「ギブしてもいい異世界、らしいです」
突然の夢の中で、私は「守護女神ルミエール」と名乗る美女に出会います。転移の理由はまさかの“ノリと勢い”? しかも、いつでも帰っていいらしい……って、そんなに軽くていいの!? お人好しなカナコの運命やいかに!
まぶしい光に包まれた夢の中、私はぽかんと立ち尽くしていた。
そして、その光の中心から現れたのは――美しい金髪に、透き通るような肌、そしてまさに神々しい笑顔を浮かべる、絶世の美女だった。
「はじめまして~、野々村カナコさん! 私はこの世界の守護女神、ルミエールですっ☆」
めっちゃ可愛い声。 そして、めっちゃアイドルみたいなポーズ決めてる。
……でもなんだろう、この全体からにじみ出る、ちょっとズレた残念感。
「えっと……私、ここに勝手に飛ばされてきたんですけど、もしかしてあなたが?」
「そうですそうです! いや~、ほんとごめんなさいね? ちょっと急だったかなって思ったんだけど、あなた、心の優しさと根性のバランスがいい感じだったから、つい」
「つい、って……」
ノリ軽っ!!
女神様、ちょっと頭のネジ外れてない!?
「まぁまぁ。実はこの世界、今ちょっとヤバくて~。魔族が増えてきて、国もグラグラで、勇者もまだ未発見で。で、異世界から“渡り人”呼んだらワンチャンあるかもって思ってたところに、たまたま空き枠があって!」
「空き枠!?」
「いや、ちゃんと見てたんだよ? あなた、現代社会でがんばってて、でも心の奥に“本当は何か変えたい”って思いがあったでしょ? だから転移の候補にピックアップされてて!」
勝手にスカウトすな。
「でね! この世界を救ってくれたら、ちゃんと元の世界に帰れるようにするから! ギブアップしても戻れるし、ほんと強制じゃないの! でも、まずは1回やってみてくれない?」
……うわ~。めちゃくちゃ軽いノリだし、無責任っぽいけど、なんだろう。
あのまっすぐな目で言われると、断れない。
「……分かりました。とりあえず、“1回だけ”やってみます。でも、本当に帰れるんですよね?」
女神ルミエールは、ぱぁっと顔を輝かせて、親指を立てた。
「もちろんっ☆ そのために“渡り人サポートスキル”もこっそり授けておいたから、がんばってね!」
そんな軽いやりとりで、私は異世界を救うことになった――かもしれない。
でもまぁ……とりあえず、出来るとこまで、やってみるか。
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女神様、見た目は美人なのに、どこか残念。でもなぜか憎めない……。
というわけで、次回は王城へ出発。カナコの異世界生活、本格スタートです!