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第14話 Si Vis Pacem, Para Bellum(汝平和を欲さば、戦への備えをせよ)

「はぁ!」


 荒い息が口から出た。口内が熱くなるくらいに熱があった。『家』の中にある自室に入って鍵を閉め終えたところだ。

 ゴーグルで扉の向こう側を熱源スキャンしてみるが追ってくるやつはいない、な。なんとかなったか。


「けど……」


 体を見ると、痛々しい光景が目に飛び込んでくる。

 傷が増えてしまった。銃弾を放って着弾した時に飛んで来た瓦礫に当たりまくったからだ。医者に治療してもらった傷口が開いたりはなかったがそれでも痛い。体中が痛い。

 オレは震える体でベッドの下から救急箱を取り出して自己流で傷を消毒し、包帯を巻き、絆創膏をはりつけた。

 少し床に血がついたが、まあ良いか。あとで拭こう。

 ゴーグルを外してオレはベッドに倒れ込んだ。途端に襲ってくる眠気。うとうとしながら考える。

 さっきのやつ、『家』の中で殺傷しても運営側からのストップがかからなかった。となると……運営と繋がっているのか? 殺されていたやつはなぜ殺された? なんかしたのかな?


「ん?」


 このまま許された時間全部使いきるまで寝ようかと思っていたらドアが優しく叩かれた。ノック音だ。誰かがドアをノックしている。

 ゴーグルを目に当てると確かに人がいた。

 誰だ? 誰かが訪ねてくるなんてそうそうないと言うのに。


「さっきの俺だけど」

「――⁉」


 目を(みは)った。上半身も飛び起きた。

 この声、間違いなくさっきのやつだ。追って来たのかよ。て言うかこっちもゴーグルかけていたのにオレだってバレてたのか。

 焦りが生まれる。しかしそんなの知らんとばかりに男は言葉を続ける。


「流石にやりすぎちゃった。俺が殺したやつは礼儀がなってなかったから殺しちゃったんだけど、その後の事は運営に叱られたよ。

 だからキミは殺さない。良かったね」


 良くねーよ。礼儀一つで殺すとかどう言う……やくざか。


「お前、いったいどこの誰だよ?」

「ん~? キミらが兎だとするとハンターかな?」

「ハンター?」

「そ。

 近い内に運営から発表があるんだけど、この島に運営からハンターが三人放たれる。俺たちを見つけ出して殺せればキミらの勝ち。敗ければ全滅」


 なっ……。

 開いた口が塞がらない。

 そんな事が行われたなんて、過去に例はないはずだ。

 なぜ、なんの為に?


「困るよね。困っちゃうよね」


 ホントにな。お前さん全然困ってそうにないけどな。


「まあそれまで生き残りなよ。キミは俺が殺してあげるから、それまで」

「待て! なんでそんな⁉」

「あ~、この島、じきに閉鎖されるんだ」

「閉鎖?」


 それだとオレたちはどうなる?


「ここが銃器のお試し場として出来てもう九十年近くなんだけど――ワールド・ダウングレード以前からあるからね――人道がどうだの言う連中が台頭して来てさ、そう言う連中がここを爆破処理する準備を進めているんだ」


 オイ人道どこ行った。


「連中からしてみたら殺戮をくり返させるより命を獲った方がはるかに幸せ、だそうだよ」

「……無茶苦茶だな」


 まあそうかもだが。でも可能なら島から解放して欲しい。牢に戻るやつは戻って、隔離すべきやつは隔離して、オレは別のテスト受けるからさ。


「だね。

 で、運営は最後に大きくテストをする事にしたんだよ。それが俺たちとの殺し合い」

「な、なんでそこに殺し合いが顔出すんだ。正気か?」

「グリム戦に必要な銃を、使える魔法具を一気に炙り出すんだ。俺たちグリムを殺せるなら使えるって証明になるからね」


 ……今なんて言った? サラッとした爆弾発言がなかったか?


「なぜグリムが!」

「まそう言うわけで、頑張って俺を見つけなね。俺が殺しちゃう前に。

 それじゃ、Si Vis Pacem, Para Bellum(汝平和を欲さば、戦への備えをせよ)」


 オレは急ぎドアへと向かう。ドアノブを回して、開ける。

 いない。もうグリムはいなかった。

 グリムがここにいる。人間から送られたハンターとして。

 各国の政府がスポンサーであるのだ。

 政府が、グリムと繋がっている?

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