胸のざわつき
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本日は午後更新が予定より大幅に遅れ、申し訳ありませんでした。
次回、明日夜に更新予定です。
よろしくお願いいたします。
試験は何事もなく終了し結果を待つのみとなったのだが、皆緊張からか表情が硬い。
そういう私も試験が受かるか心配だ。
今まで受けた座学での授業の内容と任務で行ってきたようなものばかりだったので、真面目に受けていれば誰でも通れそうな問題ではあったが、何か大きな落とし穴があったとしたら嫌だな、と思っているとあっという間に結果が張り出された。
そこには落とされた人物の名前のみが記載されるらしいのだが、その中に私の名前は含まれていなかったことにまずは安堵する。
次は明日から行われる実務試験だ。
何が起こるか分からない試験と言われているそうで、昨年度の合格者は僅か2人とか。
そんな難易度の高いものに無事受かるとは思えないが、受けてみるだけ受けてみようと思い今日はできるだけ体を休めようと思っていたのに、何故かまっすぐに帰らずに涼音のお墓にいるのは何故か分からない。
「……涼音、明日ついに進級試験実務試験だ」
とりあえずしゃがみ込み、そう言ってみた。
「やれるだけやってみるよ。それでだめならまた来年度に頑張るしかないな」
きっと玉房や龍流の2人は確実に通るだろう。
それだけの実力を彼らは持っているし。
私なんて未だに力のコントロールなんてできてないし、役に立てるとしたら力増幅装置になるくらいだ。
こんなことだけで通れるほど生易しい試験とは到底思えない。
「………大丈夫かな」
心配だな、と呟いていると後ろから足音がして振り返れば小さい花束を持った玉房がいた。
「やっぱりここにいた」
「何か用か?」
「真央のことだから明日のことで悩みそうだし来るとしたらここだなぁ、と思ってね」
そう言いながら私の隣に立ち、石碑を見つめていた。
「心配しなくても大丈夫だよ。試験の趣旨をちゃんと分かっていれば」
「試験の趣旨?」
「そ。何故そういったことを行い、何を生徒にさせたいのかを理解すれば誰だって通るようにできているからね」
持っていた花を供え、私と同じようにしゃがみ込んだ。
「真央がそんなに心配することはないから、いつもの任務のようにしていれば大丈夫だよ」
よしよし、と頭を豪快に撫でたかと思えば立ち上がる。
「それじゃ、また明日」
そう言って玉房は去って行った。
涼音の一件から玉房は変わったな、と思えたが何やら颯太の一件からもどこか変わったようにも思える。
何かと撫でてくるし、全体的に優しくなったような気もする。
その理由は分からないが、玉房の中で何かが大きく変化しているのは見て分かる。
それが悪い方ではないのも分かるので特に止めるつもりはないのだが、何故か胸の当たりがざわつく。
この胸のざわつきは何だろう。
この正体が何か試験を終えた頃には分かるだろうか。




