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第67話 いるんだろう?

 足跡を辿る。ゆっくり進んでは追いつけないので早歩きで。

 どうやらこの人物は人がたくさん集まる場所を選んで進んでいるようだ。目的の賞金首ならオレたちのような追手からの奇襲を警戒してだろう。人がいたら襲いづらくなる。バトルになったらまず人の波から遠ざける必要があるな。

 そう、思っていた。

 足跡はゆっくりとだが人波から外れていく。

 どうして?


「私たちに気づいたのかも」

「でも気づいたなら人の波から外れないんじゃないか?」

「う~ん」


 気づかれた可能性は大いにある。だってずっと足跡光らせているからざわつく人たちがいる。光る足跡は石見(がらみ)から半径一メートル内のモノだけだが、それでも不審には思われているだろう。人の言葉は人に伝わり、賞金首の耳に入る。なれば警戒もされる。

 だがそれなら人の少ない方に行くのはおかしいのだ。


「まあ、行けば(わか)るか」


 足跡はどうやら公園に向かっているようだ。

 それを理解したオレたちは一時足跡を追うのをやめて別のルートから公園へと急いだ。

 ただし石見の目にだけは遠くにある足跡が映り続ける魔法を使用して。でないと全く別の道に進む可能性があったから。

 これで相手の警戒心も()けるかと思ったがそんな事はなく。

 足跡の主は緑豊かな広い公園に入った後も人のいない方いない方へと進む。

 人工的に造られたであろう大きな湖の畔を進み、岩場に入る。

 やがて小さな滝に差し掛かったところで、


「いるんだろう? 出て来いよ」


向こうから声をかけられた。

 地上を行っていた石見と心樋(ことい)、そして銃を持って空を歩いていたオレ、二組は合流して目的の人物の前に躍り出る。

 挟み撃ちに出来れば良かったのだが残念ながら目的の人物――男性が滝を作る岩の上に陣取った為に出来ずに。

 男性は、肩まで伸びているほぼ白髪のフロスティグレイの髪を波立たせ、ダックブルーの眼でオレたちを鋭く見続ける。

 そしてその男性の傍には、機械のサメが浮かんでいた。


「ラオ・クェイサー、であっているかな」

「ああ」


 オレの確認に男は素直に認めてくる。

 人相に名前、連れている機械獣、目的の賞金首に間違いなかった。

 ラオ・クェイサー。本来のサメの持ち主を襲いこれを強奪、生体認証を書き換えて自らのパートナーにする。賞金は生け捕りで五十万エール、死体で三十万エール。犯罪深度(クリミナルスケール)は5。5級クリミナル。サメの元持ち主を殺さずに気絶させただけだったから5級クリミナルに留まっている。


「サメを奪い返すだけじゃダメだってさ」

「当たり前だな」

「素直に捕まる気はあるか?」

「ない」


 ラオから漂う空気が変わった。

 様子見からケンカへ。

 だからオレたちも臨戦体制をとり、サメが姿を()いた。

 アメリカの準魔法士は機械獣を纏って戦う――そう()いていたから鎧のようなモノを想像していたが、実際は少し違った。

 ラオの体の周囲に武装として浮いている。バトルオーラを発し、それをラオに供給する形で。

 空気が再び変わる。

 ケンカから戦闘へ。

 ――やるか。


「心樋、心樋はオレたちの治癒と自身の盾に専念な」

「うん」


 愛銃『ギフト・バレット』を構える。

 それと同時にラオが地面に“潜った”。

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