第57話 さぁて、なにがあんだろうな三巨塔には
「人の多い」
駅に着いた。近くにあったのであっさりと。着いて、ごった返す人に少し気後れしてしまう。
黄色い人、白い人、黒い人。三人種全て揃っている。
大人も子供もいる。
人が多いのは外縁部のガラスの塔から戻ってきた人たちが家路に着いているからだろう。
「綺麗な駅だよね」
星をテーマして作られている駅舎を見て、石見。
群青色がメインカラーで、天井からは星や太陽・月のオーナメントがぶら下がっていた。
床は足を着くとエフェクトが広がる特別仕様。
大きな時計には数字の代わりに十二星座が刻まれていて一時間ごとに音楽が流れ人形が躍るようだ。ちょうど見られた。これを目当てに来ている人も少なくないようで時計の下には人が集まっていた。
止まっていた足を動かすオレたちはまず、自分たちが持つお金を『ドーン・エリア』内のデジタルマネーに換金する為に専用の機械の前に立った。
有り金全部換えるともしもの時困るので五分の一くらいのお金を換える。
「良し、次は」
改札口で読み取り機に手をかざし電車の運賃を先払い。ここではどこまで長く乗ろうが料金は一緒らしく、三百絢。絢がお金の単位で三百エールはここの自動販売機でジュースが缶で三本買える値段だ。安い。
ホームに行くともう電車は来ていた。デザインが精練されている。黒がメインで金の装飾が施されている電車は気品すらあって。
と言うか……電気で動いてないよなこれ。“電”車と言うのは間違いか?
「えっと、オレたちの席は」
運賃を払った際に座席番号の書かれたデジタルチケットを貰っている。自由席もあるが指定席を取った。三百エール+五十エール。節約は大事だがこちらの女性メンバーに痴漢行為を働く輩がいないとも限らないので。
席を見つけた。オレたちは固まって座って少し雑談。
発車時刻が来て電車が動き出した。
「さぁて、なにがあんだろうな三巨塔には」
三巨頭みたいに言わんでくれカノよ。なんかバケモンが出てきそうだ。
「ええと『ドーン・エリア』だけれど、六つの都に分かれているみたい、ね」
駅で買った街のパンフレットをテーブルに広げるエンリ。
「ここは水衣の都と言うみたい、よ」
ああ、それで。
え? なにがそれでなのか?
街灯の柱にクラゲが泳いでいたり(本物ではない、映像だ)、
白狼の像と人の家族の像が戯れている白い噴水があったり、
遊具の浮かぶプールがあったり、
小さな金魚を象ったガラスの置物が美術品として飾られていたり、
住宅は白か水色のモノが多い。
どうやら名は体を表す精神で都全体が水をテーマにしているようだ。
「あの三つの細い塔は六つの都の中央にある、わ。
政王の統べる真央政治部
祭姫の統べる真央祭事部
軍神の統べる真央軍事部
がそれぞれ入っている塔ですって」
「「「ほほ~」」」
どう考えても『ドーン・エリア』の運営に関わっている。確信だ。
ではどんな人間が待っているのか? 興味は尽きない。
いくつかの小さな駅を経由して、電車は三つの塔へと向かう。




