第49話 まずニューヨークに行きましょうか
ピタリ、と動きを止めるアメリカの魔法士三人。
『ドーン・エリア』――ノクスの話によるとそれはアメリカの秘匿領域。世界に配布しても良いか疑問の残る品・条約・法を試験運用する隠されたエリアになる。世界よりも五~十年程度技術が進んでいてその歴史の正否は問われないと言う。
なんとも興味深い。
そして更にその場所は――
「どうして『ドーン・エリア』なのかしら? ギフト・イヴェントはもういないと思うのだけれど?」
優雅に頬に手を当てて、エンリ。言葉に動作がついてくるあたりアメリカ人らしい。
それはともかく。
その場所はギフト・イヴェント――【メルヒェン・ヴェルト】の残滓を全て受け止めて、グリムの王となった男の住んでいた場所だ。
非常に興味深い。
が、確かにエンリの言う通りに男はもういないだろう。いたらとうの昔にバトルになっているはずだ。
ではなぜ行きたいのか?
「『世界牢』第十四区がある可能性が高い」
天使の捕まる『世界牢』、その十四番目。
アメリカにあるのはつきとめられているが解っているのはそこまでだ。
「『世界牢』も非公表――秘匿領域。『ドーン・エリア』になくともそこの技術で隠されているかも知れないだろう?」
「ってかそもそもあんたら三人は『世界牢』の場所知らないんか?」
「知ってたら天使殺しに行ってるだろ。人類の敵だぜ?」
敵……か。
確かにオレも両親を殺された際悪意を以て天使を殺そうと思った。天使の言葉を訊いて、想いを感じて動いた子供たちによる犠牲者も多すぎる。
しかし。
オレは石見のおかげで立ち上がる事が出来た。
だから今は天使に会いたい。会って、そこで全てを決める。生かすか殺すか、守るか。
「オレは天使を探している」
「私たち、だよ」
オレの服の袖を軽く握ってくる、石見。
この子はオレの背を押してくれる。本当にありがたい。
「……オレたちは天使を探しているんだ。『世界牢』に繋がるヒントは得たい」
「そう、ね。こちらも天使を探しているから、同伴するわ」
「……元々、同伴以外の道は、ない」
「シャキッとしろよタータル。あと儂らにだって色んな道はあるだろ」
「……上に逆らうなら、だけどな」
「あ~」
そいつは困るな、って表情で天を仰ぐジャイル。
なんか中間管理職の人を見ている気分。
「良い、わ。『ドーン・エリア』のゲート、案内してあげる。
ただ入れるかどうかはこちらには解らない、わ。
こちらも入った事ないから」
「『ドーン・エリア』に入るには国に認められるかテストに合格するか。
んで、一度テストに落ちたら生涯入る権利を失う、って話だから儂らはまだ受けた事ねえんだ」
「……それでも行く、んだよね?」
「ああ、頼む」
「解ったわ。ではまずニューヨークに行きましょうか。ゲートはそこから見える海、よ」