第98話 行ってきます
「あ、えっと、魔法士――エンリと言う人の血を回収し分析しているので可能です。『ドーン・エリア』に登録している人物か照会するのが目的でしたが、それから家族の割り出しは可能です」
ダアトさんの行動に面食らっていた総警庁の人は真面目さを取り戻し、すぐに懐からガジェットを取り出して通話を始めた。
金色のカード、それがここで発売されている通話用ガジェットのようだ。
「――はい。
解りました、ダアトさま、みなさま」
「そう、良かった。
それじゃあみんな、エンリちゃんがここに現れるのを待つ? それとも御家族の元に行く?」
「オレは行きます」
エンリが今、グリムの意志と人間の意志どちらに傾いているのかは不明だが、これ以上エンリの本意とは違う形の戦闘をさせたくはない。エンリは魔法士、人を守る為の組織に身を置いているのだから。
ならば現れるか解らないここで待つより現れる事が解っている親御さんのところに行こう。その方が確実に遭遇出来る。
「私も行きます。糸掛の銃弾の大半は私が作っている空間に収納していますし、それにアクセス出来るのは糸掛と私だけ。糸掛が戦闘中に銃弾を取り出せなくなったら私がやらなきゃ。
糸掛の援護は私がやります」
「マインは残るぜ。こっちに現れる可能性もあるからな。
ただその前に頼みがある。
心樋、マインらの銃弾も亜空間に収納されてんだ。マインの銃弾に手が届くのはマインと石見だけ、フォゼの銃弾に手が届くのはフォゼと石見だけ。
石見、アクセス権を心樋にも分けてやってくれ。んで心樋、マインらの援護を頼む」
「う、うん。やれる事はやるよ」
「良く言った。
フォゼ、お前も良いか?」
「はい、おれも残ります」
「石見」
「ん。解った。
心樋、手を出して」
「こう?」
まっすぐ伸ばされる心樋の手。それを石見は恋人のように握って。
「共に」
唱え、意識を集中させる。
すると繋がった石見と心樋の手を包むように魔力の糸が現れて、消えた。
「これで良し」
離される手。
自身の手を見て、開いたり閉じたり、心樋。
「うん、大丈夫。出来るよ」
「じゃあ、行こうか石見。総警庁の人、御両親の住んでいる場所と職場の住所を教えてください」
「はい! ダアトさま、そこのメモ帳を使わせていただいても?」
「構わないわ」
部屋の隅に置かれている棚の上、そこにあるメモ帳から一枚とって、ペンを走らせる。
それを受けとったオレは。
「行ってきます」
「充分気をつけるのよ、糸掛くん、石見ちゃん」
「「はい!」」




