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【祝10万PV達成】音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 磯野カジキマグロ


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第32話 第二回イベント


 第二回イベントの日を迎えた。


 俺はでけえ丸とペット愛好会のクランスペースにおもむいた。「でかあああああああああい!」という叫びを聞いてから漫才五人衆とあいさつを交わした。


 この日に備えて色々と準備してきた。ハイポーションの量産はもちろん、クランメンバーの装備を作って全体の底上げを図った。


 魔法を秘めた指輪も各種量産した。


 俺の役割は遠くから高い火力を叩き込むことだ。


 エーテルの矢には威力で劣るがリキャストの問題もある。指輪を使い回した頃には矢のリキャストが明ける寸法だ。


 サグミさんやスズさんとも合流して広場に転移した。


 ざわざわした空間には多くのペットが入り乱れていた。他のプレイヤーもペットをテイムしているようだ。


 視界内のキラキラ度合いが少ないことに目をぱちくりさせる。


「思ったよりクリスタルスライムがいないな」

「変か?」

「いや、だってあんたらきら丸に執着してただろ? てっきりみんなクリスタルスライムをペットにしてるとばかり」

「甘いなフトシ。そんなだからフトシなのだ」

「意味が分からん」

「みなが求めているのはクリスタルスライムではなくきら丸なのだよ」

「だから意味分からんて」


 視界内で元気よく手が挙がった。


「おいら分かった、有名になったクリスタルスライムって意味でしょ」

「貴様ッ! きら丸をそういう目で見ていたのか!」

「うわああああごめんちゃい!」

「許ちゃぬ!」

「そんで答えはなんだよ」

「大半の連中はきら丸をクラフト装置として見ているのだ。評価Sのハイポーションを繰り返し生産する便利なペット。奴らは欲しいのはそれなのだよ」

「ああ、そういうことか」


 確かに便利だもんなぁ。実際きら丸のおかげでワカハの露を調達する側に回れたし。


「まったく、ペットを装置あつかいするとはけしからん」


 ぷるるが腕を組んでぷんぷんする。


 あれ、でもこいつらもきら丸を要求してたような。


 んんんんんん?


「みなさん、こんにちはーっ!」


 談笑しているとアナウンスが響き渡った。軽いあいさつから始まってイベントの詳細が語られる。


 左胸の奧がバクバク言っている。


 できることをしてきたからこそだ。今日に向けてやってきたことが結実するかどうかが決まる。緊張しない方が嘘だろう。


 左腕を軽くつつかれる。


 振り向くときら丸が触手を伸ばしていた。


「大丈夫だ。きっとうまくいく」

「キュ」


 きら丸がモニターに向き直る。もしかして心配してくれたんだろうか。

 

 すーっと深呼吸。


 よし。


「それでは第二回イベントを開始します! 転移まで5」


 4! 3! 2! 周囲の声がカウントを盛り上げる。


 俺も「1!」と遅れて乗っかった。


「ゼロ! イベント開始です!」


 視界内が白一色に染まる。


 秒とせず白以外の色が戻った。


 転移した先は樹木であふれた地。以前ゴリラと戦った密林だ。


 ただし地形はイベント仕様。地肌が顔を出して伸びているから進む方角が分かりやすい。樹木も飾りつけられていてお祭り感がある。


「行くぞプルルン! この副リーダーに続け!」


 ぷるるがペットのスライムとともに駆ける。スライムの体を飾る鎧がカチャカチャと音を立てる。


「ぷるるんとしたフォルムを愛しているとか言っておいて鎧つけてんのかよ」


 そう告げると、鎧はぷるるんとしたフォルムを守るためだと言われた。何と言うか愛はそこにあった。


 オオカミ型のエネミーが立ちふさがる。


 打ち合わせ通りにエーテルの矢を放った。青白く光る矢が殺到してエネミーを消し飛ばす。


「いつ見てもすごい威力なり」

「感心してるひまはないわよ。こうしてる間にも他のクランが追い上げてくるんだから」

「分かってますって」


 足を止めずに奥を目指す。新手のエネミーは他のメンバーが指輪をかざして対処する。


 魔法を撃ち切っても倒し切れなかったら前衛の出番だ。


 エネミーは遠距離攻撃で消耗してるからサクっと倒せる。ダメージを負うリスクを抑えることで回復アイテムを節約できる。


 進む内に広場に出た。


 前方の地面に大きな影が落ちる。


「上から来るぞ」


 ぷるるが告げて、漫才五人衆の残り四人がハッとした。


「気をつけろぉ!

 気をつけろぉ!

 気をつけろぉ!

 気をつけろぉ!」


 どうして同じタイミングで同じセリフを言ったんだろう。

 

 大きなゴリラが地面をならした。伝わる地響きがその圧倒的重量をうかがわせる。


 見覚えのあるゴリラ。


 されど体毛は炎のごとく真っ赤だ。顔には歌舞伎じみた化粧がなされていて外連味けれんみがある。


 ドラミングが始まった。


 俺は俺の仕事をするべく剣をかかげる。


 さすがにボスエネミー。エーテルの矢だけじゃ倒せない。指輪の魔法で総攻撃をかけても倒し切れなかった。


 その一方でゴリラが悲鳴を上げてひるんだ。ダメージはしっかり積み重なっているようだ。


「やっと手ごたえのある近接戦ができそうだな」

「剣のリキャストに気をつけろよ」

「分かってるって。行くぞきら丸」

「キュッ!」


 走ってエネミーとの距離を詰める。


 ゴリラがドラミングを止めて腕を振りかぶった。


 まだ距離があると油断していると火球が迫る。


「おおっ⁉」


 反射的に横跳びして避ける。


 火球が通り過ぎて樹木の中に消えた。遠方で散った紅蓮が樹木に燃え移る。

 

 この前戦ったゴリラは火球なんて放たなかった。イベント仕様のボスは強化されてるって聞いたがこういうことか。


 リキャストが空けてエーテライトの儀礼剣をかかげた。指輪のアビリティもリキャストが明けた順から放つ。

 

 ゴリラが再び拳で胸を打つ。


 あっちこっちでボゥッ! と炎柱が噴き上がった。視界内が見る見るうちに赤く染まっていく。


 広場がまたたく間に最終決戦の様相を帯びた。


「ここから本番っぽいな」

 

 予想に違わずゴリラの毛が逆立った。丸太のように太い腕が頭上にかかげられる。


 紅蓮の穂が膨張して大玉に化ける。


 ド派手な大火球をかかげるさまは迫力満点だが、モーション自体は非常に見覚えがある。


 攻撃を予測するのは容易だった。後方で大爆発の音を聞きながらエーテルの矢を飛ばす。神秘的な青白さが真っ赤な空間に映える。


 ゴリラがポリゴンと化して砕け散った。


 広場の中央に門が現れる。


「もう終わりか、あっけないな」

「門に入るの。急いで」

「おう」


 俺たちは次なる場所を目指して門に駆け込む。

 


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