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【祝20万PV達成】音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 藍色黄色


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第37話 征服欲とゆったりキャンプ


 他の妖精が警備につく中、アメリアがスプリガンに対して尋問を行う。


 俺ときら丸はアメリアのとなりについた。トロールが動き出すこともそうだが、アメリアが何を問うか気になったからだ。


 アメリアは怪我の有無を確認すると自身の名前を告げた。スプリガンからシンディの名を聞き出して、最初に安全の保障を約束した。


 次いで情報の提供を求めた。


 形式はお願い。


 相手からすれば取引も同然だ。提供を拒むと安全が揺るがされかねない。トロールという人質がいることもあってシンディはおずおずと語り出した。


 彼女はスプリガンの長に命じられてシルフの村を攻めに来たらしい。


 トロールは戦力として手なづけたものの、情がわいてペットのようなあつかいをしているそうだ。


「あなたたちは私たちの村を滅ぼして何をするつもりなんですか?」

「知らないわよ。私はあんたたちを捕らえろって命じられただけだし」

「それだけで、私たちにあんな獣を差し向けたんですか」

「そうよ」


 小さな指がぎゅっと丸みを帯びる。


 指輪を提供したのは俺たちだ。もし俺たちが知り合ってなかったら魔獣を追い返せず村が蹂躙じゅうりんされていた。アメリアが憤るのも当然だ。


 アメリアが小さく息をついた。


「あなたの村の場所を教えてください」

「今度はあたしたちの村を襲おうっての?」


 シンディがキッとアメリアをにらむ。


 アメリアは表情を変えずに言葉を紡ぐ。


「あなたたちの長と話し合いたいだけです。種族は違えど同じ妖精、争いはやめましょうと」

「話し合いなんて通じないよ。あたしたちの言葉だって聞いてくれないんだもん」


 シンディが目を逸らす。


 その瞳からは微かな寂しさが見て取れた。


「最近の長はおかしいんだ。獣を招き入れたと思ったら他の種族を狩れとか言い出すし。前はそんな精じゃなかったのに」

「おかしいと思うならどうしてみんなで止めないのですか」

「できるわけないでしょ。村から追い出されたら生きていけないんだから」


 妖精は非力だ。それはアメリアたちを見ていれば分かる。


 妖精界にどんな生き物が住み着いているかは知らないが、妖精一匹放り出されたらその末路は押して知るべしだ。


 シンディが俺たちに視線を向ける。


「まさかシルフが人間やドワーフと手を組むなんてね。どうりで差し向けられた獣たちが追い返されるはずだ。案外長の力をつけるべきって考えは間違ってなかったのかもね」

「私たちはスプリガン族が侵略を進めたと聞いたから――」

「もういいよ。あたしたちは負けたんだ、好きにすればいいじゃん」


 シンディが地面の上で大の字になった。


 アメリアが困ったような表情を浮かべる。


 ちらちら視線を送る周囲に気づいてすぐに表情を引きしめた。


「あなたたちの身柄は監視下に置かせてもらいます」


 アメリアが地面に落ちている蔓を拾ってシンディの手首を縛る。


 妖精界に植生する植物はどれも元気だ。育った蔓の頑丈さは縄に迫る。巨大化されない限り拘束を解かれることはないだろう。


 歩くトロールに目を光らせつつ村に戻った。


 村に拘留場こうりゅうじょうはない。ひとまずは広場に置いておくことになった。


 カジさんが即席の小屋を建てる中、俺はマクワの実を持ってシンディの元を訪れる。


「よっ」

「何よ」

「腹減ったんじゃないかと思って」

「敵に食料を分ける気?」

「もう敵じゃないだろ」

「何それむかつく。大体お腹減ってないし」

 

 くぅーっとお腹が鳴る。


 物言いとは裏腹にお腹は正直だ。小さな顔が見る見るうちに紅潮する。


「ほーら」

「何がほーらよッ! いらないって言ってるでしょ!」

「そうか? せっかく持ってきたのに無駄になっちまったな」

「じゃあそこに置いて行けば? 土の肥やしくらいにはなるわよ」


 とか言って、俺がいなくなったら絶対食うなこの子。


 仕方ない。


「もったいないから俺食うわ」


 かぶっと一口。しゅわっと炭酸っぽくて爽快感がある。


 あぁ……と悲鳴じみた声が聞こえた。


「冗談だって。ほれ」


 隠していたもう一個の果実を差し出す。


 にらまれた。


「意地が悪いのね。さすが人間だわ」

「いやーお前も相当なもんだぞ? で、どうするよ」

「食べるわよ」

「……取れよ」

「手を縛られてるのにどうやって食えってのよ!」


 そうだった。


 でも拘束を解くのはなぁ。


「逃げない?」

「逃げるわよ」

「そうか。じゃあな」


 俺はシンディに背を向ける。

 

 全力で呼び止められた。


 仕方ないから代替案を提示して果実を差し出す。


「言っておくけど指かじったら即帰るからな」

「分かってるわよ」


 ほんとかなぁ。

 

 内心びびってるとシャクッと音が鳴った。シンディがほお袋をもごもごさせる。


 不思議な気分だ。ペットに餌付けをしているような、それでいて征服感すら覚える。


 人はこの感覚を味わいたくて侵略を繰り返すのかもしれない。

 

「トロールって何を食べるんだ?」

「主に肉ね。骨がついたままの肉を焼いてあげると喜ぶの」

「妖精界で肉なんて手に入るのか? 魔獣って外から連れてきたんだろ?」

「そりゃ獣くらいいるわよ」

「じゃ探してみるよ」


 俺は広場を後にしてアメリアに話を通した。獣が生息するポイントを聞き出してきら丸と森に向かう。


 進んだ先で目新しい植物が目につく。


 採取ポイントで得られるアイテムも見覚えのない物ばかりだ。外と妖精界では植生が違うらしい。

 

 日が落ちて久しぶりにテントを張った。たき火のパチッという音を聞きながら沈黙にひたる。


 思えばきら丸に食べ物を上げたことなかったな。


 俺はポーチから採取した果実を取り出す。


「きら丸、食うか?」

「キュ」


 きら丸がぴょんと寄って果実を取り込む。


 なごむ。


 シンディにマクワの実を食わせた時とは違う、まるで心をがせたような穏やかさだ。


「思えばここ最近戦ってばっかりだったもんなぁ」


 素材集めにイベントの準備。充実した時間を送った自負はあるが、こうしてゆっくり羽を伸ばす時間はなかった。

 

 スプリガンの件はまだ片づいていない。近々また争いが起こるだろう。


 だからこそ、貴重なこのゆったりを楽しまないと。

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