第65話 みんな、無事で
「良し、ホテルも確保したしそろそろ――」
「総警庁だな」
オレの言葉をジャイルが継ぐ。最後まで言おうと思ったのにせっかちさんめ。
「行こうぜ」
そう言うと誰の返事も待たずに歩き出して。けれど五メートルくらい歩くとオレたちの方を振り返って追いつくのを待って。一人で行くのは淋しいらしい。
そこからは全員揃ってエスカレーターに乗って一階へ移動した。
「ふむ」
二階に比べるとオシャレ度は低くなるがそれでも綺麗な階だ。ここも星をテーマにし、建物の外観が他の建物を邪魔していないからそう見えるのだろう。
そんな中にあるのが総警庁。簡単に説明するなら警察だ。ただしここでは軍の下に位置している組織の一つ。
「これか。本当に総警庁ってとこか?」
疑問を口にするのはカノだ。
オレも口にしたい。
だって、なんと言うか……子供っぽい。カラフルで、マスコットキャラなのかなんなのか柱を何体かの石像キャラクターが支えていたりする。
「多分子供に好かれようとしているんでしょうねえ」
「可愛い、わ。こちらはこの雰囲気好きよ」
「なんか緊張感殺がれたぞ儂は……」
「この子たちの名前なんて言うのかなぁ」
『“たー君”だよ。こっちは“いー君”と“ほー君”』
「「「わぁ!」」」
心樋に名を訊かれて応えたのは、なんと石像のキャラクターたち本人。び、びっくりした。
え、喋れんのこの子たち?
どうやら知らないのは珍しいようで警備や周囲にいた人にクスクスと笑われてしまった。恥ずかしい。
『夜の門番も兼ねてるんだ』
「そ、そうなんだ。ワタシ心樋。よろしくねー」
『よろしくー』
しかしなんだ。キャラの名前、ストレートだな……。前々から思っていたがここ日本語多いな。関係者に日本人でもいんの?
「……入ろうか」
玄関先でたむろしていてもあれなので、中へ行こう。まずは言ったオレがガラスドアを抜けて中へ。みんなも続く。
中の空気はちょっと緊張感があったがそれでも比較的フレンドリー。働いている人の表情にも硬いモノはわずかで笑顔がある。楽しんで仕事をしているって感じ。良い雰囲気だな。
受付の人にここにやって来た理由を説明すると「三番です」と言われたのでそちらに行く。
全員で行く必要はないと思ったからオレ・カノ・ジャイルの三人で。他のメンバーはソファでくつろいでいる。
で、何人か先約がいたので待って、オレたちの番。リストが欲しいと言うと要求分出してくれた。十センチくらいの金色、棒状のデジタルガジェットで三部。棒の先端を押すと表示される仕組みで今後自動更新されるとも教えてくれた。
「ありがとうございます」
礼を一つ言って、みんなと合流し、外へ。少し総警庁から離れて。
「研究所についても訊いといた。
信頼のある人にしか門扉は開かれない、だそうだ。
だからまずは犯罪者を捕まえるのに協力して信頼を得ようと思うんだけど、どう?」
「良いと思うよ、それで行こう」
オレの問いに石見が首肯し、全員の同意も得た。
ならば早速動くか。
「せっかく三部貰ったんだ。固まって動く必要はないんじゃないか?」
と、ジャイル。
オレもそれに同意する。
「リストに載っている犯罪者は犯罪深度が軽い方から5・4・3・2・1・0。
今日はまず軽い方から行こう。
三組で行動して、で、状況を見て合流するってのはどう?」
「そうだね。組み分けはどうする?」
石見の問いにはカノが、
「マインとフォゼ。
石見に糸掛、心樋。
エンリとジャイルとタータル。
これがベストじゃないか?」
と提案。これに反対する人はいなくて。
「んじゃそれで。
みんなの無事を確認する必要があるから一時間ごとに連絡を取り合って、夕方の十九時にはホテルに集合。こんな感じが良いかな」
「ええ糸掛、それで良い、わ。
じゃあ行きましょうか。
みんな、無事で」
「「「おう」」」




