第41話 心樋を守りつつ事を成せ!
「オイ待てこら」
オレの話を訊いて、全員固まった。
固まって、まずはカノが復帰。
「正夢とか予知夢とかあるけどよ、お前が視たそれ、事実だったらヤバくねぇか?」
「ヤバいな。だからネゥさんにも話すよ」
「骸牢刑なんて訊いた覚え全くないな」
話して、ネゥさんはまずそこを指摘した。
そうだ、オレたちが暮らしている世界に骸牢なんて存在しないのだ。
「だがワールド・ダウングレードが起こる前、【メルヒェン・ヴェルト】さえ我々は知らなかった。別の世界があると言われてそうかと納得など出来ないが……心樋、貴女はこちらの世界の住人だろう?」
「え? あ、うん。じゃなくて、はい」
「ふむ……では可能性は二つか。
一つは心樋をはじめ子供たちが別の世界に連れ去られていた。
もう一つは二つの世界が協力関係にあり同テーマの研究を行っていた」
顎に手をあてて熟考する為に目を閉ざす、ネゥさん。
「いずれにしても、ボクたちはグリムの王さまと女王さまって人を探さなければいけないよね」
こちらに近づいて、ガロア。
「そうねぇ、ガロアの鼻で見つけられないの?」
「無理言わないでよスゥ。
聖騎士王シエル、キミはなにか知っているかい?」
「いいや。我らも王と言う存在は先日が初耳だ」
オオ、豪華なメンバーになってきた。て言うか豪華すぎて身も心も縮こまるんですが。
そんな中でスゥさんは嬉しそうにオレと石見を見ては微笑み、顔をそらしては見ては微笑みをくり返している。あれだ……キスしたのが、嬉しかったらしい。
「調べる事柄は少ない。が、一つ一つが深いな」
目を開けるネゥさん。
「確認だ。糸掛、お前のその銃の出所はグリムの女王――天使に与えられたモノだったな?」
「はい。
『辿りついて……お願い……うらが消えてしまう前に……消えたくない……消えたくないの……この苦しみから解放して――』
って言われましたね」
誰の苦しみから誰を解放するのかは言わなかったが。
普通に考えれば天使自身か。
例の事件の後すぐにオレは天使から愛銃を与えられた。自分に都合の悪い銃を与えたりはしないだろう。だとすると、苦しみから死を以て解放して、か、それとも体を完成させて不安定で消えそうな苦しみから解放して――と言う事か?
「いずれにしてもオレは天使に会いたいです」
前を向き活きて行く為、過去に決着をつける為に。
……さっきからカノが「訊いてねぇぞこら」って感じで睨んできているのだが、まあ良いや。ナイスタイミングで謝ろう。
「天使のいる『世界牢』第十四区の大まかな位置は判明している。アメリカだ。
だが『日雷』本隊がアメリカに渡る事は出来ない。この日本での活動があるからな。
だから、石見」
「はい」
「魔法士のお前が先頭となり、糸掛たちと海を渡り『グリムの女王・天使』を探し出せ。すぐに戦闘に移る必要はない。見つけたらこちらに一報を」
「はい!」
次いでネゥさんは聖騎士王に目を向ける。
「わたしたちはグリムの対応の他に世界中のツテを使い『グリムの王・ギフト』を探す。こいつが王になったのもアメリカとの話だが向こうにいる仲間の話ではグリムのホームはアメリカではないらしいからな。ついでに日本でもない。世界中に目を凝らす必要がある。
『人赦聖騎士団』、貴方がたの結成理由が“魔法士に成れぬ人々のグリムに対するなけなしの正義と復讐”であり最上の目的が“魔法を科学により再現し人々の暮らしをアップデートする事”であるのは知っている。最高位の学者であった貴男らしい。
しかし力を持った今すべき内容も理解していると思う。魔法石を――グリムの痕跡を扱う魔法士への複雑極まる感情を一度横に置き、未来の為に騎士団にはグリム側についている裏切り者たちの対応を頼みたい」
「……ああ」
「では、カノ、フォゼ。二人には日本がライセンスを与え『日雷』預かりとする」
「あ、やっぱ?」
言いつつも不満は口にしないカノ。フォゼも良かったと胸を撫で下ろしている。
「石見、糸掛、カノ、フォゼ。心樋を守りつつ事を成せ!」
「「「ハイ!」」」