5話 グループ対抗試験
「マジでダンジョンがあるのか……」
「正確にはダンジョン学校、この校舎からダンジョンという扱いですけどね。それでは今より実戦試験を行います。皆さん予め配っておいた札を取り出してください」
さっきまでいた会場からダンジョンの入り口に移動をすると、先頭に立っていた相沢が呟き試験官は早速説明に入った。
明らかに相沢に対しての当たりが強いけど、これが試験の結果に繋がったりするのかな?
「この札はこの学校の校長がスキルによって生み出したものです。ダンジョンで止めを刺したモンスターの数や踏破階層が札に記録され、浮かび上がる仕込みがされており、校長以外の人間にはこの書き換えは不可能となっております」
これもいわゆるダンジョンアイテムになるのかな?
一般にダンジョンで拾った物やダンジョン内で得た素材で作られた物はダンジョンアイテムという総称で呼ばれている。
かなり特殊な例ではあるもののスキルによって作られた物だからこの札もそれにあたると思う。
ダンジョンアイテムは平均的に高額で扱われる事が多いんだけど、この札も相当な価格になるんだろうな。瑕とか付けないようにしないと。
「それを配るって事は、実戦試験は殺したモンスターの数で競うって事ですか?」
「はい。単純ですが、これが1番個人の実力、才能が図れますからね。私達は卒業した生徒を事務所に紹介する仕事を受け持っているんですが、やはりそういったものがない人間を押し売るのは相手方に嫌がられる傾向にあります。ですから厳しくもこういった方法でふるいにかけるというわけです」
再び相沢が質問すると試験官は正直過ぎるとも捉えられる事を口にした。
「強い者が受かる。単純明快ですね。でも嫌いじゃない」
「……。ですが才能の種類というのは人それぞれ。私達は可能性のある人間を少しでも拾い上げる為に敢えて共闘が必要な形の試験を用意しました。それが今から行う実戦試験、グループ対抗討伐試験です」
グループ対抗。
わざわざグループに分けたからそうなるだろうなとは思っていたけど、俺はCグループ。つまり相沢と同じグループ。
移動時間にグループでの試験だけはやめて欲しいと祈っていたのが無駄に終わった。
「グループは適性試験の時に口頭でもお伝えしたABCに分かれています。試験開始直後ABC各グループで集まってもいいですし、そんなことは気にせず戦って頂いても構いません。ですがこの先のモンスターは今のあなた方には強力に映るはず。強がらずに共闘して頂く方が私達としても受験者であるあなた方とっても都合がいいです」
共闘か……。引き籠ってた俺にとってはこれ以上ない程キツイ試験だ。
「試験開始前にスキルで自動回復を付与致しますが、それでも間に合わない程大きな怪我を負う、或いは状態異常や体調不良となった場合には札を割って頂くとこちらに知らせが届く仕様になっていますので必ず利用してください。知っての通りダンジョンでの死は自己責任となり、保険も適用外ですからね」
増え過ぎる探索者を一定の数で押さえようとした結果の政策。
あいつらに人情ってものはないのだろうか。
「それでは自動回復を付与致します……『リジェネレイト』。――試験時間は1時間。これより最後の試験を始めます。カウントダウン3、2、1、0」
試験官がカウントダウンを済ませるとまずグループCの受験生が勢いよくダンジョンへと向かった。
相沢が同じグループだって事でもう共闘は諦めたって感じだ。まぁその方が俺としても助かる。
「Aグループの方で共闘出来るという方は私の元に集まって頂いてもいいですか? 事前に作戦を立てて、一緒に合格をもぎ取りましょう!」
Aグループは野宮が指揮を執り始めた。
実力もカリスマ性もあれば、積極性もあるらしい。俺とは真反対のタイプの、嫌いじゃないけどちょっと眩しすぎる人だな。若干玲華と被るところがある。
「俺達も中にいくぞ。中からヤバい気配がする、殺されんなよ」
「ま、待ってよ藤君」
Bグループは藤を筆頭に数人の小さいグループを作り次々と中へ。
共闘の意思はあるけど、野宮みたいなタイプの人間がいなかったらしい。
どのグループも特徴があって観察するのは面白いけど、そろそろ俺も中へ行かないとな。
俺は周りに流されるようにしてダンジョンの入り口を抜けた。
ダンジョンは王道の洞窟タイプで明かりはあるけど少し暗い。というのも……これじゃあ暗いのも仕方ないよな。
「「ぶああああああああああっ!!!」」
ダンジョン内を埋め尽クしそうな程大量のオーク。ランクは確かDランク。
Dランクのモンスターハウスって……試験官俺達を殺す気満々だろ。
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