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音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 藍色黄色


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第101話 フトシ!

 

 俺は魔界から妖精界に戻った。


 次いでシルネ村のお城に足を運んだ。客室に入ってアメリアと同じテーブルをはさんだ。


 人間大の給仕が二個のカップでテーブルの上を飾る。


 カップの中で面を張るのは薄緑の液体。アメリアいわく、ウンディーネの故郷付近で採れるフォーツという果実を使った紅茶らしい。俺が知らないところでしっかりと交流が行われているようだ。


 給仕が消えてアメリアと二人残された。


「いただきます」


 俺は紅茶を口に含んだ。ダージリンに似た芳香に包まれながら魔界であったことを報告する。


 魔界は薄暗く、狂暴な魔物がうろついていること。


 魔界の王が、妖精界に眠る兵器を狙っていること。


 ダークエルフを味方にできるかもしれないこと。


 そして渓流に現れた謎の人型についても伝えた。


 アメリアがカップをソーサーの上に置いた。


「ダークエルフを捕らえた判断は正解でしたね。地の利もあるでしょうし、魔界で戦う際には有利に立ち回れるでしょう」

「魔界に攻め込むつもりなのか?」

「そのつもりはありませんけれど、いずれにしても魔界の王と話をする必要がありますね。兵器の捜索を私たちの方で請け負えればいいのですが」

「それは難しいんじゃないか? 向こうは兵器を独占しようとしてるわけだし」


 強力な兵器を保有すれば妖精界の支配にもつながる。


 魔王がこっちに情報を渡すメリットは皆無だ。


「先に兵器を見つけて交渉材料にするしかないな」

「手当たり次第に捜索しないといけませんね。こういう時仲間がいると心強いです」


 ウンディーネにサラマンダー、ノームも合わせれば相当な数になる。


 彼らを仲間に引き入れる判断は正しかったわけだ。


「いつ探す?」

「今すぐは無理ですね。資材集めで多くの妖精が留守にしていますから」

「分かった。俺も所用を済ませてからまた来るよ」


 俺は城を後にしてマイルームに転移した。


 気持ちがはやる。早く早くと書き立てている。


 頭の中を駆けめぐるのは魔界で入手したレア素材。今度はどんなクラフトレシピが追加されたんだろ。


 アトリエに入るまで待てなかった。俺はコンソールを開いてクラフトレシピを展開する。


 人差し指でタッタッとスクロールする。


 新しく追加されたアイテムを見つけた。


「二つあるな。片方はまだ作成できないのか」


 作れるのはブラックホールオニキスを使うアイテム。無貌なる骸を用いるクラフトは他の素材が不足して作成できない。


 どちらにせよ初めてのレア度6クラフトだ。腕がなるぜ。


 俺はアトリエに入って壺の前に立つ。


「せっかくだし録画するか」


 例によってレア素材を消費するクラフトはぶっつけ本番だ。ミスを連発したら恥ずかしくて動画をアップロードできない。


 色んな意味で気が引きしまるぜ。

 

「録画開始と」

 

 俺はパネルをタップして壺の中に素材を落とした。


 眼前にミニゲームのウィンドウが展開された。背後できら丸とラムネが物音を立てる。


 久しく見る高級感のある銀枠だ。


 俺は貴重な素材を無駄にしないようにチュートリアルでルールを確認する。


「判定は中央にあるタイプか」

 

 名前にブラックホールを持つ鉱石を使うからだろうか。何にせよ初めてプレイするタイプのゲームだ。


 気合十分。ルールの把握十分。


 俺はSTARTのボタンを押した。


 画面中央に円状の白い判定サークルが浮かび上がった。


 背景の星屑めいたエフェクトが、渦を巻きながら円に吸い込まれる。重力に負けて崩壊を始めた恒星といったところか。


 音楽が始まった。


 低音が腹に響く。


 ドラムというより重力波みたいな振動だ。テンポは遅めだが、拍の間隔が一定じゃない。拍子が揺らぎ引き伸ばされて圧縮される。


 外周から光の粒ことノーツが現れた。それらが円を描きながら判定サークルに迫る。


 最初のノーツ。


 俺は深呼吸して慎重にタップする。


 PERFECTの文字が表示された。


「よし!」


 二つ目、三つ目と続く。


 だがノーツは等速じゃない。


 サークルに近づくにつれて加速するものもあれば、逆に引き延ばされるように減速するものもある。色や形状にも左右されるから大変だ。


 音を聞け。


 これは音ゲー。視覚よりもリズムだ。


 俺は画面中央だけを見つめて音楽に耳を傾ける。


 ノーツが吸い込まれる瞬間、音がわずかにゆがむ。そのゆがみが合図だ。


 コンボが伸びる。


 10、20、30。ゲームが進むにつれてサークルが少しずつ縮む。


 途中からサークルが青色に変わった。


 ノーツの種類も新しいものが加わった。二つのノーツが絡み合いながら同時に落ちてくる。


「同時押しか」


 どちらかでも失敗したらミス。


 だが焦らない。重力に身を任せるイメージで指を落とす。


 ――GREAT。


 完璧ではないが許容範囲だ。コツをつかんで次からExcellent!を連続させる。


 判定サークルが画面端付近まで膨張する。


 次の瞬間ノーツが画面の中央から発生した。一斉に吐き出されるように外周目がけて拡散する。


「逆流!?」


 いや、これは中性子縮退圧か。


 ゲームの終焉がブラックホールならもう終盤だ。内側からあふれ出す光をタイミングよく処理し続ける。


 曲が止まった。判定サークルが再び縮小されて画面の中央に収まる。


 超新星爆発が起こった。


 ゲームウィンドウが一瞬漂白されて、最後にブラックホールが顔を出す。


 Finish! の文字が表記された。


「っしゃ!」


 歓喜に任せてガッツポーズを取った。


 一回Greatを出してしまったことが悔やまれる。こんなことなら一億ボタンを外せばよかったか。


 ちょっとした後悔を覚えているとリザルト画面が展開された。




レア度6

『ヴォイド・グラスパー』

攻撃力 +31

アビリティ【超新星】 

素晴らしい出来。このレベルの物は中々お目にかかれない。



 

