ファイルNo.1 血まみれの爪痕
人数:3人(男:女:不問=2:0:1)
所要時間:約10分
ジャンル:現代ファンタジー
*登場人物紹介*
弥元:♂︎
魔怪異探偵。25歳。魔怪物の匂いに敏感。頭の回転が早い。千汐の兄。過去に自分のせいで命を落とした弟の千汐を式神として蘇らせた。
千汐:♂︎
弥元の式神で助手。24歳。魔怪物を浄化する力があり、いつも魔怪物の浄化に使う刀身の無い短剣を持ち歩いている。弥元の弟であることを本人は気づいているが知らないふりをしている。
李夏:不問
魔怪異探偵事務所の居候。25歳。動体視力と瞬発力が普通の人よりもいい。それもあり魔怪物と戦う時の錯乱兼囮係として自ら魔怪物探偵事務所に居座っている。よく食べる。
※クレジットや注意事項は後書き参照。
〈朝の魔怪異探偵事務所のワークスペース〉
李夏「おっはよぉ〜〜!!」
弥元「おはよ」
千汐「おはよぉ。まだ明け方なのに元気だね」
弥元「ほんとにな」
李夏「なんだよ、お前が朝から不機嫌なだけだろ!」
弥元「…はぁ」
李夏「さーて、今朝の収穫はだな…」
〈李夏がいまさっき買ってきたコンビニの袋からガサゴソと食べ物を取り出し始める〉
李夏「まずはサンドイッチ。卵とハムとフルーツと…」
千汐「李夏の飯テロタイムが始まっちゃった」
李夏「おにぎりはだな。梅、昆布、ツナマヨ、エビマヨ、焼肉、牛肉、塩、あさり…」
千汐「…ん?あさり?」
李夏「おかか、しゃけ、めんたいこ、唐揚げ、いくら。さぁ、選びたまえ!」
千汐「てか、おにぎりの種類多くない?!?!」
李夏「サラダは、ゴマだれと塩ダレとシーザーと…」
千汐「…終わってなかった」
李夏「青じそ、玉ねぎドレッシング、ニンジン、イタリアンドレッシング…」
千汐「ねぇ、まだ続くの〜…??」
李夏「あ、そーいえば!最近、向こうの角に新しいケーキ屋出来たんだって!知ってる?!」
千汐「今度は急にケーキの話?っていうか、向こうってどこ?」
李夏「向こう」
千汐「うん、いつも通り説明が雑」
李夏「ほら!あそこだよ!いつも俺が買い物の時に通ってるとこ」
千汐「僕が知ってるわけないじゃん」
李夏「なぁ、ほら!弥元、どこだっ…け…」
弥元「…」
李夏「弥元?」
弥元「ん?なんか言ったか?」
李夏「さっきからずっーと難しい顔してっけど、どうしたのさ?」
弥元「いや、別に」
千汐「…もしかして匂い?」
弥元「わかるのか?」
千汐「匂いはわからないけど…なんとなく??」
李夏「え、全然わからないんだけど」
千汐「わかんないほうがいいよ、多分」
李夏「なんだよ、それ。俺だけ仲間はずれみたいじゃん」
千汐「…どうする?行く?」
弥元「行くか」
李夏「え、あれ?ケーキは??」
弥元「帰りに寄ってやるから」
李夏「うっしゃあ!!あ、てか、俺の朝ごはん!」
千汐「僕と弥元、先行ってるから。後でゆっくりきて大丈夫だよ」
李夏「え、あっ…ちょっ…!!」
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〈匂いを辿って弥元と千汐が現場にやってくると地面一体が真っ赤に染まっている〉
千汐「…うわ、すごい血の量…。生臭い…」
弥元「ここから俺たちの家まで届いたんだ、相当だな」
千汐「真ん中のは爪の痕…?」
弥元「…あぁ、おそらく」
千汐「今週だけで、3件目…だよね。また野良猫が襲われてる…ってことは肉食なのかな。人間も食べると思う…?」
弥元「今んとこ人が被害にあったって情報はない、大丈夫だろ」
千汐「…ん」
弥元「にしても、上手いこと身を隠してるな。ここまで1度も目撃情報が無い」
千汐「3回とも捕食されてるの朝方だしね」
〈遅れて現場に到着した李夏〉
李夏「わりぃ!待たし…って、やべぇな…」
弥元「…あぁ」
千汐「にしても…ほんとに匂いキツい…」
弥元「大丈夫か」
千汐「うん、…なんとか」
李夏「匂いかぁ、やっぱり全然わかんねぇ。…なぁ、まさかだけど人間の血じゃないよな」
千汐「人間だったらもっと騒ぎになってる。それに、人間の血の匂いなら李夏だってわかるでしょ」
李夏「そっか…、確かに?」
弥元「肉食の魔怪物」
千汐「肉食で爪がある?鷲とか…?」
李夏「鷹?」
千汐「鷲も鷹も同じ鳥。大きさで呼び方違うだけだからね」
李夏「そうなのか?!」
弥元「なにせ獲物を喰った直後だ。あんまり遠くには行ってないだろう。まだこの近くに身を潜めてる可能性が高い」
李夏「げっ、それって見つかったら俺達も喰われるやつ…?」
弥元「さぁな、雑食だったら喰われるかもな」
李夏「えっ…??」
〈突然3人の後ろを大きな黒い影が通り過ぎる〉
弥元「っ…?!」
李夏「何だ今の?!」
千汐「鳥…に見えたけど」
李夏「俺も」
弥元「追うぞ」
