ」
「分かりました。転移先を教えてください」
俺はマゼラさんから話を聞いてコールを終えた。
「あ、ウンディーネたちに装備渡するんだった」
マゼラさんにはすぐに行くって言っちまった。
かといって今からキャンセル入れるとアメリアの顔を潰してしまう。これからはアメリアが中心になって展開していくだろうし、それはまずいよなぁ。
「ゼロワン、装備をウンディーネやサラマンダーに送りたいんだができるか?」
「はい可能です」
「え、まじでできるの?」
「できますよ。こちらのコンソールによる操作限定と、送る対象が村の中にいる必要はありますが」
「十分だ。助かる」
俺はゼロワンの指示に従って装備を配布した。アイテムの譲渡を完了して約束の遺跡前に転移する。




