第10話 ハイポーション量産計画
コンソールを開いて確認するとポーションのレシピがあった。
素材の薬草はある。試しに一個作ってみた。
『ポーション』
HPを100回復する。
素晴らしい出来。このレベルの物は中々お目に掛かれない。
とりあえず作っては見たけどこんなものでいいんだろうか。
ミニゲームは大して難しくなかった。これなら俺じゃなくても評価Sに届くだろう。
「そういえば掲示板に情報が集まるんだっけ」
俺はコンソールを介してゲーム内掲示板を開く。
【クラマギ】クラフトマギア part1580【アイディアルセルフオンライン】
3名前:クラフト最高!
イベント近づいてきたな
4名前:クラフト最高!
ダンジョンの攻略スピードを競うやつだっけ。弱小ギルドには勝ち目ないよなぁ
5名前:クラフト最高!
でかいギルドに入ればいいだろ。弱いやつでもポーションの素材集めくらいできるだろうが
6名前:クラフト最高!
ダンジョン攻略班と素材調達班、クラフト班に分かれることになるのかね
7名前:クラフト最高!
攻略班にポーション渡しに行く仕事もあるぞ
8名前:クラフト最高!
うわめんどくさ。そんなこともしなきゃいけないのか
9名前:クラフト最高!
だからギルド同士が手を組むケースもあるみたいだぞ。報酬は一位になったクランの関係者全員に配られるからな。参加人数に限りはあるが
10名前:クラフト最高!
トラップが地味にいやらしいんだよな。結構ダメージ受けるからポーションだけだと確1ラインに入るし薬草も使わざるをえない
11名前:クラフト最高!
薬草まずいからあんまり食いたくないな
12名前:クラフト最高!
味つけりゃいいじゃん。ミントハーブとか使って
13名前:クラフト最高!
クラフトは人によって質が全然違うのもなぁ
14名前:クラフト最高!
ミニゲームはさむから一個作るのにも時間かかるしな
疲れたらミスも増えるしクラフトも一長一短だ
15名前:クラフト最高!
ポーションだけで足りるかな。ハイポーションとか用意した方がいいんだろうか
16名前:クラフト最高!
どうやって作るんだっけそれ
17名前:クラフト最高!
ヨンド森林のワカハの露とポーションで調合して作る
「ハイポーションか」
響きからしてポーションよりも強そうだ。
ヨンド森林のワカハの露か。
「よし、取りに行くぞ」
「キュ」
きら丸とマイルームを出てヨンド森林に踏み入る。
湿気のある青々しい空間を歩いていると小雨が降り始めた。
俺はテントを設置して中で横になる。
うとうとし始めた頃合いになってきら丸がキュッキュと鳴いた。
「雨止んでたか。ありがとなきら丸」
「キュ」
俺はテントを片づけて歩みを再開する。
樹木が小雨のしずくに装飾されている。日光を反射してきらきらするさまは宝石で飾られてるみたいだ。
採取ポイントを見つけて歩み寄る。
薬草を摘む内に『ワカハの露』が手に入った。
「薬草に分類されてるんだな」
露ってワードがあるくらいだし、特定条件下でしか入手できない素材なのかもしれない。
ここにはハイポーション目当てで当分通うことになる。
俺はマッピングをしつつ採取ポイントを回った。気分転換にエネミーの相手をして、小雨が降ってはテント内で休憩する。
後半はでけえ丸と行動をともにした。
アイテムをたくわえている状態だとステータスが向上するらしい。新たな発見だ。
しかし参った。ワカハの露は小雨のたびに各採取ポイントから一個しか得られないらしい。
今回集まったのは五個。これじゃ出回るハイポーションの数もたかが知れる。質のいいポーションが求められるわけだ。
俺は素材集めを終えてマイルームに戻った。アイテムを倉庫に詰めてからきら丸にアイテム放出をうながす。
袋が床の上に落ちる。
ワカハの露のような液体は容器に入った状態で実体化するようだ。
「ん?」
ワカハの露が記憶よりも多い。増えてるのか?
きら丸が採取したアイテムは把握していた。数え間違いはしていないはずだ。
「スキル以外にも特殊能力があるってことか」
面白いな。ペットごとに何らかの特性が隠れているなんて。
見つけるのは大変だけど、うまく利用すれば他のプレイヤーと比べてアドバンテージを取れそうだ。
「きら丸、ワカハの露をありったけ取り込んでくれ」
「キュ」
液体の入った袋をきら丸に取り込ませた。
ポーションのクラフトに励みつつ、一時間置きにワカハの露の数を確認した。時にはたくわえさせるアイテムの数を減らしてみた。
「なるほど、アイテムが増殖するのは一時間おきか」
三個たくわえさせた時と、六個たくわえさせた時の増殖量が違った。
かと思えば五個と七個の時で増殖量が同じだったこともあった。あずけた数だけアイテムを増やすかどうかの抽選が行われるのかもしれない。
「できるだけきら丸にアイテムを食わせた方がよさそうだな」
掲示板の書き込みを見た限りでは、ポーションよりもハイポーションの方が好ましいとあった。
だったらやるべきことは明白だ。ワカハの露を量産してハイポーションの数を確保する。
「よし、もう一度ヨンド森林に行くぞ」
「キューッ」
移動中も貴重な時間だ。ワカハの露をありったけたくわえさせて、でけえ丸と再びマイルームを出た。




