表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/41

「聖女の願い、護衛はあなただけ」

異世界に召喚された普通の私。戸惑いながらも、どうせなら――この世界のために力を使おうと決めた。

でも、信じられる人なんてこの世界にはいない。そう思っていたのに、出会ってしまった。

誰よりも不器用で、誰よりも真っ直ぐなあなたに――。

王様は重々しい声で語りはじめた。


「現在、我が国は魔族と敵対している。城壁に守られ、かろうじて平穏を保ってはおるが……その外には、魔獣や魔族がはびこり、森も川も魔素によって侵されておる。人々の住処も次々と奪われていっているのが現状だ」


まるで教科書のように整った説明。それでも、国を想う必死さは伝わってくる。


「城外の防衛には、アースファルトら傭兵団に魔獣討伐を依頼しておるが、それにも限界がある。伝承にはこうある――“真の聖女が現れしとき、魔族を討ち、浄化し、国を救わん”と……」


そして、王様は私を真っ直ぐに見据えた。


「どうか、聖女よ。この国を、救ってはくれぬか?」


王子様と違って、王様の言葉はまっすぐで誠実な響きだった。権力者のわりに、ちゃんと話が通じる感じ。ちょっと安心する。


私はこくりと頷いた。


「もちろん、お引き受けします」


……最初からそのつもりだったしね。


すると、王様はパッと顔を明るくした。


「それはありがたい! では聖女には、最高の待遇を約束しよう。すぐにでも王宮内に住処を用意する。専属の護衛団も組織し、万全の体制でお迎えしよう!」


専属の護衛団、ねぇ。


悪くない話ではあるけど、知らない人たちに囲まれるのはちょっと不安だった。せっかくこの異世界で、唯一少しだけ打ち解けた相手がいるのに。


私はそっと後ろを振り返る。


アースファルトさんは、いつもどおり無表情でそこに立っていたけど……きっと私が見てることには気づいていたと思う。ちょっと目をそらされたけど。


私は王様の方へ向き直り、意を決して言った。


「……でしたら、護衛にはアースファルトさんをお願いしたいです。短い間でしたが、彼の人柄には信頼が持てます。できれば、身近にいてほしくて……もし、ご本人がよければ、の話ですが」


一瞬、謁見の間の空気がピシッと張りつめた。


あ……やっぱり、空気読めなかったかな? アースファルトさんにとっては迷惑だったかも。


なんて不安に思ってたら、王様が思わず口を開いた。


「……ほう、聖女が自ら望むとは。だが……本当にその者でよいのか? 見目に多少……いや、かなり問題があるが……」


おーい、めっちゃ失礼なこと言ってるけど、気づいてる?


でもその直後、王様がアースファルトさんへと視線を向けた。


「アースファルト、どうだ?」


突然話を振られたアースファルトさんは、目を丸くしてしばらく固まっていた。


あ、やっぱり無理だったかな……?


と思った次の瞬間、彼はハッとしたように背筋を伸ばし、大きく一礼した。


「謹んでお受けいたします。聖女様のため、命を懸けてお守りする所存です」


(……そこまでかしこまらなくていいのに)


なんか申し訳ない気持ちにもなったけど、彼の顔は――どこか、嬉しそうに見えた。


よかった。ちゃんと嫌じゃなかったんだ。


その様子を見ていた王子様はというと、さっきからずーっと苦々しい顔でこっちを見てる。


(あ~……嫉妬? でも婚約者いるよね、あなた)


こっちとしては、キラキラ顔より、地味だけど頼れる人の方が安心するんだけどな。


そんなこんなで、無事(?)に護衛問題が解決し、謁見の場の空気も少し落ち着いてきた――そのときだった。


ドォンッ!!!!


突然、王城の天井がものすごい音を立てて崩れ落ちた!


「……っ!」


思わず悲鳴を上げそうになったその瞬間、私はアースファルトさんに強く抱き寄せられた。


「伏せてください!」


がしっと私を覆うようにして、彼は瓦礫の中で私を守ってくれた。


「だ、大丈夫ですか!? アースファルトさん……!」


彼の服には土埃がつき、肩に小さな傷も見える。でも、真剣な顔で私を見て、ひとこと。


「無事で……よかった」


その言葉に、胸がじんわりと熱くなった。


いったい何が起きたのか――まだわからない。でも、ただひとつ思ったのは。


(やっぱり、この人がそばにいてくれてよかった)


――王城を襲った突発の事件が、聖女カナコの運命をまた大きく動かしていく。


次回、 「黒き影の襲来! 聖女、力に目覚める?」

をお楽しみに!



---

ここまで読んでくださってありがとうございます!

不器用だけど誠実なアースファルトさんと、異世界で必死に生きようとする聖女の物語、少しずつ展開していきます。

王子様との関係も、これからどうなるか……?お楽しみに。

次回もどうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