第55話 ラムネのレベルアップ
課金土の使用上限までマクワの実を量産した。
その数実に百個を超える。マクワジュースをたっぷり作れそうだ。
在庫を表す数字に口角を上げる。
「今日はありがとう。また頼むよ」
「何なら予約しますか?」
「そんなことできるのか?」
「はい。日が変わってからになりますけど、事前に増やしたいアイテムをいただければ増やした後にお届けします」
「ならお願いしようかな」
「了解しました! ではコンソールを開いてください」
ファムさんの指示に従って予約を行う。
マクワの実とマニーの譲渡を終えてウィンドウを閉じた。
「フトシさん、フレンド登録いいでしょうか? マクワが育った後で連絡する時に便利なので」
「そうだな。今日以降も依頼する時があるだろうし」
俺はファムさんとフレンド登録した。別れのあいさつを告げてマイルームに戻る。
マイハウスにきら丸たちの姿はない。
「まだ遊んでるのか」
ちょうどいい。今のうちにマクワジュースを量産しよう。
俺は壺にマクワの実を放り込んでミニゲームに励む。
出品欄の数だけクラフトした。出品アイテムを全部取り下げて代わりにマクワジュースを並べた。
俺はアトリエを出て迷路の前できら丸たちの帰りを待つ。
淡い光がペットを形作った。
次いで新しいウィンドウが浮かび上がる。
【おめでとう! ラムネのレベルが3になりました!】
「お、レベルアップか」
ラムネの体が光を帯びた。
ウィンドウが新たな文章を紡ぐ。
【レベル3になったのでスキルを以下の中から一つ獲得できます】
『プリスムバリア』『光の羽ばたき』『スカイビジョン 』
「今回はどれにしようかな」
各種スキルの名前をタッチして詳細文を視線でなぞる。
プリズムバリアは、一定時間状態異常無効のフィールドを張るアクティブスキルだ。
戦闘専用なので却下。
次は光の羽ばたき。宙に浮いている間は移動速度が上がる。
これも却下。
「最後はスカイビジョンか」
クラフトや素材集めに役立つものであれ。そう願いながら人差し指の先端を叩きつける。
『スカイビジョン』
マップ上に隠されたアイテムやエネミー、隠し通路を光で照らして可視化する。
「これに決めた!」
即決だ。
レア素材の入手に使えるだけじゃない。ダークエルフと戦うにあたって潜伏場所を暴けるのはでかい。
スキル選択を終えて、あらためてラムネの姿を見すえる。
丸みのあったフォルムからカラスに近い尖りを帯びている。体が一回り大きくなって頼りがいが出てきたって感じだ。
「ラムネの成長も終わったことだし出かけるか」
「キュッ」
「ピィ」
俺はきら丸とラムネを連れてマイルームを後にした。
防具を作るにはマニーの他に素材が要る。
目的のエネミーは夜時間にならないと現れない。俺はそのエネミーを求めて日が落ちた密林を訪れた。
夜のとばりが下りた中でもラムネの光は色あせない。
「これは懐中電灯いらないな」
靴の下でパキッと軽快な音が鳴る。土や枝を踏みしめる内に甘い香りが漂う。
花のある場所に出た。黒にほのかな赤を映す羽がひらひらと開閉する。
ナハトバタフライ。目的のエネミーが花にとまって蜜を吸っている。
「行くぞきら丸、ラムネ」
告げて前に出た。ゴーレムブレードを振るって黒い蝶を狩る。
きら丸だけじゃない。今回はラムネも戦いに参加した。上空からの体当たりや爪による攻撃がナハトバタフライをポリゴンに変える。
群れで動いているのか、黒い蝶が消えてはやってくる。
素材集めがはかどるはかどる。
「ん」
月夜に照らされた地面が暗さを帯びて空を仰ぐ。
三メートルはあろうかという蝶が羽をひらひらさせている。群れのボスか何かだろうか。
せっかくだし倒していこう。




