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第85話 この眼についてはもう解っています

 なん……っ。


「これは別に秘密の正体ではないの。普通に祭姫(まつりひめ)としても行動しているから、I(アイ)

 知らないのは新しくここに入った子だけ。

 Iたちスリートップはね、そう言う子たちに自分から挨拶をしに行くのが習わしなの。

 今回、最初はI。いずれ他の二人も来ると思うわ」


 その時は優しくしてあげてね、と続く言葉。軽やかに、歌うように言葉が紡がれる。

 挨拶。だけでわざわざ来てくれた、のか?


「そうしたかったけれど、此度はもう一つ用事が」


 用事?


「依頼とも言うわ。

 ストレートに隠さず言うわね。

 エンリ、ジャイル、タータルが明日の九時から処分対象としてクエストリストに載ります」

「「「な⁉」」」

「シー」


 星綴澪(エーアステ・リーベ)に「シー」と言われ慌て、口を噤む。

 だが驚かずにいられようか。あの三人なにをした?


「ただし、犯罪者としてではありません。

 危険度(リスク)AA(ダブルエー)のグリムとしてよ」


 グリ……ム!


「彼女たち、行方不明になったわね?

 それは貴方たちをここに入れるのが任務だったから。

 目的は天使。貴方たちなら天使を解放出来ると思われたからよ。

 ただし天使の退治は自分たちの手で。

 その為に姿を消し、貴方たちを見張り最後のトドメだけを持っていく。

 これが『スティルボーン・ルナ』が彼女たちに与えた任務。あ、組織名言っちゃった。まあ良いです」


 良いのか……。情報知ったからオレたち狙われたりしないだろうか?


「『スティルボーン・ルナ』のやり方が気に入らないので、良いのです。

 それはIだけではないの。天使も同じ。だから天使は子供たちに伝えたの。

 三人をグリムに変質させましょうって」


 人をグリムに? 可能――いや確か子供たちは言った。「人として死なせてグリムに変質させようとした」と。古栞(こおり)の呪いについてだ。可能なのか。

 考えてみたらギフト・イヴェントもグリムの王になったんだし。


「恐ろしい手段だけれど。

 魂を消失させ、空っぽになった体に無垢なグリムの卵を容れ孵化させる。

 そうして生前の記憶を継いだ特異なグリムに細胞ごと変質させるの」


 ……ん? と言う事は?


「考えたわね? ギフト・イヴェントはどうなのか、と。

 答えは貴方たちが考えた通りです。ギフト・イヴェントの魂はもういません。

 今、彼の体を操るのは記憶を継いだグリムよ」


 待て。待ってくれ。

 ならばなぜ『王』を名乗る?


「ギフト・イヴェントは【メルヒェン・ヴェルト】の残滓を全て受け止めてグリムの王となった。

 では【メルヒェン・ヴェルト】とはそもそもなんなのか? 子供たちの願い(おもい)を照らす太陽・篝火とはなんなのか? どうしてそこに出来る影がグリムと呼ばれるのか?

 ヒントは沢山あげたわ。

 ここから先はこれからゆっくりと知っていって」


 え? 答えくれないの?


「ごめんなさい。意地悪したくはないのだけれど、考える事は必要、と言うのがIを生んだ母の言葉。ここまでなら話して良いと言ったのも母なの」


 母。星綴澪(エーアステ・リーベ)の生みの親。作り手。

 頭良いんだろうなとバカみたいに思ってはいたが、【メルヒェン・ヴェルト】についても知っている?


「ただ、貴方たちとしては母に操られるのはイヤでしょう? だから一つ教えてあげる。

 母は『ドーン・エリア』にいるわ。

 全て知りたいのなら彼女を探して。ひょっとしたら向こうから接触があるかもだけれど。

 母は大変興味を持っているわ。天使をこちらに落とした糸掛(いとかけ)、貴方に。貴方のルビーの瞳について母なら答えをくれるでしょう」


 オレの……眼。黒色に近い茶色から真紅に変わったオレの眼、か。

 天使は【メルヒェン・ヴェルト】と繋がってしまったと言っていたが……。


「いや、この眼についてはもう(わか)っています」

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