彼ららしい
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最初は颯太に似ているゲームのキャラクターとしか認識していなかったはずなのに、いつしか居心地の良い存在になっていたのだろう。
それに気付いた瞬間、掴まれている手首が気になって仕方ない。
今までは意識していなかったが、これは何と言うか恥ずかしい。
よく今の今までそんなにも気にしていなかったものだ。
「お?」
玉房が何かに気が付き、足を止めると目の前のとある空間から赤い炎のようなものが出現した。
その中心部より赤い鳥が顔を出したかと思うと、その後ろから見覚えのある龍が顔を出した。
それはこちらをじっと見たかと思うと、真上へ垂直に上がりきり何かに衝突したような音を立てる。
何が起きたのかと玉房の後ろから様子を伺うと、真っ暗な空間を龍が壊し、元の次元にあったゲートの前に戻されたのが分かった。
「ありがとう、鵜羽に龍流。ここまで歩くのは辛かったから助かったよ」
「は、こうなること分かってたろ」
腕を組みこちらを睨み付ける龍流はさっきよりも疲れたような顔をしていた。
犬縁は大きな欠伸をしながらそのやり取りを見始め、鵜羽は何故かびしょ濡れの雀炎の服を乾かそうと力を使っている。
「分からないよ。だって龍流ってば飲まれ過ぎてたからいつこっちに戻ってこれるのか分からなかったからね」
「どうだかな。それより早く渡せよ。もうそこにいるんだしな」
龍流の言う通り、逃げも隠れもせずにそこにただ佇んでいた試験官がいた。
見たところまだ外は明るいため、試験終了時間にはまだ余裕はあるようだ。
「それもそうだね。はい、先生ストラップです」
どうぞ、と玉房が試験官に渡せば、私たちの顔を順番に見た試験官は満足そうに頷いた。
「合格、よく頑張りました」
その言葉に安堵すれば、雀炎と龍流がどっちの方が蘭を好きかという言い合いを再開し始め、犬縁は壁に寄りかかって寝始めた。
難関と呼ばれる試験を合格したことに喜びを噛み締めるでもなく、通常モードに簡単に戻る彼らに思わず笑ってしまう。
彼ららしいというか、何と言うか。




