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第2主人公の可能性

この任務についてからというものの、玉房と会うことが減った。

願いを叶えたくとも小屋の外に出ることもできず、中で同じことを何回も考えることしかできていない。

龍流や鵜羽、犬縁だったら私と違って頭が良いからどうしたら良いのか分かると思うのだが、やっぱり生まれ変わっても私の頭は結局悪いままだったようだ。


実はこのまま小屋に籠っているのも良くないと思い小屋の取っ手を取ったのだが、扉がびくともしなかった。

押しても引いても横に引っ張っても開かず、そのとき初めて閉じ込められていたのだと知った。

初日にここに連れて来られ、玉房と叔母様に願いを聞いてからここに入れられてからずっとこの状態だったわけだ。



「………どうすりゃ良いんだ」



このまま閉じ込められていて、取得単位獲得期日を過ぎていたらどうすれば良いのだ。

せめて玉房だけでも必要単位数を取得できれば良いが、学園側から確実に怪しまてしまいそうである。

床に額をくっつけて目を閉じてみても、良い考えは浮かばない。

きっと、玉房は私と違って境内の中を歩き回れるだろうし、叔母様の別のお願いだって聞けているかもしれない。



「………」



何だろう、一人でずっとこの空間にいるからかもしれないが、すごく寂しい。

任務中もひとりでいることはなかったし、家でも一人でずっといることはなかった。

こんなにも1人とは寂しいものだとは知らなかった。


声に出すことは憚れたので、胸の中で『玉房』と呼んでみたが返事はない。

それは当たり前だろうな、と思いながら瞼を閉じて身を委ねた。



それから何の進展もないまま、何日目かのとある日のこと。

小屋の外から参拝者であろう人の声が僅かに聞こえてきた。



「ねぇ、さっきの2人見た?」



「見た見た、すっごい美男美女だった」



「仲も良さそうだったよね」



「あぁいうのをお似合いって言うんだよね。はぁ、私も良い縁と結ばれますように」



「私も私も」



そういえばここは縁結びの神様で有名な神社で有名と言っていたのを思い出した。

皆良い縁を結びに、結ばれている縁に関してはより良い縁が紡ぎ続けるようにという意味も込められているらしい。

そんな素敵な神社に美男美女か。

良いなぁ、私も良い縁に繋がれたい。



「もしかしてさっきの人たち芸能人とかじゃないよね?男性の方マスクつけてて片目しか見えてなかっただけど」



「どうだろう。私は知らないなぁ」



「だよね…一緒に写真撮って欲しかったなぁ」



「勿体ないことしたね、私たち」



男性の方はマスクをつけていて片目しか見えていなかった?

まるで玉房の姿そのものじゃないか。

え、あいつ人が閉じ込められているって時に何してるんだ。

まさか主人公以外の女性に興味をひかれたとか。

あり得る。

第二の主人公登場だってあり得なくない。

いつまでも物語の主人公が不在ってのはあり得ない。

誰かしらが主人公になるようにできているに違いないだろう。



「女性すっごく顔小さくてさ、背も高くて美人で言うことなかったよね…」



「私もあぁなりたかったよ」



私も君たちと同じようにそういう風になりたかったよ。

なれなかったけど。

美人からかけ離れているけど。 



「………私って、何でここにいるんだろう」



誰にも聞こえない声で呟いてみるも、外からの風が耳に入り込んでくるだけだった。

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