「触れるな!聖女に。――覚醒と、魔族の本音」
ついに現れた、魔王直属のイケメン魔族ヴィルゼル。その目的は――まさかの「私」!?
守るために傷ついた騎士、距離ゼロまで迫る魔族、美醜では測れない“心の輝き”。
女神ルミエールの声に導かれ、私の力が目覚める……!
とは言ったものの、戦い方なんてわからない。
女神ルミエールには「サポート系のスキルを授ける」って言われてたけど、使い方の説明は一切なかった。
(ねぇ、ルミエール様!? 今こそ助けて!?)
そう心の中で呼びかけながらあたふたしていると、ヴィルゼルが静かに口を開いた。
「そう警戒しないでよ。今まで、人間ごときには興味なかった。けど今日は、脅威となる力を感じたから、様子を見に来たのさ。そしたら――カナコ、お前がいた」
え、なんでまた名前呼ぶのこの人!? なんかこわいんだけど!
「私たち魔族はね、人間のいう“美しい”とか“醜い”には興味ないんだ。だけど……その心の輝きには、魅力を感じるんだよ。カナコ――君、強いね。ますます興味が湧いたよ」
ヴィルゼルは艶やかに舌なめずりをした。
その赤い瞳にじっと見つめられ、私は思わずたじろぐ。
(こ、こいつ、完全にヤバいやつじゃん……!!)
するとその隣で、アースファルトさんが私の前にすっと立った。
「……貴様に、聖女様は渡さん! 相手になる!」
その一言に――胸が、キュンとした。
だけどヴィルゼルは鼻で笑った。
「ハッ。人間ごときが。私はいつだって、お前らなんか瞬殺できる。今までは、興味なかったからほっといてやっただけ。――身の程を知れ!」
その声と同時に、ヴィルゼルが右手をかざす。
黒い光が奔り、アースファルトさんの体に直撃した!
「――ッ!!」
アースファルトさんは吹き飛び、地面を転がった。
血を流し、ボロボロになって倒れている。
「アースファルトさん! 大丈夫ですか!?」
私は駆け寄って呼びかける。胸が苦しい。頭が混乱する。どうしよう。どうしたらいいの――
その隙を突くように、ヴィルゼルが――瞬間移動で、私の目の前に現れた。
(えっ、近っ!? 顔が、近いっ!?)
ほんとに、キスされるかと思った。
ヴィルゼルはすぐ目の前で、囁くように言った。
「カナコ。お前の輝きは、美しいね。あたたかくて、まっすぐで……魔族の私まで、こんな気持ちにさせるなんて――君が、欲しくてたまらないよ」
そう言って、抱き寄せられた瞬間――
頭の中に、声が響いた。
> 『カナコちゃん! 今よ! 手をかざして、“浄化”って叫んで! なんか出るはずだからッ!』
(……は!? なにそれ!?)
でも考えてる時間はなかった。私は――叫んだ!
「じょ、浄化ぁああああ!!」
すると、私の手からまばゆい光が放たれた!
巨大な光球となって、ヴィルゼルを容赦なく吹き飛ばす。
「な――ッ!」
ヴィルゼルは反応する間もなく、光に包まれ、向こうの壁まで吹っ飛んだ。
ズシャァァァァ!!
壁が崩れ、瓦礫の中にヴィルゼルの姿が見える。
左目と肩を押さえ、苦しそうにうずくまっていた。
(……えっ、なにこれ。今、私がやったの!?)
私は自分の手を見つめ、ヴィルゼルを見て――もう一度、自分の手を見た。
なんか出たァァァァ!!??
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ここまで読んでくださりありがとうございます!
覚醒イベント、ついに来ました!
謎のスキル「浄化」、今後もいろいろと鍵を握っていきます。
イケメン魔族ヴィルゼルさん、怖いけどちょっと色気ありすぎてズルいですよね……
次回は、戦いの後の“心の距離感”にも注目していただけると嬉しいです!