余裕
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まず、あのゲートは異空間へと繋ぐもので繋いだ先で幻覚をかけたのはあの試験官らしい。
皆、見えている世界がバラバラの中で試験説明をされ、その時点で幻覚だと気付かなかった者はいつまで経ってもあの空間で、あるはずのないキーホルダーを探し続けることなるようだ。
鵜羽曰く、物には神様が宿るとされているが試験官が見せてきたキーホルダーには何も宿っておらず、物すらあの場に実在していなかったらしい。
この空間にはその物の気配がするみたいなのだが、一つのキーホルダーに対してこの人数が探し歩くのだろうか。
「え、これさ皆で見つけてゴールじゃダメなのか?オレ、今度こそ皆揃って帰りたい」
もう誰かを置いていくとか嫌だ、と雀炎が呟いた。
きっと、涼音のときのことを言っているのだろう。
こんな風に異空間に飛ばされてからの出来事だったから尚更。
「誰が『ひとりで見つけてひとりでゴールしてはいけない』何て言った。キーホルダーも『ひとつしかない』なんて言ってなかっただろうが」
「龍流の言う通りだよ。そもそもひとりでやらせたければ、スリーマンセルなんて組まないし、任務だって一人一人やらせれば良いでしょ。それを今までさせなかったということは、つまり、この試験、誰も協力してはいけないなんて言われてないし、ひとつを皆で持って行ってはいけないとは言われていない。ということはやって良いんだよ。むしろ、その事に気付き行うことを望んでいるってとこだね」
「じゃあ皆で見つけて皆でゴールできるってことだよな!うっし、やるぞ!皆でゴールしてお祝いパーティしよう!」
雀炎はそう言って喜んだのも束の間、すぐに表情を固めながら左右を見渡した。
何を探しているのだろうか。
「あれ、そういえば蘭ちゃんは?」
確かにそういえば蘭と影蛇がいない。
まさか幻覚と気付かず探し回っているのだろうか。
影蛇に関しては気配が分かる人物なので分かりそうな気がするのだが。
「あらあら、龍流ってば好きな女の子庇う余裕がなかったとか言わないわよね?」
わざと女口調で詰め寄る玉房に、龍流はそちらを睨みつけているのだがまるで図星のような反応である。
まさか龍流に限ってそんな失態を犯すだろうか。
「ちょっとそんな怖い顔しないでよ。え、もしかして幻覚から覚めるために罠を張るだけで精一杯だったとか…」
「………悪かったな、余裕なくて」




