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音ゲーマスターのおっさん、VRMMOのクラフトで評価Sを連発して無双する  作者: 藍色黄色


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第100話 逃走の果てに


「逃げるぞきら丸、ラムネ!」


 俺は身をひるがえして坂を駆け上る。

 

 やっぱり人型が追ってきた。腕とひざを九十度に曲げながらシュバババッと走り迫る。


「走るフォームいいなおい!」


 陸上競技に参加したらいいところまで行くんじゃないか。


 俺は心の中でそう突っ込みつつひたすら手足を動かす。


 エネミーの走るスピードはそこまで速くない。


 でも伸びる腕がやっかいだ。道を曲がって減速したらとどめを刺される。


 やるべきは直進、全速前進だ!

 

 正面に三匹のオオカミが映る。


「げっ!?」


 エネミーだ。


 まずい、このままじゃ挟み撃ちにされる。


 減速しないようにオオカミを蹴散らせるか?


 自問自答する前にオオカミが動いた。身構える俺の前でオオカミがすれ違う。


 振り向くとオオカミが異形に向かっていった。


 伸びた腕が一撃でオオカミの体を粉砕した。


 威力の高さもさることながら、俺は別のことに意識を引かれる。


「エネミーが俺を無視した?」


 クラマギのエネミーには生態系がある。時にはエネミー同士威嚇したり攻撃することもある。


 でもそれはプレイヤーがその場にいない時の話だ。エネミーは基本的にプレイヤーへの攻撃を優先する。


 それがどうしたことか、オオカミは俺よりも異形への攻撃を優先した。それほどまでにあの人型が脅威なのか。


 脳裏にひらめくものがあった。


「きら丸、ラムネ。エネミーを見つけたら小突いてちょっかいかけてくれ」

「キュッ」

「ピィ」


 返事をもらって疾走を続ける。


 早速クマ発見。きら丸の触手がエネミーの後頭部にジャブをくらわせた。


 クマが苛立ったように振り返って迫る。


 やはり方向転換して異形の方に向かった。また触手が伸びたものの、今度はエネミーの方も耐えた。


 鋭利な爪が人型を引っかく。


 成果はそれだけだった。二回目の攻撃でクマがポリゴンと化して砕け散る。


 俺の眼前でウィンドウが展開された。


「経験値とアイテムじゃん。俺が倒したあつかいになるのか」


 異形の足止めができる上にアイテムももらえる。 


 まさにいいことづくめじゃないか。


「こうなったらたくさんエネミーを巻き込むしかないな」


 楽しくなってきた。


 俺は発掘で入手した石ころをエネミー目がけて投げる。きら丸とラムネもちょっかいをかける。


 全部異形に向かっていく。


 経験値とアイテムが手に入る。


 まさに全てが手に入る感覚。たまらないぜ。


「お」


 見覚えのあるエネミー発見。


 岩から掘り出したようなゴツさと巨体。俺の発掘作業を妨害したゾウと見て間違いない。


 ゾウも俺に気づいた。巨体がおたけびを上げて地面をズシズシ踏み鳴らしながら迫る。


 俺はぶつかる前に右に跳んだ。すれ違ったゾウが人型に向けて駆ける。


 異形とゾウが真正面から接触する。


 初めて人型が地面にひざを突いた。右足を構成していた何かがバラバラになってうねる。 


 チャンス到来だ。


 俺はヴォルテクス・ハチェットをかざした。チャージされたプラズマがほとばしってゾウごと異形を打つ。


 でけえ丸が触手で人型を叩く。なおも健在な人型にゾウがタックルで追い打ちをかける。


 地面の上で跳ねていた蛇もどきが集まった。右ひざを再構成した異形が腰を浮かせる。


 異形の反撃を受けてゴツゴツした巨体が砕け散った。


 もうぶつけられるエネミーはいない。次はお前の番だと言わんばかりに異形が俺を見すえる。


 ここまで来たらやれることをやるだけだ。


「ラムネ!」


 ピヨオオオオオッ! と頭上から大きな鳴き声が響き渡る。


 異形が仰いだ直後、視界内が青白い光で満たされた。ラムネのため込んだ魔力が閃光とともに爆風をまき散らす。


 俺は両腕を交差させて目元を守る。


 前腕にかかる圧力が減衰したのを機に腕を下ろす。


「やったか?」


 やってるといいなぁ。


 悪い予感が当たった。煙に人型のシルエットが浮かび上がる。


 駄目だ、もう逃げられない。


 周りは樹木だらけだ。どうやっても真っ直ぐなんて走れない。樹木を迂回しようとした瞬間に腕が伸びて俺の背中を貫くだろう。


 だったら一か八か、突撃をかけるしかない。


「うおおおおおおおおおおおー―!」


 俺はおたけびを上げて駆け寄る。


 きっと腕が伸びてくる。避けられるかどうかじゃない、避けるんだ。


 その先にあるであろうレアドロップを信じて!


「おおお、お?」


 奇跡的に接近には成功した。異形目がけて斧を振り下ろした。


 その斧が見事なほどきれいに空振った。


 あわてて身構えるものの反撃はない。


 それどころか人型が消えている。後に残ったのはバラバラになった蛇もどきと、焼け焦げたように真っ黒な人型だけだ。


 蛇もどきはアイテムらしい。祝うようなサウンドに遅れてウィンドウが展開される。




レア度7

『無貌なる骸』

特殊なエネルギーで焦げついた物言わぬ骸。

かつて何かだったモノは、死してなお妖しい気配に満ちている。




「レア度7じゃん! すげえ!」


 アイテムのレア度に驚嘆したのも数瞬。頭の中が疑問符に満たされる。


「何で倒せたんだろ」


 俺は黒い人型に視線を向ける。


 人型は動かない。意を決して人差し指でつついても反応がない。


 あのエネミーがダウンしたのはついさっきだ。


 普通は何度もダウンした末に討伐までこぎつける。あれだけ強いエネミーがたった一回のダウンで倒れるわけない。


 一定時間逃げのびれば自壊するのか、出現場所から遠ざかると自壊するのか。


 原因を確かめたいけど、今は他にやるべきことがある。


「何にせよレアドロップゲットだぜ」


 どんなクラフトレシピが解放されたんだろう。


 今すぐにでもコンソールを開きたいが、この場はとにかく気味が悪い。物言わぬ人型が俺を見てる気配さえする。


 俺は背筋にぞくっとしたものを感じてきら丸とラムネに声をかけた。妖精界に戻るべく門への道のりを歩く。


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