第52話 星が……落ちる!
◇
「なんだよ……」
半ば呆然と声を出す。いや、声が口から漏れたと言う方が正しいか。
それ程までにオレは混乱していたと思う。
こんな時こそ冷静に、真剣に、急がなくてはならないのに。
しかし。
混乱するのも仕方ないだろう?
だって。
「星が……落ちる!」
夜空に輝いていた星々が、色鮮やかに煌めく小さな星々がこの地上に向けて落ちてきていたから。
「あり得ない!」
いやそれを言ったらこの場所こそあり得ないのだが。
ボートで『ドーン・エリア』へのゲートを潜った。
そしたら誰もいなくて。
一人で荒野に投げ出されていた。
そして気づいて周囲を見回していたらこれだ。
星の落下。
星とは地球――地上から見て遥か遠くに存在するものがほとんどだ。
それらは火であったり、岩であったり、氷であったり、ガスであったり。
これらが地上に落ちてくるなどあり得ない。
こうして光となって一斉に落ちてくるなど――あり得ないのだ。
「……誰か!」
オレは振り返った。
他に誰かいないかと。
石見たちがいたらすぐに報せねば――そう思いオレは走り出そうとして足を止める。
どうしろと?
この事態を教えて、逃げる?
どこに? 安全な場所とはどこだ?
いや、そもそも危険性はあるのか?
星は光となって落ちている。けれどどこかが壊されている様子は欠片もない。
どうしてこの現象が起こったのかは解らない。
異常事態なのは確かだ。
が、危なくないのであれば……無闇にパニックを広める必要は、オレ自身がパニックになる必要はない、のか?
「それなら」
むしろ。
「一欠片くらい……」
ここに。
この手の届くところに――
オレはゆっくり右腕を上げる。
星を受け止められないかと。触れられないかと。
縮こまっていた肩が動き、震える腕が動き、こわばっていた掌を――開く。
「ここに!」
星の光が一条――落ちてきた。
◇




