墓穴を掘る前に伝えておく
閲覧、ブックマーク、評価をありがとうございます。
本日の更新はここまでとなります。
明日引き続き更新致しますので、よろしくお願いいたします。
「オレのこと前いた所で見たことあるって言ったけど、もしかしてオレが修行した所のあたりに住んでたのか? あれ、でも、そこに龍流はいなかったような」
「いなかっただろうが。 俺とお前が久しぶりに会ったのはついさっき。修行中に会うわけがない」
「やっぱりそうだよな」
不味い、矛盾に気が付き始めたようだ。
思わずしがみ付いていた壁を掴む手に力が入る。
涼音も私同様に慌て始めた。
「あ、あの私、ここの世界の人間じゃなくてですね、その、お2人というか皆さんはその世界ではとある物語上の人物になっていたんです! それを私が見たことあったんです!」
あ、異世界人であることは伝えるんだ。
伝えてしまった方が後々墓穴掘ることもないので、そっちの方が安全なのだろう。
流石に【乙女ゲーム】のキャラクターとは言えないだろうが。
「『この世界の人間じゃない』? 確かに見たことない服を着ているな」
さっきまで頭を悩ませていた鵜羽は、涼音の一言で我に返ったようだ。
「『物語上の人物』?! え、オレってばどんな風な人物に描かれてんの?!」
「何で異世界人が知らないはずの俺たちのことを描けるのかを突っ込めよ」
「えぇ、だって気にならないのかよ龍流は」
「俺としてはそっちの方が気になる」
涼音は苦笑いを浮かべながら、悩み始めたようだ。
何と答えれば良いのか分からないのだろう。
「何故描けたのかは私は作者ではないので残念ながら分かりません。 雀炎さんは明るい青年として描かれていましたよ」
「えぇ、すっごく優秀でかっこよくて何でもできる男じゃないの?」
「事実と大幅に異なることなんていくら異世界の人間といえど、書けないだろうが」
「大幅に異なってなんかねぇし! ちょっと盛っただけじゃんか!」
「ちょっとじゃなくて大分よ。 事実を受け止めなさい」
「蘭ちゃんまで酷い?!」
危機はとりあえず、僅かだが免れたと見て良いのだろうか。
それにしても、ある程度の情報を聞いても犬縁は気にする風もないし玉房と鵜羽は互いに何か考え込んでるし収集つなかくなってきている。
これから彼らがどうするのか非常に気になるが、これ以上ここにいると入学式に遅れてしまう。
一度ここは教室に戻り、あとで鈴音と接触してみよう。