会いたかったよ
「待ちなさい、玉房」
叔母様の焦った声が扉の奥の方から聞こえてきた。
え、まさかこの扉を開けようとしているのは玉房?なのか?
「貴方、雅子さんとのお約束はどうされたのです」
雅子?とは誰のことだ。
まさかあのとき聞こえてきた第二の主人公の可能性のある人物のことだろうか。
「雅子さん?あぁ、あのよく分からない女性のことね」
扉のすぐそばから聞こえてきた玉房の声であろうそれは、聞いたことのないほど冷たい声音で本当に玉房の声なのか判断できかねるようなものだった。
「俺、今まで叔母様のお願いたくさん聞いて来ましたよね?好きでも何でもない女性と食事して外出して、思ってもいないことを言って、相手のエスコートして。叔母様の話し相手にもなって。叔母様の手が行き届かない人間の願いに少し手を差し出すことだってしてきたよ」
玉房であろう人影は逆光でよく見えず、人一人分通れるほど開いた扉を両手で抑え込んでいる。
その周辺には青白い光がじわじわと広がっているように見えるのは気のせいだろうか。
「これも『立派な神さま』になるためだと思ってたけど、もう限界」
次の瞬間、扉や小屋の屋根が爆風と共に飛ばされてしまった。
砂埃や爆風のお蔭で何も見えず、顔をカバーするも意味を成していない気がする。
立っていることもやっとのような状況の中、何かに手首を掴まれ、そのまま引っ張られ何かに体を包まれた。
それが何か分からず暴れようとするも、それの力が強くて思うように暴れられない。
「あぁ、やっと見つけたよ。真央」
耳の近くでその声が聞こえ、体の力が一気に抜けた。
「会いたかった……」
どこにそんな力があったのかと思うほど力強く抱きしめられ、私も迷わずその背に手を回してしまう。
そこには確かに温かさがあって。
「………玉房?」
「なぁに」
「本物?」
「偽物ではないかな」
耳の傍でクスクスと笑われ、私の目から涙がこぼれ落ちた。
しばらく会っていなかっただけなのに。
こんなにも安堵し、涙が出るなんて思わなかった。
「真央は泣き虫だねぇ。俺もつられちゃうじゃない」
ぐすっと傍から聞こえ、玉房も泣いているのだと分かった。