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〈黒い影を追いかけてきた3人、影の正体はカマキリとクロサギが合わさって肥大化した魔怪物〉
弥元「…こいつが犯人か」
李夏「なんだこのカラスとカマキリが混ざったみたいな生き物、気持ち悪っ」
千汐「あれ、カラスなの?カラスにしては…なんか胴体が大きい気がするけど」
李夏「全体的にデカいからわからん」
千汐「まあね」
弥元「無闇に近寄るなよ。あの鎌に触れたら生身の人間なんかひとたまりもない」
千汐「じゃあ、僕が…」
弥元「ダメだ」
千汐「なんで」
李夏「どーせ、自分は人間じゃないからおっけーとか思ってんだろ?!」
千汐「思ってない」
李夏「じゃあなんだよ〜??」
弥元「鎌の大きさと腕の長さからして振って届くのはせいぜい2mくらいが限界だろう」
李夏「ふむふむ」
弥元「その距離を保って俺と李夏であいつを転ばせるぞ。そんで、千汐が近寄る隙を作る」
李夏「了解!!」
千汐「そんなの、危険すぎるって…!」
弥元「お前が近寄れないことには勝負がつかない。わかってんだろ」
李夏「なんだよ?俺達がそんなヤワに見えるってか〜??」
千汐「そうじゃない…。でも、もし…」
弥元「無駄話してる暇は無い、来るぞ」
〈魔怪物が李夏に向かって飛んでくるのを器用にかわす〉
李夏「げっ…初っ端から俺狙いかよ!!…ひぇえ、あっぶねえ!」
千汐「李夏!!」
李夏「大丈夫〜!てか、こいつデカいのにどこに誘い込んだらいいんだよ!」
弥元「噴水の方だ!俺も手伝う!」
李夏「噴水…あっちか!了解〜!!」
弥元「お前は先に回り込んで待ち伏せだ」
千汐「…わかった」
〈千汐が先回りに行くのを見送り弥元も李夏の加勢へ〉
弥元「おらよっ!!これでも、くらえ!!」
李夏「お?!なんだその便利そうな爆弾!」
弥元「さっき渡しただろ?!」
李夏「あれか!よし、俺も!!」
弥元「無駄に投げるなよ?!」
李夏「気付ける〜!!…ていやっ!!」
〈魔怪物の周りで李夏と弥元の投げた爆弾が爆発して魔怪物が怯む〉
李夏「よしよし、どんなもんだ!弥元お手製の爆弾は!!」
弥元「気抜くな!すぐに再生するぞ!」
李夏「おら!大っきいの!こっちついて来い!!」
弥元「ちょっ…おまっ…!」
〈突然李夏が噴水のある方へと駆け出す、と同時に魔怪物も李夏を捕まえようと後を追う〉
李夏「はぁ、はぁ…、もうちょっと…!!…よし!!」
弥元「かかったか?!千汐、今だ…!!」
〈李夏の用意した罠に魔怪物が足をとられて転倒、そこに待ち伏せていた千汐が現れる〉
千汐「…貴方の邪心を祓います、還るべき場所に還れるように。《ー邪念鎮魂、帰還幻送ー》」
〈千汐の持つ短剣から溢れた光が魔怪物を包み込むと共に消え去り、後には普通のクロサギとカマキリが残る〉
千汐「…浄化完了」
弥元「黒い鳥の正体はクロサギだったか」
李夏「あ、ほんとだ」
千汐「だからあんなに胴体大きかったんだ」
弥元「誰だよ、カラスとか言った奴」
李夏「ほら、根本的に巨体だったからわからなかったんだよ!」
千汐「カラスとクロサギってだいぶ色違うよ?」
李夏「そんなんわかんねぇよ!」
弥元「いや、わかれよ」
千汐「あっ…!!」
弥元「…ん?」
千汐「カマキリさん。もう、悪いのに捕まっちゃダメだよ」
〈カマキリをそっと手に乗せて草むらに返す千汐を眺める2人〉
李夏「…千汐、生き物ほんと好きだよな」
弥元「子供の時からだ」
李夏「え?…ん?子供の時…?」
弥元「いや、なんでもない」
李夏「…あ、そういや、弥元」
弥元「ん?」
李夏「あれ出来ないの?」
弥元「…??」
千汐「でた、李夏の雑過ぎる説明」
李夏「千汐がいつも最後にやってるやつ。邪念を取っ払う!なんとか転送!って」
千汐「帰還幻送ね」
李夏「キカンゲンソウ」
弥元「出来ない」
李夏「ふぅん」
弥元「…まぁ、元々は俺の役目だったんだがな」
李夏「え、そうなの?いつから千汐がやってんの?」
千汐「…」
弥元「さて、この話は終わりだ。帰るぞ」
李夏「えぇー…」
弥元「報告書、今日は李夏が書く日だからな」
李夏「げぇ、またあの気持ち悪いの思い出さないといけないのか」
千汐「僕書こうか?」
弥元「甘やかすな。居候ならそのくらいのことはしてもらう」
李夏「うっげぇ」
弥元「ほら、帰るぞ」
千汐「はーい」
☀︎声劇台本として利用する場合の注意事項☀︎
・台本上のキャラクター自体の性別変更厳禁。演じる人の性別は不問。
・不問と書いてあるキャラクターに関しては、男性として演じても女性として演じても構わない。
・セリフの過度な改変禁止。
・非商用利用自由。
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