第74話 兄さん~助けて~
とは言え、翌日になってオレたちはまずホテルを変える事にした。
エンリたちが敵だった場合、宿泊場所が知られているのはまずい状況を生むかもだからだ。
次に選んだホテルではトリックアートが多用されていて、
「うぉう」
部屋に入って“大穴”に落ちそうになるオレを見、
「あはははははは」
石見が爆笑した。
大穴は勿論トリックアートだ。落ちるはずもない。しかし……部屋の床全部が抜けている絵を見てビビらない人間なんていない。うん、いない。絶対だ。
トリックアートはこれだけではなく。
「兄さん~助けて~」
壁から飛び出て牙をむく怪獣に食べられそうになる心樋。
「うひぃ」
ゾンビに追いかけられるオレ。
「こっわ」
鏡から出てこようとする女の霊に一歩引く石見。
「どう? 可愛い? 可愛いって言って」
「男の子に?」
大きな飛び出す絵本に入り込むオレ。
などなど。
ホテル自体が一つのアミューズメント。
しかし当然遊んでばかりではない。
「いたいた。そっち行ったぞカノ」
逃げ出したペットを探し出し飼い主のもとへ。
「糸掛!」
「あいよ」
石見が追い込んだ強盗をオレが上から蹴りをかましノックアウト。
「「せーの」」
オレとフォゼで麻薬の売人である男の足を前後から弾いて股関節を脱臼させて逮捕。
「「「なんだああああああああああ⁉」」」
街中の屋敷で堂々と銃の密売を行っていた連中を、心樋の覚えたて魔法で天井丸ごと落として一網打尽。
大小様々なクエストをクリアし賞金をいただいた。
その中でもちょっとだけ苦労したのが一つ。
「あれか」




