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第35話 それとも、キスしてほしい?

襲って()


 駆けだし一歩目、白雪姫の魔法が放たれる。瓦礫が落下の動きを止めて一斉にオレを襲い出したのだ。


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ――――――――――!


『ギフト・バレット』、連射。瓦礫を悉く撃ち砕き、わずかな欠片の上をオレは走る。


「バランスの良い事で」


 ぱちぱちと手を叩く白雪姫。その表情は微笑。悪意なき、純粋純然たる微笑みだ。


浮かんで()


 白雪姫の自由落下が止まる。下着が見えないようにドレスを抑えていた白い手が解放されてオレへとまっすぐ伸びる。まるで、そう、まるでオレを向かい入れるかのようにまっすぐと、優しく。

 オレはそんな白雪姫と距離をとって瓦礫の上を飛び続け、一撃。白雪姫の正面から撃ってみる。するとどうだろう? 白雪姫の胸を撃ち抜く軌道にあった銃弾が伸ばされた彼女の両腕の中央に到達した時、炸裂して――炸裂したエネルギーが彼女の腕の間で収斂し塊となった。

 なにかされる前にとオレはその塊に向かってもう一撃。エネルギーの塊を暴発させられればと思って撃ったのだが更に吸収されてしまう。


別れて()

「――!」


 エネルギーの塊が、分裂。数十の小さな塊となって白雪姫を囲って回り出す。その一つがオレに向かって撃ち出されて慌てて避ける。と、耳を掠めた時に炸裂しやがった。


「ぐぅ!」


 耳元で炸裂した為耳鳴りが凄まじい。小さかったから威力も小さく、耳の皮一枚を破いただけですんだがそれでも血は出て、なにより書いた通りに耳鳴りが凄まじい。周囲の音が()こえない程に。

 だが目はやられていない。

 だからオレは『ギフト・バレット』を構え直してその体勢のままに白雪姫の隙を伺うべく飛び続けた。

 その瞬間白雪姫を覆い隠す白い光。訊こえなかったがこれは石見(がらみ)の魔法だ。彼女の魔法は一目で(わか)る。

 石見のくれたチャンスをムダにすまいと『ギフト・バレット』、射撃。銃弾が白い光に吸い込まれるように消えていき、炸裂音。と言うか……凄まじい爆発が起きてしまった。


「い⁉」


 間違いなく白雪姫が収斂し拡散させていたエネルギーが大炸裂したのだ。問題はこれがオレの一撃によるモノか白雪姫の起こしたモノなのかだが……。


「――⁉」


 首筋に冷気が触れた。無論オレの首筋にだ。背後に現れた白雪姫が首に腕を回したのだ。

 白雪姫に傷はなく、先の大炸裂が彼女の手によるモノだと確信させた。

 あ、なんて綺麗な爪。とか場違いな感想を抱く。恐らくは本能が目をそらさせたのだと思う。白雪姫から感じる冷気――殺気から。

 咄嗟に『ギフト・バレット』を逆向きに。姿勢は不安定不充分だが仕方あるまい。背後にいる白雪姫に向けて一撃。


止まって()


 ピタリ。銃弾が止まる。


溶けて()


 止まった銃弾が溶けて、ドロリとオレの右肩に。


傷つけて()

「なっ⁉」


 溶けて垂れた銃弾が、炸裂。

 右肩! 痛い! あれ? 威力の割に大ケガじゃない、ぞ?

 右肩に目をやると青白い光が灯っていた。石見だ。石見の防御魔法だ。サンクス。


痺れて()

「――あ!」


 全身に電気が流れた。いやもう落雷と表現しても良い。

 耳鳴りすら停止し、全身が麻痺する。

 この女……殺気を漂わせながらじわりじわりと痛めつけるとか!


冷えて()


 今度は全身に寒気が走った。真冬の北海道よりもなお寒い冷気に全身が満たされて、ミシミシと音がする。これ、全身凍った?


熱して()


 更に熱気。凍っていた体が熱せられて一気に汗が噴き出る。


「趣味が……悪い!」


 自分の声がきちんと訊こえた。耳が戻った。だが筋肉がぐったりと脱力して体に力が入らない。

 ガンガンと下の方から音がした。瓦礫たちが一階にまで落下したのだ。

 もっともオレの体は宙に浮く白雪姫にがっちりホールドされているのだが。


「ねえどうする?

 このまま落としてほしい?

 斬首されたい?

 意識を刈られたい?

 それとも、キスしてほしい?」


 耳元で囁かれる、甘言。

 じゃあキスで。と石見がおらず更にオレが阿呆だったなら応えただろう。だがこの場においては当然そんな気になどなれるはずもなく。


「どれも御免だ!」


『ギフト・バレット』――そのトリガーを引いた。


「え?」


 吐息にも似た白雪姫の一言。そりゃそうだろう。だって空間が粉砕されたのだから。

 真っ白な空間へと投げ出されたオレと白雪姫。白雪姫の一瞬の戸惑いを逃さずオレは腕から脱出して『ギフト・バレット』を構える。


「これは、貴方が?」

「『ギフト・バレット』は魔法具だ。炸裂で砕けるのは物体だけじゃないんだ!」

「そう。今までそんな子はいなかった。優秀ね、糸掛(いとかけ)


 微笑み、褒められた。

 なのにどうしてだろう? ものすっごい上から見られていてちっとも嬉しくない。


「けれど、それじゃこれはどうかしら?」

「――⁉」


 白雪姫の手に、長大重厚な濃い赤色・マゼンタ色の銃が現出。美しき魔法具だ。やっぱこいつも使うのか!


「一撃で死なないでね、糸掛」

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