『目覚めたら森。そして天使扱い』
これは、ちょっぴりぽっちゃりで、癖毛で、顔は“ブス寄り”な女子高生・野々村カナコが、
ある日突然異世界に飛ばされ、
「お美しい……!」と跪かれ、
「触れるなど恐れ多い!」と避けられ、
挙句には「天使様」と崇められてしまう物語です。
※基本コメディ、たまに恋愛風味。
転移・美醜逆転・イケメンの勘違い多めのゆるゆる異世界ライフ、よければのぞいていってください!
目が覚めたら、そこは知らない森だった。
……いやいや、意味が分からない。たしかに、寝る前まではちゃんと布団の中にいた。
着ているのはパジャマのまま。夢かと思ったけど、風の音も、森の湿った匂いも、肌にまとわりつく空気も、やけにリアル。
「……これ、もしかして流行りの異世界転移ってやつ?」
でも、そんな展開が自分に訪れるなんて思えなかった。
野々村カナコ、17歳。
ちょっぴりぽっちゃり体型に一重まぶた。団子鼻にくせ毛でゴワつく髪――まあ、正直に言えばブサイク寄り。
でも、両親は優しいし、友達にからかわれたこともない。最近じゃ、バイト先の三つ上の先輩とちょっといい感じだったりして。
地味だけど幸せ。そんな、どこにでもいる普通の女子高生だ。
もちろん神様からの啓示なんてないし、異世界チートスキル的なものも、心当たりゼロ。
頭が混乱して、最初は誘拐されたか?なんて疑ったけど、とにかく誰かに会って話を聞かなきゃと、裸足のまま森の奥へと進んで行った。
そのとき――。
ガサッ。
木の陰から音がした。ビクッと肩が跳ねた。
熊!?イノシシ!?と身構えたけど、現れたのは……人だった。
ボロ布をまとった、背の高い男。180センチ以上はあるだろうか。体格もいい。
フードで顔はよく見えない。でも、こっちを見て動きを止めている。
「……あ、あのっ……」
恐る恐る声をかけると、彼は震えるような声でつぶやいた。
「……声も……可愛い……天使……?」
え、え?何言ってるのこの人?
声かけたの私なんだけど!?天使って誰!?
混乱しつつも普通の人っぽかったので、状況を確かめるべく一歩近づく。
すると彼は後ずさりし、「近づいてはいけません!」と叫んだ。
その拍子に木の枝に引っかかったのか、彼のフードがパサリと落ちた。
――瞬間、私の息が止まった。
そこには、今まで見た中で一番美しい男がいたのだ。
通った鼻筋に切れ長の青い瞳、長いまつ毛に銀色の髪。
唇は少し厚めで、汚れていても色っぽさを隠せない。
まさに“絵に描いた美形”。なのに、その彼が――
「す、すみませんっ!お見苦しいものをっ!」
と、顔を隠してうずくまるじゃないか。
……うん、わかったぞ。
これ、多分あれだ。
美醜の価値観が逆転してる異世界に来ちゃったやつだ――!
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最後まで読んでくださってありがとうございます!
まだまだ状況がつかめていないカナコですが、次回はさらに美形からの謎の崇拝が加速していきます(笑)
今後もゆるゆると、笑って読める異世界ものを目指して書いていきます。
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