第103話 罪の罰は裁判で
いつの間にだろう? 気づけばヴィヴィの首に一人・一つの手が添えられていて。
ヴィヴィにとても良く似た恐竜の獣人、魔法士だ。ティラノに見えるがどこか違っても見える。複数の恐竜が合わさっているような……。決定的に違うのは色。眼も髪も肌も尻尾もバトルオーラも紫系・ロイヤルパープル。背の高い獣人。獣人の男性だ。
この感じ……あいつを思い出す。
そうか、ノクスと同じで数体の獣の遺伝子を目覚めさせているのだ。
ではそんな事が出来ている彼は何者だ?
「父上!」
ヴィヴィから驚愕の一言が。
父上! 彼が軍神か!
「ヴィヴィ、敵を間違えるなは正しい。
けれどお前も間違えるな。敵はあれ。グリム・エンリ一人だ」
「……邪魔されるんだよ」
オレたちに右の爪を向けながら。
「だから? 怒り任せで暴力を振るうならただのチンピラと変わらないね。
それともお前は理性を持たないクズかい?」
「……違うよ。ごめんなさい」
「ん。よろしい」
思いの外あっさりと矛を降ろすヴィヴィ。と、その頭を撫でてやる軍神ディアン。
微笑ましいが、状況は全く微笑ましくない。
だって登場してからずっと軍神ディアンが殺意を放っている。ずっと暴れていたエンリが大人しくなる程の凄まじい殺意・殺気を。
エンリにしか向けられていないが余波を感じてオレたちも委縮してしまう。
「さて、外から来た諸君。
ここは余たちの国。決着はこちらのやり方でこちらがつけるべきだと思うが、如何に?」
「エンリは私たちの友です。
私たちに任せていただけませんか?」
軍神ディアンの目が向く。オレよりも先に言葉を発した石見に。
「友か。
だが少女? 総警庁がエンリに賞金を懸けた時点で彼女は危険人物と目されたのだ。
懸賞金は一千万エール。討伐条件はデッド・オア・アライブ。生死問わずって事だ。
この国に立ち入った者がこの国の法に引っかかった。
死による決もありと認め、誰もが討伐して良いと認めた。
ならばこの国を守る為余が首を切るのに咎はあるまい?」
「生による決着もありなんです。
彼女はグリムとなった。けれどもエンリとしての意識が少なからずある。ならば生かして捕えるのがベストだと思います。
罪の罰は裁判で。
死による償いは極論かつ一瞬に過ぎませんから暫く投獄し反省させる方が良いかと」
毅然として応じる石見。
……毅然? 違う。石見、震えているな。
「こちらの問いには応えずそちらの意見だけぶつけてきたな。
まあ良い。
では賭けをしよう」




