7話 グラビティ
「あと20分って所か。ビリじゃないけどトップでもないよな?」
「多分……。Aグループは脱落してる人もいないし、着実に数を減らしてるから。同じBグループの人達もここに来て連携しようと話し掛けてるけど……」
「まぁ遅いわな。トップは無理でも俺は適性検査でも筆記でも自信あるから大丈夫だと思うけど……。お前は?」
「僕も大丈夫だと思うよ。適性検査の時に自分よりレベルとかスキルの威力が低い人を数えてたけど今までの合格人数のそれには入ってるから」
残り時間も少なくとなってくるとCグループ全体とBグループの一部受験生達が焦りを顔に浮かばせ始めた。
それと反対にAグループの人達や藤は無理に戦おうとせず、周りの状況把握に時間を費やし始める。
この実践試験の結果が試験全体で見た時どれくらいの配点になるのかは分からないけど、取り敢えずCグループ最下位は濃厚。
高校浪人、中卒探索者、ニート、フリーター。
一応フリーの探索者でやってく事も出来るけど、ある程度学歴がないとアイテムの取引先が微妙。
目標の事を考えると高校浪人させてもらえれば有り難いけど、流石にこれ以上父さんに迷惑をかけるのは……。
MPの消費量が多くてしんどいけど、『バリア』シリーズ②を使――
「くそっ! こうなったらBグループの奴ら、とりわけ稼いでる奴を不能にするしか……。お前ら! 一発逆転したいなら俺に続け!」
相沢はCグループの受験生達に声を掛けると、モンスターではなく藤に攻撃を放ち始める。
Bグループとの差は大きそうだがそれは藤の殺した数が多い事が起因している。それさえなくなれば、残り20分。なんとか盛り返せると相沢は考えたらしい。
とはいえ相手は攻撃力4桁の藤。
1人で突っ込んだところで返り討ちに合うだけ。
だから仕方なく仲間を募ったって感じだけど……意外とリーダーらしいんだよな。相沢の奴。
その証拠に殆んどのCグループ受験生は相沢の後に続いている。
「『ギガントスタンプ』!!」
「『パラライズナイフ』」
「『バインドツリー』」
「いつかはこうなるかと思ってたけど……。この数は面倒だな」
相沢のスキルを邪魔しないように他の受験者はスキルを発動させる。
即興だけど中々の連携。
藤は攻撃を受け止めるとそこに隙が生まれると判断したのかひらりひらりとそれを避ける。
「ちょろちょろするんじゃねえっ!! それでも男か!」
「集団で襲ってきてる奴が何いってるんだか……。それにしてもこの状況を試験官は放置、か。最初からこうなる事は分かってたって訳ね。はぁ、性格悪」
反撃に移る事が出来ないのか、藤は攻撃を避け続けながらため息を漏らす。
脱落はさせられていないけど結果として藤の手を止められたのはデカい。
今のうちに俺は俺で出来るだけオークを殺さないと。
「『バリア』シリーズ②『グラビティバリア』」
引力によって敢えて敵を自分の元に引き込む『バリア』。タンクとしての役割様に見えるこの『バリア』だが、『バリア』でモンスターを殺す事が出来ると分かった瞬間にレベル上げ用のスキルへと昇華した。
しかも『バリア』は今のところ2重で発動可能。
『ワイドバリア』と『グラビティバリア』、本当はもう少し強力なものもあるんだけど、MPを使いすぎると、身体、特に脳への疲労が溜まりすぎて、場合によっては動けなくなるから現段階だとこれがベスト。
相沢、嫌な奴だけどお前の頑張りに俺も答えてやるよ!」
「流石にこの状況なら仕方ないよな?」
「うん。この辺なら他の人にも迷惑掛からないから大丈夫」
「そんじゃあいくぜ、……『ティアドロップ』」
今のうちと思ったその時、藤は適性検査の時見せたスキルを発動させた。
あれ? もしかしてもうチャンスタイム終わった?
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