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第37話 良くやった、糸掛

 ◇


「子供たちは大半をつかまえた。Dグリムは出来る限り葬ったがな。

 けど・だ。カノの話によると――」


「「「あ、グリムの王さまと女王さまが呼んでる」」」


 そう言って残った子供たちは去って行ったと言う。

 翌日、野戦病院状態になっている東京の一角で(キスの後)眠りこけていたオレが目を覚ました昼時の会話である。


「だが東京の占拠状態は解放された。

 良くやった、糸掛(いとかけ)


 オムライスを口に運びながら『日雷(ひがみなり)』トップ『座元(くらもと)』ネゥさんの言葉を耳に招き入れる。褒められた。うん、嬉しい。よくよく話を()くと石見(がらみ)たちにはもうねぎらいと礼を言った後だと言う。

 そうやってネゥさんは一人一人に言葉をかけて回っていると言う話だ。

 死傷者はたくさん出た。

 残った人の心を癒せるかどうかは不明だが、それでもネゥさんは全員に言葉をかけている。

 出来た人だと思う。立派な人の下で働けている。有難いモノだ。


「グリムの王さまと女王さま――か」


 カノから訊いたと言う子供たちのセリフを反芻する。

 王。女王。女王とは『世界牢』にいる天使だろう。では王とは? それはグリムか? それとも人か? と言うか……関係あるのか、オレが()た『夢』は。


「なんか思いあたる節がある顔だ」

「え?」


 ネゥさんが去り、石見がオレの表情を窺っている。彼女はオレの表情に詳しい。オレの心をズバッと当ててくる。無遠慮に覗いて来るのではないが必要な場面ではオレからの説明を求める事がある。

 今言って来たのは、「話してご覧」ってとこか。優しい子である。惚れそうだ。あ、惚れてるや。


「……ちょっと気になる夢を視て」


 多分、いやきっとオレの持つ銃が視せてくれた夢。


「あんだ? グリム関係か?」

「う~ん、こんな夢だった」

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