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【祝10万PV達成】音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 磯野カジキマグロ


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第47話 違和感


 スズさんのダンジョン踏破の書き込みが話題になった。


 それを気に、ペット愛好会への加入を希望するプレイヤーが現れた。


 当初サグミさんは新規メンバー加入に乗り気じゃなかった。彼女はクラフトに興味を持ったから復帰しただけで、元々クランリーダーを務めるつもりはなかったらしい。ぷるるが自分にリーダーは無理です! と嘆かなければリーダーに復職する気はなかったのだとか。


 人を取る気に欠けるサグミさんを見かねたのか、加入面接はスズさんが率先して請け負った。

 

 基本来る者拒まずのスタンスなのか、日を追うごとにクランスペースに人が増える。比例して他のプレイヤーにクラフトを依頼されることが増えた。


 スズさんからクランメンバーの依頼は可能な限り受けるように、またクラン外からの依頼は極力受けないようにとお願いされた。依頼者がクラン内外だろうとミニゲームは同じ。それでも俺はこの頃から違和感を覚え始めた。


 あれこれする内に大所帯だ。クランスペースに行くと常に十人以上がいる。


 パーティに誘われることも多々ある。クラフトやペットの話がしたいのに、クランに加入するプレイヤーは全員血の気が多い。、俺はそこまでエネミーと戦いたいわけじゃないが、クランメンバー間のつき合いで同行せざるを得ない。


「なんか違うなぁ」


 そんなつぶやきが口をつくことが増えた。


 クラフトの依頼を受けるのはいいが、現状はほぼクラン専属で働くクラフターだ。


 趣味でやるのと仕事でやるのは違う。ものすごくモチベーションを削がれる。この前は危うく評価Aを出しそうになった。


「何か集まりがつまらなくなった気がする」

「言うな。スズはクランのことを思ってメンバー加入を進めたのだ。あんなでも」

「あんなとか言うなお前も」


 不満を抱えているのは俺だけじゃないらしい。漫才五人衆も人が増えてからはっちゃけることが少なくなった。


「クランのみんなちゅーもーく!」


 スズさんが壇を踏み鳴らして声を張り上げる。


 クランはすっかりスズさんが仕切っている。 


 当初の印象とはだいぶかけ離れて、今はバリバリのキャリアウーマンじみている。眼鏡を外して髪もショート。自信満々に胸を張っている。立場が人を変えるって本当なのかもしれない。


「今回はなんと! あの大手クラン日蝕の騎士団とダンジョン踏破の競争をすることになりました!」

「競争って」

「日蝕の騎士団ってガチ勢が集まるところだろ?

「大手クランに勝てるのかよ」


 クランスペースが一気に騒々しさを帯びる。


 拡声器で大きくなった声が騒がしさを上書きした。


「だいじょーぶ! 装備の性能で差をつければ私たちでも勝機はあります」


 スズさんがちらっと俺に視線を向ける。目が口ほど物を言うとはまさにこのことだ。


 また俺に作らせる気か。最近武器や防具しか作ってないぞ。


 たまらず挙手した。


「一ついいか。ここペット愛好会だよな? もっとのほほんとしたものを企画すべきだと思うんだが」


 漫才五人衆が腕を組んでうんうんと首を縦に振る。サグミさんも微かにうなずいた。

 

 スズさんだけが元気よく声を張り上げる。


「フトシさんが言いたいことは分かりますよ。でも今のペット愛好会はこんなに大所帯なんです。この勢いに乗らない手はないでしょう!」 

「いや、だからこの現状がおかしいんだって。エネミーとの戦闘を楽しみたいなら別のクランでいいじゃないか。どうして戦闘を好むプレイヤーばかりを集めたんだ」

「それが効率的だからですよ」

「何の効率だよ」

「クランを大きくする効率ですよ。イベントは基本的に戦いがつきものです。つまり戦える人員がいればいるだけクランがいい成績を残せて目立てます。フトシさんがいればこのクランだけ強い装備を確保できる。それがどれだけのアドバンテージになるか分かりますよねみんな!」

「そうだな」

「こっちにはあのフトシがついてるんだもんな!」


 周りが盛り上がる中、砂浜から去る波のごとく心がすーっと引く。


 周りに同意を求めて同調圧力で説き伏せようというのか。初対面の時から強引な面はあったけどいよいよって感じだな。


 ほらー! と言わんばかりにスズさんが俺を見る。


「みんなやる気なんです。フトシさんがクラフト好きなのは知ってますけど、子供じゃないんですからわがまま言っちゃ駄目ですよ。大人になりましょ。ね?」

「……そうだな。悪かった」


 ここは大人しく引き下がる。


 最近ずっと考えていたが、本格的に脱退を視野に入れるべきかもな。


「大丈夫! いずれフトシさんにも戦闘の楽しさが分かるようになります! それじゃ話の続きですが」


 スズさんが企画について語り出す。


 俺はどこかふわふわした心持ちでそれを聞いた。


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