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式の始まり?

それから毎朝玉房が家に来ては舞の練習に連れて行かれ、舞の形が出来てきた頃には花嫁修業も始まり嫌でも毎日が充実していた。

その間特に玉房との関係に発展などはしなかったが、玉房の家と私の家を行き来するときに手首ではなく、手を繋ぐようになっていた。

何気ない会話を繰り返し、ただ手を繋いで歩くその時間が私は好きだなぁと思い、日々を過ごしているとあっという間に卒業式が迫っていた。

それは契りの式も迫っているわけなのだが。


「………」



「………」



いつ迄経っても上手く行かないステップに私と舞を教えてくれている先生は頭を抱えていた。

右足を着地させようと思うと、バランスを崩しそうになり左足に力を入れて踏ん張ろうとすると形が汚く見えてしまう。

他のところは何とかカバーできるのに、そこだけが上手く行かない。



「………いっそのこと、そこは無しにしようか?」



「無くしても差し支えないんですか?」



「見る人が見れば違和感が生じるくらいかな」



「ですよね…」



卒業式後にやるらしい契りの式には大抵の人が集まるようで、そんな中で手を抜くのは気が引けるのだが、だからといってスッ転んでられないし、ふにゃふにゃとしていられない。



「最後まで頑張ってみます」



「そうだね、やれるだけやってみようか」



そんなこんなでギリギリまで練習を重ねていたわけだが、重ねても重ねても上達などしないまま、当日を迎えてしまった。



久しぶりに会った龍流や犬縁たちは立派な青年になり、蘭が騒ぐのも分かる気がする。

雀炎だけはまだ呆気なさが抜けないが、前よりは大人に近付いたような気もする。



「あぁ、格好いい… 龍流君、めっちゃ格好いい…」



私の隣の席に座ってからこの台詞を何度も何度も言っていて、私の頭の中がそれでいっぱいになりそうである。

この2人、何か進展とかなかったのかと見てみるも前と変わった様子が見られないということは進展なしということだろう。

このままでは2人バラバラに神さまとしての仕事に就くことになるのだが、それで良いのだろうか。

人の恋路にとやかく言えないが、心配になってしまう。



「ほら、ショボくれてないで座れ、めんどくさい」



「分かってるんだってば…オレじゃダメだって……」



「男がいつまでも泣くな」



壁の端で座り込んで泣く雀炎にその背中を小突く犬縁の隣には心配そうに2人を交互に見るマロがいたのだが、もう大人の犬になっていた。

最初に見たマロに比べてかなり大きくなって凛々しくなっている。



「うぅ…龍流の馬鹿野郎…」



「その馬鹿野郎に負けたんだ。いい加減認めろ」



「うぅ…犬縁、悔しい…」



その肝心な龍流は玉房と顔を合わせてから何やら話し込んでいるようで、2人して難しい顔をしていた。

そんなこんなで卒業式開始のアナウンスは流れ、無事卒業式は終った。

あとは契りの式だけだと思っていたら、学園の中庭に龍流と蘭の姿を見つけた。

2人でどこに行くのか気になったが、式の準備があるためそちらに向かったが、そっちが気になってしまう。

あの2人、あの後どこに行って何を話すのだろう。

まさかついに告白だろうか。

だと良いなと思いながらも会場に向かうと、既に玉房の姿があり、滅多に取らないマスクを外し和装に着替え終えていた。



「あれ、遅かったね」



その顔面偏差値の高さに気が引けていると、首を傾けられた。



「ん?あぁ、顔?だって正装するのにマスクつけてちゃまずいでしょ」



「いや、そうなんだが…」



「えぇ、まさか今さら俺の顔の良さに気がついたの?」



「仕方ないだろ…いつもは隠れているんだから」



「そうだけどさ。ま、真央が俺のこと顔で選んだわけじゃないって分かって気分は良いかな」



確かに顔で選んだ訳ではないな、と思っていると奥から女性が来て早く着替えるようにと促され、私も奥の間へと向かい正装に着替えたのだが、先から四方八方から人の声がして、続々と人が集まっているのが分かる。

それにともない心臓がバクバクいっているが分かる。

こういうときは手のひらに人と書いて飲み込むのが良いらしいのだが、書いている余裕が今の私にはない。



「ほら、翠さん。リラックス、リラックス」



先生からは横でそんなことに言っているが出来るわけがない。



「む、無理です。口から心臓が出そう」



ステージ横から外を覗いてみると予想以上に人が集まっていて、緊張がさらに高まる。



「ありゃ、ガチガチだね」



後ろから来た玉房が私を見て笑ったかと思えば、そのまま私の横を通り抜けステージへと上がってしまった。

まだ開始時間でもないのに。

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