囚われた女の独白
気づけば、冷たい牢獄の中にいた。走り回る鼠とおぞましい虫しかいない、吐き気がするほど汚い部屋だ。ここどこよ。見渡すと無機質な冷たい檻が見える。ということはここは牢獄?どうして?と首を傾げそうになって思い出す。そうだ。そうだった。誰からも愛されて幸せになることを約束されていたあたしは学園の卒業パーティーで断罪されるはずの悪役令嬢から逆に罪を暴かれた。おかしい。こんなの絶対おかしい。だって、国母になる女だって王子様が言ってくれたもの。指輪だってくれたもの。それをあの女。許さない許さない許さない、ああああああぁぁぁぁぁぁ!!……やめだやめ、叫ぶのは可愛くないし疲れる。ただでさえ汚い服を着させられているのに、これ以上可愛さを失いたくない。やめよう逃げ出すのが先だ。でも出口はないから諦めた。王子様か、王子様じゃなくても誰かがきっと助けてくれると信じて待っていたけれど誰も来ない。やっと来たのは騎士団長で「よくも息子をたぶらかしたな」と言って首根っこを掴まれて引きずり出された。騎士団長の息子もあたしを愛する一人、でも勝手に愛してきたのは向こうだからあたしは悪くないでしょ痛い痛いよやめてなんであたしが何もしてないしてないのにただ愛されたかっただけ幸せになりたかっただけあたしがなんで処刑場に立たされなくちゃならないの石を投げるな嫌だあたし悪女なんかじゃない助けて助けて助け――――――――あ、死んだ。