第93話 肌と同じ色の水着を着るな裸に見える!
「飛ぶなって事かよ」
「これ……歩いていくの兄さん?」
「みたいだな……」
少し気後れする。
いやだって、浮島に一直線に伸びる階段、軽く千段はあるんだよな。試練かい。
「昇るっきゃない、よね……」
「ああ……行くか」
きっとこれを昇るだけの価値があるのだろう、工房主の腕には。あると信じよう。
オレたちは階段を昇り始める。
一段、十段、百段。
こうして昇っていると階段の幅を狭く感じる。実際は五メートルはありそうだが、手すりも壁もないからちょっと怖い。
「まだまだ」
二百段、三百段、四百段。
「ま、まだまだ」
五百段、六百段、七百段。
「頑張れ心樋」
「お、お~いえ~」
疲れで足が止まりかけている心樋の背を押すオレ。
八百段、九百段、千・段!
「「「着いたー!」」」
踏破した! 踏破したぞー!
疲れ火照った体に風が気持ち良い。
と、なんとなくバンザイしていたオレたちの声を訊いたのだろう、浮島に唯一ある大屋敷――洋式の工房の各部屋から男女何人か顔を見せた。
そして引っ込み「先生ー、お客さんですよー」と言う男性の声が響く。
そうか、工房主のお弟子さんたちか。
ここで待っていても良かったのだがオレたちも大屋敷、その玄関に着くと呼び鈴を押した。
二十秒くらい待つと――
「やっだマジ昇って来たの?」
黒い肌をすっごく見せた際どい水着姿のグラマー姉さん登・場。
ん? 待て違う。この人女性用水着だけどお兄さんだ。
ポピーレッドの髪はソフトモヒカン、眼はクリーム色。背はオレより頭二つ分は高く着用している水着はビキニで胸は小ぶりだが確かにあって。
しかし、下の方の膨らみも確かにあって。
って、そこは良いのだ。体が男でも心が乙女な人はいるだろう。
問題は別にある。
それは――
「「「肌と同じ色の水着を着るな裸に見える!」」」
ってとこだ。
この真っ当な意見に対して工房主――錬石士のお姉さんは。
「え~? 魔法石の精練って汗かくのよ~ベットベトの服気持ち悪くてイヤなのよ~」
唇を尖らせてブーたれるのだった。
それならそれで違う色の水着にしたらどうなのか。と言ってみたら。
「ふ、男共の驚く顔って面白いじゃない」
それ、夜に現れる変質者の思考なのだが?
「まあ入って。魔法石持ってここに来たって事は錬石士のあたしに用があって来たんでしょ?」
「え、ええ。そうです」
若干引き気味で、石見。
ってか魔法石持っているって解るのか。
「解るわよ~。何百何千って魔法石いじってきたんだもの。
ちゃんと階段昇って来た貴方たちにはお茶でも出してあげるわ。
そっちは魔法石を出して。見てあげる」




