第102話 殺して止めれば良いだけなのに!
口をきく子竜。声からするとやはりまだ少年だ。
「悪いな、ここで殺されるのは人間的に良くないんだ」
例えエンリを救えずとも、せめて御両親の目がないところで。
「……」
「!」
背後で殺気。
即座にオレと子竜は振り向き様に攻撃する。
オレは銃身をバットのように、子竜は蹴打。
その両方が迫っていたエンリの腹に命中し、飛ばされて彼女は膝を着く。
「剛力を砕いた! これであんたはもう終いだ!」
倒れ込もうとするエンリの後頭部めがけてかかとを落とす子竜。
まともに喰らって地面に突っ伏すエンリ。
しかし。
「ぐ……おぉ」
曇った声が訊こえた。エンリの声だ。
「おぉぉぉぉぉ―――――――――――――――――――――――――――――ぉ!」
雄叫び。
同時に倒れていた体が持ち上がる。
「なん! 剛力は潰しただろう!」
先程から子竜は剛力を、と言っている。言葉から察するに子竜は剛力に作用する能力を持っているのだろう。エンリが空間に作用する爪を持っているように。
では砕いたと言うエンリが剛力を失わずにまだ動けるのはどうして?
「そうか、バトルオーラで体を操ってんのか……なら今度はバトルオーラを砕く!」
振り上げ、下ろされる子竜の左腕。
だがエンリは空間を超えて子竜の背後へ。が、そこに子竜の尻尾が下から上へと叩きつけられる。
飛ばされるエンリ。オレは彼女のバトルオーラに照準を合わせて――なにかに背中を蹴られた。いやなにかって言うか、子竜がオレの背を蹴って上に跳んだのだ。オイこら。
「甘いんだ」
子竜の背に輝くバトルオーラの翼。少し不格好だがあんな事も出来るのか。自身の倍ほどもある翼を輝かせて子竜急上昇。
「殺して止めれば良いだけなのに!」
子竜からの気配が鋭くなる。殺気がますます強くなったのだ。
殺すと言った以上確実にエンリを仕留めにかかるだろう。
だからオレは非常に申し訳ないのだがその辺に転がっていた植木鉢を掴み、立派に葉を広げている植物ごと子竜の頭に向けてぶん投げた。
「!」
頭部へと飛来する植木鉢を流石に無視は出来ずに腕を振るう子竜。植木鉢が見事に真っ二つにされた。
「危ないななにするんだ!」
怒る子竜だがオレはスルーして植木鉢の方に目を向ける。
なんと、砕かれた植木鉢は灰になって土は白くなり植物は枯れていた。
「どう言う能力だ?」
ただ剛力を砕くのとは違う。良く理解出来なかったから思わず口をついて出た瞬間、それを自分への質問だと思ったのか、
「応える必要ないだろ」
子竜はそう叫ぶように言って再びエンリに向かって行った。
しかし着地したエンリは地面を抉る。綺麗に整えられていた道路が抉られて瓦礫が舞い上がり子竜の目に幾つかが飛び込んで。が。
「ただの欠片! バトルオーラを超えて来られるはずもなし!」
眼球は傷つけられなかったようだ。けれど視界は塞がれたのか子竜の動きが一瞬鈍る。
「そこだ!」
だが子竜は爪の衝撃波を真っ直ぐにエンリへと飛ばす。
「気配くらい読めるさ!」
エンリは空間を抉って閉じる勢いを自分に作用させて衝撃波をかわす。
かわして豹の脚力で駆ける。流星の如き速度を出すエンリは一直線に子竜へと向かい、その勢いのまま手刀で刺突。
「この!」
それをバトルオーラを纏う左手で掴んで止める子竜。
エンリの左腕が持ち上がった。そして子竜の首を斬ろうと振り下ろされ――
「それがなんだ!」
バトルオーラが爆発するように広がる。勢いに負けてエンリは押し戻されてバランスが崩れた。
「終わった!」
エンリへと振るわれる子竜の爪。しかし。
「!」
オレからの銃撃、そして石見からの雷撃が子竜の腕を弾く。
「敵を間違えんなよ」
子竜の眼光がこちらを威圧する。
「余の名はヴィヴィ! 軍神ディアンを父に持つヴィヴィ! 余の爪に宿るは抹消能力! 狙った獲物を確実に葬る爪だ! 次に邪魔するならお前たちを殺す!」
「はい、ストップ」
「「「⁉」」」




