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【祝10万PV達成】音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 磯野カジキマグロ


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第11話 第一回イベント


 イベント当日をむかえた。


 俺は広場に集まった。あっちこっちでいくつものクランが拠点を構えている。


 夏祭りの屋台みたいで気分が上がる。


「おーいフトシー」


 オオガワが腕を振る。

 

 俺は軽く手を上げて応じた。


「オオガワ。今日はよろしくな」

「おう。クラフトの腕頼りにしてるぜ」


 俺は他のメンバーともあいさつを交わす。


 オオガワのクランは『筋肉最高』。それにふさわしく構成員はおっさんばかりだ。女性が入るとクランがぶっ壊れるらしく、大学サークルの崩壊を教訓として女子禁制にしているのだとか。


 俺は持ち場につく。


 イベント中は特別なクラフト作業場が設けられる。俺のマイルームよりも立派な物が設けられている。


「すごい設備だな。これほんとに使っていいのか?」

「むしろ運営は使ってほしいんだと思うぞ。そうじゃないとアップグレードの必要性を感じてもらえないからな」

 

 マイルームのアトリエにある設備は課金でアップグレードできるらしい。ミニゲームの内容が多少簡単になったり、新しいクラフト手法が解禁されたりするそうだ。


 イベント終わったら課金しよ。


「ところでそれはペットか? ずいぶんでっかいスライムだな」

「きら丸っていうんだ。この前もマイルームにいたぞ」

「そうだっけ。何にしてもクラフト班はダンジョンに入らないぞ。ペットはマイルームに置いてくりゃよかったのに」

「それはそうなんだが勉強になるかと思ってさ」

「誰のだよ」

「きら丸の」

「はあ?」

「おーいオオガワー」


 他のメンバーから呼びかけられてオオガワが離れる。


「相変わらず眼中になしって感じか」


 スライムって言うと大半のRPGじゃ雑魚敵だ。あなどられるのも当然っちゃ当然か。


「目に物を見えてやろうぜきら丸」

「キュッ!」


 キリッとした返事。きら丸もやる気みなぎっている様子だ。


 運営が号令をかけた。各々が持ち場についてスタートを待つ。まだダンジョンに潜ってないのにすごい気迫を感じる。


 俺の持ち場は即席のアトリエだ。チェアに座ってイベント開始のアナウンスを待つ。


「それでは第一回イベントスタートです!」


 オオオオオオオオオオオオオオオオオーッ! 


 突然張り上げられた雄叫びが広場をのみ込んだ。戦士たちが各クランに設けられたダンジョンの入り口になだれ込む。


 俺は早速ミニゲームに取りかかった。上から下りてくるノーツに従ってボタンを押す。


 きら丸は後ろで見稽古だ。


 クラフトのミニゲームは、同じアイテムを作る場合でもノーツの配置が変わる。完全に同じゲームになることはない。


 でも玉の種類やスピードは固定だ。


 評価Sに近づくにつれて玉の数やスピードは上がるものの、それにだって法則性がある。


 つまり見稽古が活きる。


 きら丸は評価Sが安定しない。評価Sに必要な高難度のノーツに慣れてないからだ。目を慣らせてパターンを把握すればSに至る可能性は大いにある。


 俺はでき上がったハイポーションをボックスに敷き詰めた。


「ハイポーション上がったぞ!」

「あいよ!」


 補給班がボックスを持ってダンジョンの入り口に消える。


 各自が役割に励む。ゲームの中なのに職場にいるみたいだ。


 今日顔を合わせたばかりの他人と一体化したような感覚。人はこの感じを求めてSNSに文字を書き込むのだろう。


 他のクランの補給班もダンジョンに駆け込む。


 今回のダンジョンはイベント仕様だ。ただでさえ難しいダンジョンが運営の手でいじくられている。


 前線では仲間が戦っている。エネミーの攻撃やトラップでHPを削られながらも最下層を目指している。


 調達班の仕事は彼らにポーションを届けること。


 その仕事はポーションの在庫がある限り行われる。素材がなくなったら調達待ちだ。


「露がなくなった! 調達班はまだか⁉」

「まだ帰って来てないぞ」

「マジかよ、くそっ」


 クラフト仲間がくやしげに表情をゆがませる。


 俺は振り向いて腕を伸ばす。


「きら丸、ワカハの露」

「キュ」


 きらきらした触手が体内から袋を取り出す。


「露こっちにあるぞ!」


 俺はきら丸から袋を受け取って放り投げる。


 仲間がキャッチした。


「ありがとう」

「気にすんな」


 俺は自分のクラフトに戻った。露がなくなってはきら丸から受け取る。


 でけえ丸が徐々にきら丸に戻っていく。


 やがて在庫の底が見えてきた。


「きら丸、そろそろいけるか?」

「キュッ」


 俺はキリッとした返事を聞いてチェアを立った。


「素材調達に行ってくる。しばらく席を離れるぞ」

「何言ってんだ、持ち場を離れるな」

「素材がなくなったらクラフトのしようがないだろ。今動かないと露が枯渇するぞ」

「調達班に渡すポーションが足りなくなったら同じことだ」

「大丈夫だ。俺の代わりになるクラフターを置いていく」

「どこにいるんだそんなもん」

「このきら丸だ」


 俺は自分のペットに腕を伸ばす。


 クラフター仲間が目を丸くした。


「テイムモンスターにハイポーション作りを任せるつもりか?」

「おう。きら丸は優秀なんだ、頼りにしてくれていいぜ」


 んじゃ行ってくる。そう言い残して広場から転移した。


 イベント中は雨の頻度が上がる。ワカハの露の需要が高まるとふんだ運営の心づかいだろう。


「まさに恵の雨だな」


 俺はNPCショップで購入した傘を持ってヨンド森林を駆け回る。


 ワカハの露を集めては仲間のもとに届ける。


 届けてはまた調達に走る。


 そのサイクルを繰り返す内にイベント終了のアナウンスが流れた。森が真っ白に染まったかと思うと、視界一杯に広場の光景が広がった。


 イベント参加者全員を対象にした強制転移。まさしく神のみわざだ。ゲームだけど。


「みなさん、第一回イベントお疲れさまでした。それでは結果発表に入りまーす。記念すべき第一回イベントを制したのはーっ、このクランだー!」


 宙に大きなスクリーンが映し出される。


 映っているのは俺たちだ。


「よっしゃあああああああああああああっ!」


 周りで大声が上がる。


 俺も勝利のおたけびに参加した。きら丸とハイタッチを交わして優勝を祝い合う。


 運営に促されて各班の代表が表彰台に上がる。


 リーダーのオオガワが緊張した面持ちでインタビューに答える。


 クラフト班のリーダーにインタビューが移った。


「オオガワさんのクランはハイポーションの供給がとどこおりませんでしたね。何かコツがあったんですか?」

「コツというか立役者がいました。ペットが露を増やせるとか、プレイヤーの代わりにアイテムをクラフトさせるとか、とにかく要領いいんですよ。正直うちに欲しいくらいです」

「そうなんですか。ちなみにそのプレイヤーをここに呼んでいただくことは?」

「もちろん。おーいフトシ、こっち来いよ」

「まじかよ。俺前に出る心の準備してないぞ」

「何言ってんだ、後つかえてんだから早く来いよ」


 俺はきら丸をつれて表彰台の前に出る。


 運営のアバターに自己紹介をうながされてフトシを名乗った。


「フトシさんは立役者ということですが、今回はどんな仕事をしたのか教えてください」

「俺はクラフト担当だったんですが調達も請け負いました」

「参加人数は初めから決められています。初めからそういう兼任する予定だったってことでしょうか?」

「いえ、割り振られたのはクラフト班だけです。でも露が不足することは読めていたので、クラフトをペットのきら丸に任せて露の調達に行ったんです」

「ペットにクラフトを! 評価の判定は大丈夫だったんですか?」

「はい。俺が知る限りほとんど評価Sと聞いてます」

「まさか意外な特技! お手柄でしたねきら丸さん!」

「キュッ!」


 きら丸が身を反らした。

 

「得意げな様子が微笑ましいですね! 今後の成長が楽しみです! それでは次に二位のクラン紹介に移ります」


 他クランの紹介や裏事情を聞いて、第一回イベントは幕を閉じた。





【クラマギ】クラフトマギア part1613【アイディアルセルフオンライン】


33名前:クラフト最高!

イベントのライブ配信盛り上がったな


34名前:クラフト最高!

ハイポーションの貯蓄が物を言う試合だったな。MP回復のアイテムはあまり使われなかったが


35名前:クラフト最高!

MPはスキルで回復速度上がるからな。コストにHPを消費するからなおさらハイポが重要になったわけよ


36名前:クラフト最高!

今回って自動回復つきのテント使われたの?


37名前:クラフト最高!

使われなかった


38名前:クラフト最高!

使ってどうすんだよ。どのクランが先にダンジョン踏破するかって勝負してたんだぞ


39名前:クラフト最高!

じゃどのみちハイポじゃないと回復間に合わなかったか


40名前:クラフト最高!

そういう意味じゃフトシって人うまくやったよなぁ。ペットにクラフト任せて自分は露調達って


41名前:クラフト最高!

単純に調達班の人員が一人増えるからな。そりゃ他のクランと差がついて当たり前だわ


42名前:クラフト最高!

クラフトできるペットがいたらそりゃあな。評価S連発できるペットとかずるじゃん


43名前:クラフト最高!

クラフト下手でもペットのおかげでクラフト班やれるのおかしいよな


44名前:クラフト最高!

>>43

何言ってんだちゃんとアーカイブ見てこい

あのおっさんクラフトで評価Sしか出してねえぞ


45名前:クラフト最高!

まじか。評価Sなんてトッププレイヤーでも安定しないのに


46名前:クラフト最高!

最近話題になってるレアアビつきアイテムってあのおっさんが作ってるんじゃね


47名前:クラフト最高!

そうなんかな。だとしたら一位のクランいい人材引き込んだなぁ


48名前:クラフト最高!

フトシはどこのクランにも所属してないみたいだぞ


49名前:クラフト最高!

まじで? じゃあ俺らのギルドに勧誘してみようかな


50名前:クラフト最高!

フトシはあのスライムどこでテイムしたんかな

さすがに教えないか


51名前:クラフト最高!

フトシは教えてくれるだろ。太っ腹そうな名前だし


52名前:クラフト最高!

何で呼び捨てwお友達かよお前らw


53名前:クラフト最高!

何言ってんだよ俺らのフトシだろ


54名前:クラフト最高!

太っ腹のフトシは心もフトシ



 イベント優勝を喜ぶフトシをよそに、ゲーム内掲示板は名前の語感で盛り上がっていたのだった。

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