女郎蜘蛛の糸
人目につきやすい場所は敢えて避ける。
だぁって、そんなところで蜘蛛の糸を張ってても、
ろくな男しか掛らないから。
だから私は、派手な黄色と黒の軀の上から、
地味な家蜘蛛の衣服を着ける。
地味で一途な女を…を演じるの。
誰にも気づかれないように。
物陰に巣を作って、好みの男を探す。
するとそこに、貴方が通りかかる。
誠実そうな貴方。
…食べごたえのありそうな貴方が通る。
私は、貴方の体にわざとぶつかり、きっかけを作る。
そうして段々。
段々…と、貴方を虜にする。
私のベタベタに貼り付く蜘蛛の糸に…
あなたを、誘う。
ベタベタの蜘蛛の糸に貴方の肌がくっつく。
もがけばもがくほど、貴方の軀は私の蜘蛛の糸に
絡み付く。
私は地味な衣服を脱ぎ捨て、派手な軀を露にする。
貴方が私の軀に見惚れてる間に…
ベタベタとろとろの糸を、貴方の軀に巻きつける。
縛り、つける。
身動きが取れない貴方の軀を指差でなぞりながら。
貴方の唇に…吸い付く──────……