 武器種はナックル。


 レア度は素材と同じ6。攻撃力は大台の30超えだ。評価を見る限り一度ならGreatを出してもS判定らしい。


 そして何よりアビリティだ。


「なになに……手の平で攻撃を受け止めると攻撃判定を消失させる。いきなりすごいこと書いてあるな」


 攻撃を無力化する効果か。さすがレア度6の武器だ。


 しかもまだ説明文が続いている。


「攻撃を無力化するたびにカウンターが三つまで溜まって、敵を殴るとカウンターの数に応じたダメージを与えるか」


 ってことは最大火力は三つ溜めた状態での攻撃か。


 雑魚エネミーの攻撃を待つのは戦闘のテンポが悪すぎる。カウンターを溜める条件から考えるに対ボス用の武器だな。

 

 それを踏まえても攻撃を無力化する効果はでかい。


 あのきもい人型と戦った後だから余計にそう思う。回避すら難しい攻撃をされるとソロプレイじゃ対処の仕様がない。


 俺がタンクを担えばきら丸たちがアタッカーに回れる。


「おっと、忘れない内に動画をアップロードしないと」


 俺はクラマギに搭載された動画編集ソフトウェアを展開する。


 動画のコピーを作って早速編集だ。


「あれ、これコケッコーの名前で出していいのか?」


 コケッコーは怪人だ。ゲテモノ料理を作ってアクジキーをもだえさせるひどい奴だ。


 そんなファンキーな存在が、真面目にクラフトするだけの動画をアップしてもいいのか。


「……この動画だけ別名義にするか」


 怪人コケッコーのファンはゲテモノ料理を求めている。下手にクラフト動画を投稿すると、解釈違いでチャンネル登録を解除されるかもしれない。


 ファンが離れるくらいなら別名義でやった方がマシだ。


 俺はコンソールを操作して別名義の入力欄を開く。


「名前何にしようかな」


 コケッコーのネームバリューを使えない以上は知名度ゼロから始まる。せっかくのレア度6クラフト動画も視聴されなきゃ俺の自己満足だ。


 何かないか。


 一目見ただけでクラフト関連だと分かるような、都合のいい名前は。


 俺はハッとした。


「フトシ!」

 

 ここにきて、俺は他のプレイヤーたちと同じ境地に至った。






【クラフトマギア】配信者総合スレ part212


63名前:クラフト最高!

次は何味だろ。辛さと甘さってきたら次はしょっぱさかね


64名前:クラフト最高!

フトシの名前で動画投稿してる人いるんだが本物か?


65名前:クラフト最高!

偽物じゃね。そんな連中今まで何人出て何人消えたと思ってんだ


66名前:クラフト最高!

でも今までの偽物と違ってクラフトのミニゲームすごい上手いぞ


67名前:クラフト最高!

見たことないミニゲームだな。何のクラフトレシピだろ


68名前:クラフト最高!

ヴォイド・グラスパーって書いてあったな。調べたけど攻略サイトに情報はなかった


69名前:クラフト最高!

アップデートで実装されたアイテム使うんじゃね? レア度の上限6になったろ


70名前:クラフト最高!

レア度6かよ。そりゃ情報出回らんわ

そもそもトリガーアイテムどこで取れるんだよ


71名前:クラフト最高!

今一番新しいのはリリースしたペットと会えるところか

あそこで落ちないなら隠しエリア限定かもな


72名前:クラフト最高!

知らないアイテムの名前ばかり議論されてるけど、あの動画の投稿者すげえ上手くね?


73名前:クラフト最高!

ほんとよく反応できるよな

銀枠らしくチュートリアルはあったけど、俺は初回で対応できる気がしねーわ


74名前:クラフト最高!

内緒で同じミニゲームを一回プレイしてたんだろ


75名前:クラフト最高!

レア度6のアイテムが必要なミニゲームを二回したってか? どんな激運だよ


76名前:クラフト最高!

仮に激運じゃなければ初見で九割方Perfect出したことになるのか

本物かどうかはともかく普通に頭おかしいレベルだな


77名前:クラフト最高!

次の動画待ちだな

本物かどうかはそこで分かる


78名前:クラフト最高!

どうせならレア度6もう一個作ってほしいな

そうすりゃ本物かどうか分かるのに


79名前:クラフト最高!

何で本物かどうか分かるんだよ。分かるのは投稿者のクラフトが上手いことだけだろ


80名前:クラフト最高!

本物より上手いかもな。知らんけど


81名前:クラフト最高!

急にスレ加速して草


82名前:クラフト最高!

レア度6実装されたのに報告全然上がらないからな。そりゃ無風にもなる


83名前:クラフト最高!

偽物でも上手いから許す

とりあえずチャンネル登録はした


84名前:クラフト最高!

本物のフトシだったら祭りだな。俺のフトシ弾幕が火をふくぜ


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