第60話 フトシが全てを解決する
「待ってよ! どうしてクランを抜けるの⁉」
スズが声を張り上げる。
男性プレイヤーが足を止めて振り向いた。悪びれた様子もなく口を開く。
「だって、このクランにいても仕方ないじゃん」
「どこが仕方ないの? せっかくクランが大きくなってきたのに、今抜けるのは損って分からない?」
「損も何も、このクランにいるメリットなんかあるのか?」
スズが顔をしかめる。
「どういう意味よ」
「だってこのクランにフトシいないじゃん」
「方向性の違いで抜けたんだから仕方ないでしょ。それに優秀なクラフターなら他にもいる」
フトシが抜けてからペット愛好会には新たなクラフターが迎え入れられた。
ガチクランに入れるほどではないが、そこそこ腕に自身のあるクラフター。たまに評価Sを出せるくらいの腕はある。
「フトシほど評価S出せないじゃんあいつら」
「仕方ないでしょ。ミニゲーム難しいんだから」
「でもフトシはポコポコ評価S出してたじゃないか」
「あの人はそういう星のもとに生まれたのよ。そもそもあなたたち、レアアビ出ないってフトシに文句言ってたじゃない」
男性プレイヤーが息を詰まらせる。
「それはだって、あんなにレアアビが出ないとは思わないじゃん。あいつレアアビ量産機で有名だったから、クラフトを依頼すればポンポン出ると思ってたんだよ。こうなるって知ってたらもっと労ってたっつーか」
「もう遅いわよそんなこと言ったって」
「そうだよ遅い。だから出ていくんだ」
「無責任じゃない!」
「知らねえよお前のクランだろ! じゃあな!」
「あ、ちょっと!」
男性の姿がクランスペースから消失する。
スズが宙を掻いてコンソールを開くものの、クランメンバーの中から男性の名前は消えていた。
「何なのよどいつもこいつも!」
スズは地面を蹴りつける。
フトシがクランを抜けてからどんどん人が減っていく。新しいクラフターをクランメンバーに向かえても、クラン名をスタイリッシュに改名しても人材の流出は止まらない。
「一体どうすれば……」
クランを抜けたプレイヤーが求めるのは都合のいい評価S量産機。そんなクラフターはとっくに大手クランが囲い込んでいる。引き抜こうにも大きくなり立てなスズのクランでは不可能だ。
他にクランに取り込めそうなクラフターと言えば、該当する人物は一人しかいない。
「やはりフトシ……!」
フトシが全てを解決する。
スズは結論を出してクランメンバーに招集をかけた。




