第6話 きら丸の挑戦
マイルームに戻ってでけえ丸にためこんだ鉱石を放出させた。
でけえ丸がきら丸に戻った。
「よかった、ちゃんと小さくなって」
おかげで安心してクラフトにのぞめる。
今回作るのは『高山ランタン』。何でランタンを作るのに氷晶石が必要なのか分からないけど、素材に指定されているアイテムを片っ端からツボに突っ込む。
さあ音ゲーの時間だ。腕を構えてディスプレイを見すえる。
毎度のごとく玉が落ちてくる。
見慣れたノーツの中にデフォルメした太陽のような玉が混じっている。
ボタンを押すとパァーッと派手なエフェクトが弾けた。
「何だこりゃ」
玉の数はそれほど多くない。
でも邪魔だ。飛び散るエフェクトが画面の一部を隠して、ボタンを押すタイミングを見失いそうになる。
「こんな玉もあるんだな」
目くらまし。実に結構。
ノーツが下りてくる速度は一定だ。一時的に判定ラインが見えなくても目が覚えている。
「こんなもんに負けるかよ」
引き続きクラフトを続ける。ボタンを押すたびに少しずつ玉の数が増える。
いける。この程度なら二秒くらいまぶたを閉じてもやれる。
内心ヒヤヒヤしながらもパーフェクトを達成した。
「ふーっ、何とかなったな」
早速クラフト品を確認っと。
レア度2
『高山ランタン』
アビリティ【虫除けの灯り】
素晴らしい出来。このレベルの物は中々お目に掛かれない。
虫除けの灯りか。防虫LEDに似たようなものかな。羽虫とかが寄ってこないと考えたら便利だなこれ。
続いて高山テントをクラフトだ。
「キュッキュッ」
ミニゲームを始める前にきら丸が鳴いた。
振り返ると小さな体がぴょんぴょん跳ねる。
「何だ、きら丸もミニゲームやりたいのか?」
「キュッ!」
俺は壇の上から下りる。
きら丸がぴょんと跳ねて壇を鳴らした。きら丸の前にゲーム画面が表示される。
「おお」
すごいな。プレイヤーの視点に合わせて表示位置が変わるのか。
「おっし。がんばれきら丸!」
「キュッ!」
まん丸の体から二本の触手が伸びた。ほのかにきらきらしたそれらがスタートの文字をタッチして構える。
玉が落ちてくる。
触手がボタンを押した。判定ラインが『Excellent!』の文字を出力する。
「おお! すごい、すごいぞきら丸!」
Excellent!の文字が連続する。玉のスピードが速まってもくらいついている。
これはもしやパーフェクトいけるのでは。
そう思った時デフォルト太陽が弾けた。判定ラインが隠れてgoodの文字を表記する。
ミニゲームが終了した。
評価はA。Sには届かなかった。
レア度2
『高山テント』
アビリティ【薬草摘みの玄人】
中々のでき映え。クラフターとしての才を感じさせる。
「どんなアビリティだろ」
人差し指でタップする。
【薬草摘みの玄人】
薬草が得られる採取ポイントでの採取回数が+1されるかも、しれない。
「何だ、この反応に困るスキルは」
評価Aで得られるアビリティってこんなのなのか。
なるほど、小川ことオオガワがレアアビではしゃいでたのもうなずける。これは厳選したくなるわ。
俺はリザルト画面を閉じてきら丸に笑いかける。
「おしかったなー。もう一回やってみるか?」
「キュッ」
きら丸が触手をかかげて軽く曲げる。
やる気満々といった様子だ。
「よーし、もう一度同じやついってみよう!」
「キューッ!」
もう一度ツボに素材を投入。きら丸の後ろでミニゲームの成り行きを見守る。
評価はA。アビリティも鉱石+1になるかもしれないと微妙だった。
俺は改善点をきら丸に伝えて、試しに一度やってみせる。
相手はAI。人間とは違う。
それでも後輩に仕事を教えるみたいで温かい気持ちになった。




